腕接合、修理完成!!
「ピーピーピー、もうちょい右です」
ウェドが笛を吹き、蛇輪とXS25がそれぞれ持ったサスペンションや大型部品を、蘭観が運転するクレーン魔車に設置して、それをウェドと蘭観がル・ツーの接合された脚部に設置して行く。大型の部品も二機の魔ローダーが付きっ切りで助手をしてくれるのでサクサクと進んで行く。
ガシャーン!
今また大き目のショックアブソーバーが設置された。
「業者に発注すれば莫大な費用を請求されますが、ご家庭の魔ローダーを使用すればかなりの費用を節約する事が出来ます!」
「ウェドさんあんた何言ってんだ?」
蘭観がウェドの独り言に戸惑った。
『凄いわ、作業がどんどん進んで行く。今日中に足がくっついて歩けそうね!』
『そうなって欲しいな』
『うんうん』
蛇輪の中では作業の進捗に満足げであった。
「アスティーそろそろ降りてくんない? もう魔法防御力アップは必要無いから、降りて力仕事すればいいじゃん、何の為に無駄に筋肉付けてんの?」
「お前……感謝とかそういうのは?」
「無い」
ルンブレッタは、けんもほろろであった。
ーさらに2時間後
「もう大型の部品の組付けは終わりました。あとは魔導ケーブルの配線だとか機械オイルの注入だとかですので、魔ローダーは一機で充分です!」
ウェドが二機の魔呂に向けて叫んだ。
『ウェドさん腕の修理は?』
「忘れていました」
あっけらかんと言うウェドに数人がコケた。
「元々残っている方の腕は、注入されている機械油が海底で劣化しているかもしれないので、ドレンボルトから抜いて入れ替えるだけで良いでしょう」
『欠けた腕は?』
セレネの問いにウェドと蘭観は様子を見た。
「回転軸は残っているな」
「上腕の横回転軸は残っているので、そこから抜いてSRXの上腕の同じ部分を差し込みます。まずは壊れた上腕を抜いて下さい」
『OKだ』
ウェド達は魔呂と協力しつつ大急ぎで装甲を剥ぎ、上腕の分解に成功して寸法を測った。
「やはりSRXの軸受けに比べて太いので上腕のシャフトを削らないとダメです! 一旦作業員は全員退避して下さい」
ウェドが大声で叫んだ。丁度その時には同時並行でミラやジーノや猫呼が教授の指示で魔導ケーブルの配線作業をしていた。血管の様にあちこちに伸びるケーブル配線は大変な作業であった。
「今丁度コツが分かって来た所なんだけど」
「これ一瞬でも休憩したら明日一日では完成しないでしょ?」
「しかしスナコくんが雷を使うなら危険だよ退避しないと」
「別に大丈夫じゃにゃい?」
慣れというのは怖い物で、誰もスナコの電撃切削作業を恐れなくなった。
『あ、じゃあ僕のXS25で壁を作ります! スナコちゃんは上腕シャフトの切削を始めて!』
言うとルンブレッタはプロレスのカウントの様にル・ツーの上半身に覆い被さって壁を作った。
「俺知らねーよ!」
ギュイーーン
等と言いながら蘭観が操縦席に入り、上腕メインシャフトが露出した肩を上に向けた。
『本当に大丈夫なの? あっちこっちゴチャゴチャに作業中に雷を使って……』
雪布留が懸念を表したが、セレネはやるつもりだ。
『大丈夫だ、スナコやれ!』
「はい」
今寝転ぶル・ツーの上では、上半身に覆い被さったXS25の向こうの下半身ではラフィーヌやアルピオーネ達多くの仲間が作業を続けている。もし手元が狂えば大変な事故になってしまうだろう。
(本当は駄目な奴だ……)
スナコは精神を集中し、再び雷雲から雷を呼び指先に集束させた。
ジジジジジ……
股関節に比べれば幾分細めの上腕のメインシャフトを削って行く。特に事故も起こさずに作業は終わった。
「合格です! 早速SRXの上腕を接合します、運んで来て下さい」
一瞬、ルンブレッタとスナコが置いてあるSRXの腕に同時に触り魔呂の手が重なった。
『あっごめんスナコちゃん』
『いいえ、気にしないでとスナコは言っている』
「これって何なの? 魔呂の手が図書館で同じ本を取って重なった的な?」
「分かり辛いにゃあ」
等とどうでも良いシーンを挟み、再びウェドの指示でSRXの腕の接合が始まった。
「ピーピーピー慎重に! ゆっくりと」
ガシャーーン!
『成功だっ!』
『やったわ』
遂に両脚に続いて欠けていた腕も接合した。そのまま両脚の時と同じ様にサスペンションや魔導ケーブルの設置が始まり、もはや魔呂を降りた人々総出の作業となって、遂に深夜となった。
ー次の日、期限最終日。
「遂に明日ユーキュリーネにル・ツーを見せる日となった。今日中に完成させなければいけない、皆よろしく頼む」
眠い目のセレネが皆に頭を下げた。
「いいよー!」
「よし早速取り掛かろう」
「ここまでくりゃ最後までやるぜ」
「アスティーなんで来たの?」
「何?」
等と学院のメンバーが暖かくセレネ達を迎え入れて最終日の追い込みが始まった。
ーそして細かい艤装の作業が全て終わった。
「完成です。かなりの費用を浮かせる事が出来ました。高く売る事が出来るでしょう」
「いや売らんて」
ウェドの発言にいちいち蘭観が突っ込みを入れる。
「では……猫呼くんかね、セレネ王女かね、操縦席に入って駆動試験をしてみたまえ」
代表して教授が言った。
「では、猫呼先輩と二人で乗ってみよう」
雪布留とスナコは外で見守る事とした。
ヒュイーーンヒュイーーン
キューーーーーーン
セレネと猫呼が狭い椅子に二人で座り、同時に二本の操縦桿を握って魔力を込め、主魔法システムを起動させた。PCの様な独特な高い音と共に再びル・ツーの目が光った。
「動かしてみます」
「うんやって」
セレネが手首や足首を微妙に動かすと拍手や歓声が起きる。
『起き上がります!』
グイーーーーンン!!
ゆっくりと上半身を起こし、そのままゆっくりと立ち上がってさらに数歩歩いてみた。
「成功よっ! セレネやったわ」
「そうだね、これで今すぐ戦う訳じゃなし」
「強度試験などは無用でしょう」
「三日で直すなんてすごい物だ、我が学生達ながら誇らしいよ」
「凄いねスナコちゃん!」
『え、ええ』
メンバー達は歓声を上げて喜んだ。
「あ、あのさー喜んでるトコ、水を差す様で悪いんだけどさ」
「何かな、ミラくん?」
人々がミラの発言に振り向いた。
「ル・ツーのネイビーとSRXのグレーとじゃ色が違うんじゃないかな?」
人々は熱中する余り最もな事を見落としていた。
「えーミラそんな事どうでも良くない?」
『いや、確かにそうだ。ミラに言われて急に気になり始めた』
セレネが同調し今度は余計な事を言ったミラを雪布留とスナコが一瞬睨んだ。
「どうする、人体に無害だが乾きの遅い水性塗料を使うか、有害な物質が含まれるが乾きの早いラッカー塗料を使うかどうするね?」
ウェドが人々に聞いた。
『ラッカー塗料で……』
セレネは即答し、人々はそれぞれマスクを付けてスプレーで必死に塗装作業に励み、結局また深夜となった。
「今度こそ完成!!」
「もう何もやらんぞ!!」
人々はその場にへたり込んだ。
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主人公3人
砂緒 元現代日本のデパート建屋だったが、魂が発生し百年後に崩壊してセブンリーフに異世界転生して来た。硬くなる重くなる電気が出るなどの地味スキルを持つ。中程度の怪力で特に強く無い。気分次第で異常に完成度の高い女装スナコちゃんに変身する。
雪乃フルエレ ヒロイン①【海と山とに挟まれた小さき王国】の 夜宵姫 だったが家出して色々あってセブンリーフ大同盟の女王になってしまった。金髪の天使の様な美少女。魔導学園では 雪布留と名乗る。
セレネ ヒロイン②ユティトレッド魔導王国王女で髪の長い美少女だが異常に強い魔法剣士。最初嫌悪していた砂緒に猛アタックされフィアンセ同然になる。フルエレを女王に推挙した張本人。討伐部部長。
ユティトレッド魔導学園関係者
ミラとジーノ セレネの子分兼大切な友達。
ユーキュリーネ・カナルト・ヒューゴー 生徒会長でユティトレッド重臣の娘。
ルシネーア 生徒会書記でユーキュリーネに心酔している。
サトー スナコの隣の席の目立たない生徒。
学園長 ユティトレッド魔導王国の現王でセレネのおじい様。立派な長い髭がある。
ユ魔導学院関係者
ラフィーヌ・ビュートッエ 美形で真面目な熱血学院生でセレネの幼馴染、影が薄い。
アルピオーネ・マーチェラ 美形で少しキザな金髪青年。雪布留に接近しようとする。
ルンブレッタ・スーヴェテ 年齢より若く見え可愛い女の子の様な外見をしているがちゃんと男。スナコに一目ぼれする。
アスティ・ティーニ 長身で筋肉がある美形俺様キャラ。
蘭観・ファーラル 美形だが変人でメカや薬品好き。
教授 ダンディなイケおじで生徒を暖かく見守る。
仲間
依世 雪乃フルエレの妹。 美柑 と名乗り紅蓮と冒険者をやっていた。探していた姉、夜宵姫・フルエレと遂に再会したが喧嘩が絶えない。
猫呼クラウディア 東の地(中心の洲)クラウディア元王国の元王女。失踪中の兄猫名を探してフルエレ達の仲間になった。今は闇ギルドの頭目をしている。背の低いおしゃまな付けネコミミ少女。
兎幸 うさこ。リュフミュラン天球庭園の氷の博物館の館長。月で魔改造されて微妙に成長した。魔ローダーで補助機能になったり砂緒の女装に協力したりする心強いサポート係。
イェラ 元女戦士の褐色の背の高い美人。厨房で料理を作っている。麺料理屋台のチェーン展開するという野望を持つ。口数少ない性格だが砂緒の事が好き。
メラン 元魔導士の冒険者だったが、フルエレ砂緒と知り合い同盟軍の魔ローダー搭乗者になった。二人が居ない時は一応魔呂部隊の責任者となっている。ル・ツー千鋼ノ天に速き稲妻Ⅱと勝手に命名していた。
シャル 猫呼の部下闇ギルド員でボディーガード。腕がぐんぐん伸びる。
イライザ 喫茶猫呼店員。ぜんぜん意地悪く無い普通の子。
ニィル イライザの兄で元浪人であったが砂緒セレネに拾われ新ニナルティナ軍幹部に。
有未レナード公 旧ニナルティナ王国の軍師だったが、ポンコツで無害だったので新ニナルティナの代表に選ばれた。雪乃フルエレ女王を盛り立て、東の地【神聖連邦帝国】との関係に悩む。
ウェカ王子 ラ・マッロカンプ王国の王子。御幼少のみぎりに幼稚園留学生として出会った依世に一目惚れしたが、彼女の裏の仕事を目撃し魔法を撃たれ死に掛けてしまった。
メア ウェカ王子の理解者でセクシーなメイドさん。しつこいくらいに玉の輿をねだる。
まおう抱悶 可愛い熊耳の美少女だが恐ろしい魔力を秘める。砂緒と知り合った関係で雪乃フルエレ女王と大同盟を組む事となった。
神聖連邦帝国(東の地・中心の洲)
紅蓮アルフォード 【神聖連邦帝国】第二百十二代聖帝の息子。西の島、セブンリーフに単身まおう討伐を命じられて渡って来たが、美少女美柑(依世)と知り合い篭絡され、なかなか討伐する気が起きず、いつもブラブラしている。実は劇中一番強い人物だがなかなか本気で戦わない。爽やかでイケメンで真面目な風情に反し、実は人一倍女の子に興味があるムッツリスケベ。
瑠璃ィキャナリー るりぃきゃなりー。神聖連邦帝国四旗機 桃伝説 の搭乗者であったが、紅蓮のサポートとしてセブンリーフに渡り行き倒れ、ウェカ王子に助けられ以降居候になる。かなり強い騎士だが、当地と故郷の間で悩む事になる。モデルは船〇リリィ。
貴城乃シューネ たかぎのシューネ、神聖連邦帝国重臣で主人公達と度々戦う。
猫弐矢 猫呼の兄でクラウディア王国現当主。父王である大猫乃主を失う。
魔法メカ・ロボット
魔ローダー 全高25Nメートルの騎士の鎧、プレートアーマーをそのまんま巨大化した様な、魔法力で動くロボット。魔法や物理等殆どの攻撃が効かず、魔ローダーの魔法エネルギーが乗った剣攻撃しか効かない。
蛇輪、日蝕白蛇輪 へびりん、ひばみはくじゃりん。砂緒とフルエレとセレネが交代で乗る主役機。劇中唯一の複座型で、表面は鏡の様なテカテカのメッキ調の銀色で、装甲各所に金色の華麗な装飾が施され非常に成金趣味な見た目をしている。頭部に蛾の触覚の様な巨大な二本の角があり、背中にはド派手な巨大な羽を背負い鳥型の飛行形態に変形出来る。実は砂緒の前世の前世、【等ウェキ玻璃音大王】が、ル・スリー白鳥號を参考に真似して作った機体。両手の尖った爪で突き刺した対象からスキルや能力をコピーする事が出来る。また砂緒の能力で巨大化したり強力な雷攻撃を発したりも出来る。
ル・スリー白鳥號 はくちょうごう。【まおう抱悶】の先祖である【王永嶋フィロソフィー王】が搭乗していた純白の機体。蛇輪に似ているが、よりヒロイックな形状をしている。古代にクラウディア王国で建造された。今は 【千岐大蛇】(チマタノカガチ) 退治の時に紅蓮が偶然入手し扱いに困惑している。劇中最強の機体で数々の魔ローダースキルが隠されている。かつてセレネと砂緒が制作させた【最強の魔法剣】を偶然所有しているが、標準装備の【魔法の刃の剣】も使用出来る。
ル・ツー千鋼ノ天 る・つーせんはがねのてん。猫呼の実家、東の地(中心の洲)【クラウディア王国】の旗機であったが、【神聖連邦帝国】に服従した時に彼女の兄【猫名】が乗り逃げしてしまった。その後【三毛猫仮面】と名乗った猫名がセブンリーファで暗躍して搭乗していた。その後雪乃フルエレに負け鹵獲され同盟の副将機となっていた。濃い紺色の機体に頭部に長大な一本角があり全身が鋭角的に尖っている。
一般機体
XS25 学園生徒達が授業で乗る最弱機体。
SRV 同盟の量産型機で青や赤、緑などの派手なツヤツヤ塗装。
SRV2ルネッサ 王女セレネ用カスタム機体。
SRX 同盟軍次期量産用試験機。




