スナコ挑戦!巨大金属切削加工
ー約2時間後。
「うっもう眠たいです」
「私も限界にゃー」
「内職みたいだなコレ」
「ぐーー」
雪布留達、魔導ケーブルを編んでいるチームはもはや限界であった。
「よし、魔呂組はどうなっているかな?」
教授もどちらかと言えばかなり眠たそうな目になっていた。
ー魔ローダーファクトリー
「約二時間でSRXの両脚を外す所まで来た……」
ラフィーヌが額の汗をぬぐった。
『よし、今から組み合わせてみよう!』
SRXの脚部を抱えた蛇輪からセレネの大声が響く。
「そうだね、思い切ってそこまでやってみるか……」
アルピオーネが目を細めながら言った。まだ限界では無いがそこそこには眠たい。
「スナコちゃんあともうひと息! がんばって」
ルンブレッタが同じく蛇輪に乗るスナコに声援を送る。
『よーし、今日の総仕上げだやるぞっ』
ボード文字のスナコの代わりにセレネが返事して応えた。
ヒュイーーーーン!
蛇輪はル・ツーの脚部メインシャフトに向けて、SRXの脚部を接近させて行く。
ピーピー!
ヘルメット姿のウェドが笛を吹きながら接合部を誘導する。
「ゆっくり慎重に」
中腰の蛇輪が慎重に接合部を合わせて行くが……
「ストップストーープッ!」
ウェドが慌てて両手を振った。
『ウェドさん、どうした??』
「セレネ王女、やはりシャフトの径が全然合いません。これ以上やると破損してしまいます」
職人の確かな目を持つウェドは接合部を接近させただけで、もう径が合わない事を確信した。
『どっちが大きい?』
「ル・ツーのメインシャフトの方が太く、SRXの脚部の穴に入らない」
「……ちゃんと計測すれば良かったね」
「急ぎすぎたな」
「基本のキだねーー」
一瞬で人々の顔は暗く曇った。そこに丁度雪布留チームがゾロゾロやってくる。
「何なのよーいきなりトラブっているじゃない!」
「やっぱりそうそうおもちゃみたいに、ぴたっと合う訳無いよなー」
「あんな硬くて太い物が入る訳無いじゃない、壊れちゃうよ」
シィーーーン……
天然っ子である雪乃フルエレ女王の無意識な不適切発言が、辺り一帯に水を打った様な静寂を生み出した。
「お、おい皆変だぞどうした?」
「い、いやー? 別に何も無いけど」
「うん、何も問題無いにゃー」
男性陣が慌てて場を取り持った。しかし猫呼と蘭観だけが半笑いであった……
「そ、そうなんだ! シャフトの方が細ければカラーで太らせれば良いんだがね、逆に太いから痩せさせなければ……」
ラフィーヌが場を正常化させようと必死に真面目に語った。
「フルエレが妙な事言うから、みんな大変なのよ!?」
「えっどうしたの??」
猫呼が耳打ちしても良く分からない様子の雪布留であった。
『遂に私の出番ですね!』
ハッチを開けたスナコが身を乗り出した。
「そうだね、スナコちゃんが例の切削スキルでメインシャフトの径を細く加工するしか無いね」
「今からやるかい?」
ラフィーヌの言葉にアルピオーネが多少反対のニュアンスを含ませて小声で聞いた。
『今からでも徹夜でもやります!』
何故か真面目キャラにキャラ変したスナコが降りて来て訴える。
「スナコちゃん疲れてない?」
『大丈夫です!』
「よし、あたしも付き合うぞ!」
ルンブレッタに対抗してセレネもスナコの手を取った。
「いや、皆時計を見た前、既に深夜の3時を過ぎたよ。女学生の諸君は明日の授業もあるんじゃないかね?」
ヒートアップして行く生徒達を見て、教授がやんわりと諫めた。
「そうだねースナコちゃんの雷がバチバチ出て、事故や火事が起きちゃうといけないしねー」
技術者として蘭観も冷静に深夜の作業の効率の悪さを自覚していた。
「じゃあ、今夜の作業は此処までとしよう」
「賛成だな」
ラフィーヌの言葉にアルピオーネが飛び付いた。
「うえーー今から家に帰るのか……」
ミラとジーノが舌を出した。
「いや、あたしらは此処の作業場の仮眠室で寝よう。朝になったら此処から登校する」
「え?」
「マジスか?」
セレネの提案に雪布留は迷った。雪布留とスナコちゃんは二人していつも蛇輪でニナルティナから通っていたが、このままこの場所で仮眠すればスナコは砂緒に戻らず、次の日もぶっ続けでスナコを演じ続ける事になる。その事でますますルンブレッタとの距離が近付くかも知れないと思ったのだった。
「セレネそれで良いの?」
「大丈夫です。スナコはどうだ?」
『私もそれで良いわ』
「わ、とか言うなよ」
スナコの言葉にルンブレッタがにこっと笑顔になった。
「スナコちゃん、必要な物があったら何でも言ってね! 僕の寮から持ってくるから!」
雪布留とは逆にルンブレッタはスナコと同じ敷地内で宿泊する事にわくわくしていた。
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主人公3人
砂緒 元現代日本のデパート建屋だったが、魂が発生し百年後に崩壊してセブンリーフに異世界転生して来た。硬くなる重くなる電気が出るなどの地味スキルを持つ。中程度の怪力で特に強く無い。気分次第で異常に完成度の高い女装スナコちゃんに変身する。
雪乃フルエレ ヒロイン①【海と山とに挟まれた小さき王国】の 夜宵姫 だったが家出して色々あってセブンリーフ大同盟の女王になってしまった。金髪の天使の様な美少女。魔導学園では 雪布留と名乗る。
セレネ ヒロイン②ユティトレッド魔導王国王女で髪の長い美少女だが異常に強い魔法剣士。最初嫌悪していた砂緒に猛アタックされフィアンセ同然になる。フルエレを女王に推挙した張本人。討伐部部長。
ユティトレッド魔導学園関係者
ミラとジーノ セレネの子分兼大切な友達。
ユーキュリーネ・カナルト・ヒューゴー 生徒会長でユティトレッド重臣の娘。
ルシネーア 生徒会書記でユーキュリーネに心酔している。
サトー スナコの隣の席の目立たない生徒。
学園長 ユティトレッド魔導王国の現王でセレネのおじい様。立派な長い髭がある。
ユ魔導学院関係者
ラフィーヌ・ビュートッエ 美形で真面目な熱血学院生でセレネの幼馴染、影が薄い。
アルピオーネ・マーチェラ 美形で少しキザな金髪青年。雪布留に接近しようとする。
ルンブレッタ・スーヴェテ 年齢より若く見え可愛い女の子の様な外見をしているがちゃんと男。スナコに一目ぼれする。
アスティ・ティーニ 長身で筋肉がある美形俺様キャラ。
蘭観・ファーラル 美形だが変人でメカや薬品好き。
教授 ダンディなイケおじで生徒を暖かく見守る。
仲間
依世 雪乃フルエレの妹。 美柑 と名乗り紅蓮と冒険者をやっていた。探していた姉、夜宵姫・フルエレと遂に再会したが喧嘩が絶えない。
猫呼クラウディア 東の地(中心の洲)クラウディア元王国の元王女。失踪中の兄猫名を探してフルエレ達の仲間になった。今は闇ギルドの頭目をしている。背の低いおしゃまな付けネコミミ少女。
兎幸 うさこ。リュフミュラン天球庭園の氷の博物館の館長。月で魔改造されて微妙に成長した。魔ローダーで補助機能になったり砂緒の女装に協力したりする心強いサポート係。
イェラ 元女戦士の褐色の背の高い美人。厨房で料理を作っている。麺料理屋台のチェーン展開するという野望を持つ。口数少ない性格だが砂緒の事が好き。
メラン 元魔導士の冒険者だったが、フルエレ砂緒と知り合い同盟軍の魔ローダー搭乗者になった。二人が居ない時は一応魔呂部隊の責任者となっている。ル・ツー千鋼ノ天に速き稲妻Ⅱと勝手に命名していた。
シャル 猫呼の部下闇ギルド員でボディーガード。腕がぐんぐん伸びる。
イライザ 喫茶猫呼店員。ぜんぜん意地悪く無い普通の子。
ニィル イライザの兄で元浪人であったが砂緒セレネに拾われ新ニナルティナ軍幹部に。
有未レナード公 旧ニナルティナ王国の軍師だったが、ポンコツで無害だったので新ニナルティナの代表に選ばれた。雪乃フルエレ女王を盛り立て、東の地【神聖連邦帝国】との関係に悩む。
ウェカ王子 ラ・マッロカンプ王国の王子。御幼少のみぎりに幼稚園留学生として出会った依世に一目惚れしたが、彼女の裏の仕事を目撃し魔法を撃たれ死に掛けてしまった。
メア ウェカ王子の理解者でセクシーなメイドさん。しつこいくらいに玉の輿をねだる。
まおう抱悶 可愛い熊耳の美少女だが恐ろしい魔力を秘める。砂緒と知り合った関係で雪乃フルエレ女王と大同盟を組む事となった。
神聖連邦帝国(東の地・中心の洲)
紅蓮アルフォード 【神聖連邦帝国】第二百十二代聖帝の息子。西の島、セブンリーフに単身まおう討伐を命じられて渡って来たが、美少女美柑(依世)と知り合い篭絡され、なかなか討伐する気が起きず、いつもブラブラしている。実は劇中一番強い人物だがなかなか本気で戦わない。爽やかでイケメンで真面目な風情に反し、実は人一倍女の子に興味があるムッツリスケベ。
瑠璃ィキャナリー るりぃきゃなりー。神聖連邦帝国四旗機 桃伝説 の搭乗者であったが、紅蓮のサポートとしてセブンリーフに渡り行き倒れ、ウェカ王子に助けられ以降居候になる。かなり強い騎士だが、当地と故郷の間で悩む事になる。モデルは船〇リリィ。
貴城乃シューネ たかぎのシューネ、神聖連邦帝国重臣で主人公達と度々戦う。
猫弐矢 猫呼の兄でクラウディア王国現当主。父王である大猫乃主を失う。
魔法メカ・ロボット
魔ローダー 全高25Nメートルの騎士の鎧、プレートアーマーをそのまんま巨大化した様な、魔法力で動くロボット。魔法や物理等殆どの攻撃が効かず、魔ローダーの魔法エネルギーが乗った剣攻撃しか効かない。
蛇輪、日蝕白蛇輪 へびりん、ひばみはくじゃりん。砂緒とフルエレとセレネが交代で乗る主役機。劇中唯一の複座型で、表面は鏡の様なテカテカのメッキ調の銀色で、装甲各所に金色の華麗な装飾が施され非常に成金趣味な見た目をしている。頭部に蛾の触覚の様な巨大な二本の角があり、背中にはド派手な巨大な羽を背負い鳥型の飛行形態に変形出来る。実は砂緒の前世の前世、【等ウェキ玻璃音大王】が、ル・スリー白鳥號を参考に真似して作った機体。両手の尖った爪で突き刺した対象からスキルや能力をコピーする事が出来る。また砂緒の能力で巨大化したり強力な雷攻撃を発したりも出来る。
ル・スリー白鳥號 はくちょうごう。【まおう抱悶】の先祖である【王永嶋フィロソフィー王】が搭乗していた純白の機体。蛇輪に似ているが、よりヒロイックな形状をしている。古代にクラウディア王国で建造された。今は 【千岐大蛇】(チマタノカガチ) 退治の時に紅蓮が偶然入手し扱いに困惑している。劇中最強の機体で数々の魔ローダースキルが隠されている。かつてセレネと砂緒が制作させた【最強の魔法剣】を偶然所有しているが、標準装備の【魔法の刃の剣】も使用出来る。
ル・ツー千鋼ノ天 る・つーせんはがねのてん。猫呼の実家、東の地(中心の洲)【クラウディア王国】の旗機であったが、【神聖連邦帝国】に服従した時に彼女の兄【猫名】が乗り逃げしてしまった。その後【三毛猫仮面】と名乗った猫名がセブンリーファで暗躍して搭乗していた。その後雪乃フルエレに負け鹵獲され同盟の副将機となっていた。濃い紺色の機体に頭部に長大な一本角があり全身が鋭角的に尖っている。
一般機体
XS25 学園生徒達が授業で乗る最弱機体。
SRV 同盟の量産型機で青や赤、緑などの派手なツヤツヤ塗装。
SRV2ルネッサ 王女セレネ用カスタム機体。
SRX 同盟軍次期量産用試験機。




