実は僕……だったんだ展開。
「それもいいかもしれないね」
「私それ賛成、もうお腹ペコペコよ!」
アルピオーネの言葉にパピヨン雪布留が両手を上げて賛成した。
「雪布留さん来ただけで何もしてないですよね?」
「ぐぅ?」
ミラが段々雪布留と名乗る、雪乃フルエレ女王の本性に気付き始めて来た。
「じゃーー、今回の作業のキーパーソンのスナコちゃんは食事しといてよ! 僕はちゃちゃっとル・ツーの股関節分解始めるよ~」
「私も付き合います。その方がお金を節約出来ます」
元々生活が不規則な蘭観は皆と食事する気など毛頭無く、これから早速ル・ツーの分解に掛かるつもりだった。
「何だか悪いわねえ」
「気にせずとも。その方が気楽なんで」
等と猫呼の言葉に反応しつつ、彼はすぐに作業用のXS25を取りに行った。それにウェドも続いた。
「彼って魔ローダー乗れるの?」
「XS25は戦闘に不向きな程低出力の魔ローダーだから、大体の魔力持ちの学院生なら乗れるよ!」
雪布留の質問にラフィーヌが答えた。その横ではアルピオーネがその様子を静かに見ている。
(セレネ王女と行動を共にする、顔を隠した美少女か……)
「じゃあ兎幸、早速料理を作って!」
「あいあい」
「雪布留さんは作る気無いんスか?」
「無いよー」
ミラの突っ込みにあっけらかんと答える雪布留であった。
『私も手伝います……』
すくっと立ち腕まくりしたスナコが兎幸の手伝いを開始した。
「わーースナコちゃんって色々なスキルがあるだけじゃ無くて、家庭的な部分もあるんだぁ」
ルンブレッタが頬を赤らめて感心する。彼としては喫茶猫呼でイェラを手伝う様な感覚で言っただけだが、藪蛇であった。ますますルンブレッタからの好感度が上がってしまう結果に……
(うっ)
ガシーンガシーーン、ガガガガガッ
蘭観が一人で魔呂XS25に乗り、大型工具を使って股関節分解の準備段階として、ル・ツーの腰部装甲を分解して行く。そんなけたたましい大音響の隣で、人々は兎幸とスナコが用意した夜食を摂り始めた。
『ふぅ、疲れたわ』
スナコが額の汗を拭った。
「……ふぅー疲れました、だろーが。最近言葉遣いおかしいぞお前」
直ぐにセレネが冷たい目で突っ込む。
「もぉー美味しそうな料理を前に喧嘩しないで! さぁー食べるわよー」
「それで良く太りませんね」
とにかく雪布留に突っ込みまくり始めたミラであった。
「お疲れ様! スナコちゃん、横いいかな?」
等と言いつつ、ルンブレッタはスナコの席を覗き込む。
『う、大丈夫です』
「やった! 一緒に食べようね」
ささっと早業で横の席に座り込むルンブレッタ。
『いや……』
(そういう意味じゃ無いんですが)
元々人見知りだった雪布留と違い、元来無神経な癖に何故か本性が出せない砂緒であった。
「おい、じゃああたしもスナコの横に座ろうか」
今度は怖い顔をしたセレネがスナコを挟んで反対側の席に座った。
「う、うん、セレネ王女も一緒にハハ」
『……』
そんな様子を雪布留と猫呼はじっと見ていた。
「あれ、どういう事? セレネをルンブレッタくんとスナコが取り合っているの?」
「逆よ、スナコをルンブレッタとセレネが取り合っているのよ!」
「な、何ですって!? お、おも、面白過ぎて爆笑しちゃうわ!?」
涙を滲ませて口を押さえる雪布留を猫呼はじとっとした目で見た。
「あんたそんな性格悪かったっけ?」
「テヘー」
等と言いつつ、猫呼はお互い元気が出て来た事が少し嬉しかった。出来ればこんな明るい日々が長く続いて欲しいと願った。
「ミラ、わ、私、教授の横で食べるよ」
「は?」
意を決した様なジーノがカクカクしながら教授の横に接近した。
「何かね?」
「あ、あのウチら学院への進学を目指してて、教授に色々聞きたいなって」
「んな事聞いた事ねーわ! あたしを巻き込むなよ」
「いーからっ」
ミラとジーノは教授の横に座った。
「雪布留さんですか? よろしければご一緒にどうですか?」
「アルピオーネさん? ええいいですよ!」
「わーー私も居るにゃー」
目ざといアルピオーネがささっとミステリアスなパピヨン雪布留に接近した。
「俺……何の為に居るんだろう? 蘭観とウェドでも手伝うか」
幼馴染のセレネからほぼ無視されたラフィーヌがふらふらと作業場に戻った。
スナコは何故か力なく食事を摂り始めた。しかし横ではルンブレッタとセレネが静かに暗闘し始めていた。
「セレネ王女、ラフィーヌがどっか行っちゃったよ?」
「だから何だと言うのだ」
「ラフィーヌが可愛そうだよ~~」
「うるさいわ知らん」
『ルンブレッタ……聞いていい?』
深刻な顔で唐突にスナコがボードを書いた。
「うん、何? 何でも聞いてよ」
『ルンブレッタって、実は僕……女の子だったんだって事は無い?』
ブーーッ
ルンブレッタはスープを吹いた。
バチャッ!
同時にセレネと雪布留と猫呼がえらい勢いでコケて料理に顔を突っ込んだ。
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主人公3人
砂緒 元現代日本のデパート建屋だったが、魂が発生し百年後に崩壊してセブンリーフに異世界転生して来た。硬くなる重くなる電気が出るなどの地味スキルを持つ。中程度の怪力で特に強く無い。気分次第で異常に完成度の高い女装スナコちゃんに変身する。
雪乃フルエレ ヒロイン①【海と山とに挟まれた小さき王国】の 夜宵姫 だったが家出して色々あってセブンリーフ大同盟の女王になってしまった。金髪の天使の様な美少女。魔導学園では 雪布留と名乗る。
セレネ ヒロイン②ユティトレッド魔導王国王女で髪の長い美少女だが異常に強い魔法剣士。最初嫌悪していた砂緒に猛アタックされフィアンセ同然になる。フルエレを女王に推挙した張本人。討伐部部長。
ユティトレッド魔導学園関係者
ミラとジーノ セレネの子分兼大切な友達。
ユーキュリーネ・カナルト・ヒューゴー 生徒会長でユティトレッド重臣の娘。
ルシネーア 生徒会書記でユーキュリーネに心酔している。
サトー スナコの隣の席の目立たない生徒。
学園長 ユティトレッド魔導王国の現王でセレネのおじい様。立派な長い髭がある。
仲間
依世 雪乃フルエレの妹。 美柑 と名乗り紅蓮と冒険者をやっていた。探していた姉、夜宵姫・フルエレと遂に再会したが喧嘩が絶えない。
猫呼クラウディア 東の地(中心の洲)クラウディア元王国の元王女。失踪中の兄猫名を探してフルエレ達の仲間になった。今は闇ギルドの頭目をしている。背の低いおしゃまな付けネコミミ少女。
兎幸 うさこ。リュフミュラン天球庭園の氷の博物館の館長。月で魔改造されて微妙に成長した。魔ローダーで補助機能になったり砂緒の女装に協力したりする心強いサポート係。
イェラ 元女戦士の褐色の背の高い美人。厨房で料理を作っている。麺料理屋台のチェーン展開するという野望を持つ。口数少ない性格だが砂緒の事が好き。
メラン 元魔導士の冒険者だったが、フルエレ砂緒と知り合い同盟軍の魔ローダー搭乗者になった。二人が居ない時は一応魔呂部隊の責任者となっている。ル・ツー千鋼ノ天に速き稲妻Ⅱと勝手に命名していた。
シャル 猫呼の部下闇ギルド員でボディーガード。腕がぐんぐん伸びる。
イライザ 喫茶猫呼店員。ぜんぜん意地悪く無い普通の子。
ニィル イライザの兄で元浪人であったが砂緒セレネに拾われ新ニナルティナ軍幹部に。
有未レナード公 旧ニナルティナ王国の軍師だったが、ポンコツで無害だったので新ニナルティナの代表に選ばれた。雪乃フルエレ女王を盛り立て、東の地【神聖連邦帝国】との関係に悩む。
ウェカ王子 ラ・マッロカンプ王国の王子。御幼少のみぎりに幼稚園留学生として出会った依世に一目惚れしたが、彼女の裏の仕事を目撃し魔法を撃たれ死に掛けてしまった。
メア ウェカ王子の理解者でセクシーなメイドさん。しつこいくらいに玉の輿をねだる。
まおう抱悶 可愛い熊耳の美少女だが恐ろしい魔力を秘める。砂緒と知り合った関係で雪乃フルエレ女王と大同盟を組む事となった。
神聖連邦帝国(東の地・中心の洲)
紅蓮アルフォード 【神聖連邦帝国】第二百十二代聖帝の息子。西の島、セブンリーフに単身まおう討伐を命じられて渡って来たが、美少女美柑(依世)と知り合い篭絡され、なかなか討伐する気が起きず、いつもブラブラしている。実は劇中一番強い人物だがなかなか本気で戦わない。爽やかでイケメンで真面目な風情に反し、実は人一倍女の子に興味があるムッツリスケベ。
瑠璃ィキャナリー るりぃきゃなりー。神聖連邦帝国四旗機 桃伝説 の搭乗者であったが、紅蓮のサポートとしてセブンリーフに渡り行き倒れ、ウェカ王子に助けられ以降居候になる。かなり強い騎士だが、当地と故郷の間で悩む事になる。モデルは船〇リリィ。
貴城乃シューネ たかぎのシューネ、神聖連邦帝国重臣で主人公達と度々戦う。
猫弐矢 猫呼の兄でクラウディア王国現当主。父王である大猫乃主を失う。
魔法メカ・ロボット
魔ローダー 全高25Nメートルの騎士の鎧、プレートアーマーをそのまんま巨大化した様な、魔法力で動くロボット。魔法や物理等殆どの攻撃が効かず、魔ローダーの魔法エネルギーが乗った剣攻撃しか効かない。
蛇輪、日蝕白蛇輪 へびりん、ひばみはくじゃりん。砂緒とフルエレとセレネが交代で乗る主役機。劇中唯一の複座型で、表面は鏡の様なテカテカのメッキ調の銀色で、装甲各所に金色の華麗な装飾が施され非常に成金趣味な見た目をしている。頭部に蛾の触覚の様な巨大な二本の角があり、背中にはド派手な巨大な羽を背負い鳥型の飛行形態に変形出来る。実は砂緒の前世の前世、【等ウェキ玻璃音大王】が、ル・スリー白鳥號を参考に真似して作った機体。両手の尖った爪で突き刺した対象からスキルや能力をコピーする事が出来る。また砂緒の能力で巨大化したり強力な雷攻撃を発したりも出来る。
ル・スリー白鳥號 はくちょうごう。【まおう抱悶】の先祖である【王永嶋フィロソフィー王】が搭乗していた純白の機体。蛇輪に似ているが、よりヒロイックな形状をしている。古代にクラウディア王国で建造された。今は 【千岐大蛇】(チマタノカガチ) 退治の時に紅蓮が偶然入手し扱いに困惑している。劇中最強の機体で数々の魔ローダースキルが隠されている。かつてセレネと砂緒が制作させた【最強の魔法剣】を偶然所有しているが、標準装備の【魔法の刃の剣】も使用出来る。
ル・ツー千鋼ノ天 る・つーせんはがねのてん。猫呼の実家、東の地(中心の洲)【クラウディア王国】の旗機であったが、【神聖連邦帝国】に服従した時に彼女の兄【猫名】が乗り逃げしてしまった。その後【三毛猫仮面】と名乗った猫名がセブンリーファで暗躍して搭乗していた。その後雪乃フルエレに負け鹵獲され同盟の副将機となっていた。濃い紺色の機体に頭部に長大な一本角があり全身が鋭角的に尖っている。




