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やっぱりまたアレかっ?


「セレネ王女殿下からどの様な事を吹き込まれたのか知りませんけど……わたくしは全校生徒の学内生活改善の事しか考えておりません。むしろセレネ王女の横暴を叱って欲しいですわ」


 一瞬ラフィーヌの存在にたじろいだユーキュリーネであったが、直ぐに自己正当化を始めた。しかしスナコの弁では、セレネの方が確かに王国王女として特別扱いしてもらっているから、生徒会長の方が正しいという事になる。


「そうなのかい?」


 一瞬で勢いを挫かれるラフィーヌに雪布留はコケた。


「……」


 セレネも多少引け目を感じる所もあり口が重い。


「何にしても昔の事は昔の事ですわ。ラフィーヌを引き込んで甘い裁定を導こうとされたセレネ王女殿下に対して、わたくし一歩も引くつもりは無くなりましたから」


 セレネもとうの昔にユーキュリーネ等友人では無いと思っていたが、ラフィーヌを見せて甘い判断を誘おうとしていたのは事実であった。しかしその戦略は裏目に出てしまったようだ。


「そんなつもりは毛頭無い。それよりも目の前に起立しているル・ツー千鋼ノ天が見えるだろう? 皆で修理したのだ、約束通り部室館の継続使用を認めてもらいたい」


 もちろん見えていて無視していたのだが、言われて初めて気付いた様にわざとらしくハッとして上を見上げた。


「あら、気付きませんでしたわ!? しかし急場で手足をくっ付けただけかも知れませんでしょ」


 直ぐにあらぬ方向を見て笑い始めた。


『よし、兎幸と猫呼今です、デモンストレーション開始!』


 スナコがぴっとホワイトボードを掲げると、ル・ツーは目を光らせゆっくりと動き出した。

 ヒュイーーーン!!


「な?」


 ユーキュリーネが驚く前で、ル・ツーはゆっくりと歩いたり、剣で軽く演舞を繰り広げたりした。



「生徒会長どうですか? 本当に三日間で手足の無かった同盟副将機ル・ツーを此処までに直しました。是非継続使用をお認め願いたい」


 セレネは勝ち誇った様に踏ん反り返った。


「ユーキュリーネ、皆本当に頑張ったんだ素直に認めておやりよ」


 ラフィーヌもセレネに味方して生徒会長となった幼馴染ユーキュリーネを説得した。しかししばし彼女は動かなかった。一同の視線が彼女の一身に集まる。



「…………確かにあそこまで壊れていたル・ツーを此処までに治すなんて凄いですわ……」


 神妙な顔でユーキュリーネは感嘆してみせた。


「じゃあユーキュリーネ?」


 セレネがさらに勝ち誇り、ラフィーヌがぱあぁと明るい顔になる。


「でも……ダメーーーーーッ不合格ですわっ!!」


 しかし突如とてつもなく意地悪い顔で生徒会長は大きなバッテンを作って不合格を通知した。


「何故だ!? お前も凄いと認めたじゃないかっ」

「そうだそうだ!」

「事と次第によっちゃ許さないよ?」


 セレネだけでは無く、ミラとジーノも怒りが込み上げた。


「確かに動くまでに修理した事は凄いですわ……しかし此処にご注目! この膝関節の裏グレー部分に装甲のネイビーの色がはみ出ていますわっ、一番大切な仕上げの部分でちゃんとマスキングせずに手を抜いている証拠ですわ! よって不合格とします」


 恐ろしく細かい難癖であった。しかし確かに塗装に甘い部分があったのは事実である。


「何てこったーー!? 部長すいやせん、それウチらの担当パートでしたっ」

「ああ手を抜かずにちゃんとマスキングしておけばっ!?」


 ミラとジーノは泣き崩れながら頭を抱えた。


「ご安心なさって。討伐部の皆さまには追い出す訳では御座いませんの。将棋部と路面念車愛好会の間の部室をご用意しております。どうぞ速やかに御移りを」


 ユーキュリーネは笑いながら頭を下げた。


「ユーキュリーネ少し厳し過ぎやしないか?」

「ラフィーヌもう良い、はぁ……ユーキュリーネよ貴様に決闘を申し込む!!」


 セレネは突然ビシッと指を差して決闘と言い放った。


「あらまあセレネ……」

『なんて事だ』


 雪布留とスナコも驚いた。


「今回の修理はミラとジーノだけじゃない、ラフィーヌも雪布留さんもスナコも仲間みんなで力を合わせて必死にやった事だ。それを私だけじゃない、仲間達の労力まで無下に否定して冷笑するならもはや看過出来ない。決闘をしろ!」


 セレネの気迫にユーキュリーネは冷や汗を掻いたが直ぐに不敵な笑みに戻り頭を下げた。


「申し訳御座いません、お断り致しますわ。セレネ王女殿下は天下一の強さ、私等では一瞬で斬り殺されてしまいますわ。ですがご安心を、王女殿下としてのご命令で部室館を使用させろと言うなら、私は臣民として喜んで従いますわ!」


 彼女は淡々と言い切った。

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