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スナコ切削、四人で共同作業……


 コロロコロ……

 荷物運び用の二台の荷台を連結して毛布を敷き、そこに上向きに寝転んだスナコがル・ツー千鋼ノ天の露出したメインシャフトの下に滑り込む。もちろん魔車と違ってそこそこの高さがあるのだが、上を向きながらの作業は背中がしんどかろうというルンブレッタ達学院の男子からの配慮であった。


 キュキュッ

『やります……』


 律儀にボードに書いて人々の方に向けたスナコが再び腕を上に向けた。

 バルバリバリ……

 あたかも溶接作業の様に、青白い雷の光がジジジと巨大なメインシャフトを削って行く……



 ー1時間経過

 人々が見守る中、スナコは延々と作業を続けるが……


『ふぅ』


 さすがに疲れて来たスナコが額を拭った。しかしルンブレッタ始め人々からは何の言葉も無い。何故ならば……


(遅い……)

(え、一時間掛けてこんだけ?)

(これ、ヤバくないか?)

(砂緒頑張って!)

(砂緒……)


 男子女子共に口には出さないが皆同じ感想であった。つまり遅々として切削作業が進まないという事である。人々が見守る中で一時間経過してもメインシャフトが削れたのはごく一部であった。スナコの雷攻撃を一点に集中して、岩よりも硬い超高硬度の魔ローダーの又関節メインシャフトを、正確に真円に削るという作業は非常に困難である事が判って来た。


(スナコちゃん、あんな一生懸命やってるのに……)


 ルンブレッタは人一倍心配して見ていた。


「これ、一日掛けても無理っしょ!」


 そんな停滞する空気を、美形だが変人の蘭観が一瞬で切り裂いた。


「ちょっと蘭観酷いよ!」

「いや、蘭観の言う通りだ。このペースだといつまで掛かる事やら」


 学園側を代表してセレネが正直な感想を言った。


『そうですね、セレネや蘭観の言う通りです』


 砂緒も自覚していて、ようやく言ってくれた蘭観にむしろ感謝していた。


「スナコちゃん……」


 昨日の事もあってやはりスナコはルンブレッタに目を合わせない。


「どうするかね? もう王宮の魔ローダー工場の大型設備を利用してシャフトを削るかね? 元々魔呂工場なのだから、それくらいは簡単だろうね」


 教授が言い辛い事を冷静に言った。


「それは駄目なんです。学生達の力で達成しないと生徒会長に駄目出しされると思う」

「セレネ、これだけ皆に手伝ってもらってもダメなら仕方が無いわ……なんなら私が」


 パピヨン雪布留がセレネの肩を触った。つまり女王の権限で部室館をこのまま使用させると暗に言ったのだ。


「そ、そんな……権力を使ったと思われる」

「セレネ、別にそれでいいじゃないか」


 ラフィーヌまでもがセレネを説得に掛かった。昨日はヒートアップしたが、どうにも寂しい幕切れとなりそうな気配であった。


『あ、あのーいいですか?』

「どうしたのスナコ?」


 雪布留がスナコのボードに気付いて聞いた。


『あの……人力で駄目なら、以前の新・幹道を削岩した時みたいに、蛇輪に乗ってセレネと雪布留の魔力を借りてやれば、威力は何倍にもなって時間も掛からないと思う』


 セレネと雪布留はハッとした。確かに新・幹道を作る時に巨大な岩石を蛇輪で切り裂いたのだった。


「よし、さっそくやろう!」

「私もやるわっ!」

『あの、一つ問題が』


 スナコは盛り上がる二人を止めた。


「何だよ?」

『ル・ツーをひっくり返して固定するジグを作らないと、裏側にまで雷が回り込みません』


 スナコの言う通り、彼が荷台で下に回り込む事が出来ない以上、メインシャフトの方を上に向けなければいけない。


「いや、そのジグを作るのにまたえらい時間かかるっしょ!」

「蘭観!」


 またもや蘭観が率直な物言いをして、ルンブレッタが彼を止める。


「いや、蘭観の言う事も最もだ」

「そうだね」


 今度はラフィーヌもアルピオーネも同意した。

 

『いい考えだと思ったんですが』

「一体どうすりゃいいんだよ」

「地面に穴掘っちゃう?」

「それはそれで時間掛かるでしょーに」


 雪布留にすかさず突っ込む猫呼であった。


「だったら……だったら僕がXS25でル・ツーをひっくり返して固定するよ。その状態でスナコちゃんが蛇輪で切削加工すればいいよ!」

『ルンブレッタ……』

「危険じゃないかね?」


 教授がすかさず自分の学生の身を案じる。


「正直危険なんかどうか分からん。相手が岩だったから何も考えずにやったが」

「もし失敗してXSに直撃したらどうなるか?」

「XSは学生向けの低出力機だから、一般の戦闘用魔ローダーよりも魔法耐性が低いかもしれないね」


 ラフィーヌが眉間にシワを寄せた。


「いや、僕やっぱりやるよ! スナコちゃんを信じてる、だから早速やろうよ!!」


 ルンブレッタの決意は固いようであった。人々は彼の決意に甘える事とした。

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