スナコちゃん便利能力
『なにをやっておられる? 早く修理を始めてもらいたい!』
同盟旗機蛇輪をみておしゃべりを始めた学院メンバーに対し、イラついたセレネが大声で怒鳴った。
「わっびっくりした。セレネ少し怒り過ぎよ、私達は頼んでる立場なのよー!」
「いや、今度僕からも言っておくよ」
何かというとセレネを庇うラフィーヌであった。
「おっ夫婦感出して来たな」
「いいなあ、あたいも誰かに庇われたいよ」
等と言いながらジーノはちらっと教授を遠巻きに見た。
「しかし……よく見るとこの金メッキと言うが、中々に厚みがあって部分的にはメダルとかレンガくらいあるようだね」
その教授が、黄金糖衣竜によって施されたル・ツー装甲上の金のコーティングを、叩き調べながら呟いた。
「これをどうやって剥がすのでしょうか?」
同じくアルピオーネがあごに手を置きながら考えた。
「普通だったら剥離剤だね。だけどクラウディア製ル・ツーのこのネイビーの装甲の材質が不明だから、配合を間違うと装甲まで侵してしまうかもしれないよ」
薬品に詳しい蘭観が少しだけ元装甲色が露出しているハッチの辺りを見ながら言った。
「何にしても大型の梯子でハッチに接近しないと意味ないよ!」
そんな様子を見ながら猫呼は首を傾げた。
「こんなので本当にあと実質二日とちょっとで出来んの?」
『ちょっと心配になって来ましたね』
等と言っていると、ルンブレッタが大型の車輪付き梯子を押し始めた。
「んーーー重いっ! 一人じゃ無理だよ、蘭観手伝ってよ~~~」
『あっそれ私一人で押します!』
「おいまじかスナコ!?」
「無理でしょ」
ミラとジーノも手伝おうとする。
『いえいえ! 私中途半端な怪力があるんです』
等とボードに書きながら片手でキュリキュリと車輪付きの大型梯子をいとも簡単に動かしだした。
「スナコさん凄い!」
「スナコちゃんそれ大の大人が三人くらいでようやく動くヤツだよ!」
アルピオーネとルンブレッタが揃って驚く。
『此処で良いですか?』
「うん、OKだよ!」
「何で両肩に千て書いてある?」
「さぁ、千鋼ノ天だから??」
ハッチ辺りに設置させた梯子でルンブレッタとスナコと蘭観がハッチに降りた。
コンコン
拳で軽く叩く蘭観。
「うーん、同盟の魔呂と同じ様な金属なのかなあ?」
「こんな量の剥離剤を作るとか地獄だね」
『あの……先程から言ってらっしゃる事、私一人で出来ますけど』
スナコの発言にルンブレッタと蘭観が小首を傾げた。
「えっ? どういう事」
「メッキを剥がせるの?」
『はい』
「まさか、無理しなくて良いよ!」
「人力でどーやって??」
『それは本当だ! ハッチ周りの剥離もスナコが一人でやった。早く二人は離れろ!!』
またもや大音響でセレネが突然叫んで皆がびっくりする。
キュキュ
『ごめんね、セレネがカリカリして……』
『お前が謝んなーーっ! はよやれっ!!』
どんどん株が下がって行くセレネに対し、スナコの良い子ぶりが白々しいと思う猫呼であった。しかし彼女の言葉通り蘭観とルンブレッタは急いで梯子を降りる。
『行きます……はぁあああああああ』
「あれ、気合入れるのまでボードに書くの意味あんのかね?」
「さぁ」
ミラとジーノがあきれる中、スナコは電気を走らせた拳に気合を込めた。
バシーーーン!! バリバリバリッ!!
パンチにより黄金のメッキ上にミシッと亀裂が走ると、パラパラと見事に落ちて行く……
「えっ」
「凄い」
『続けます! はぁああああああ』
バシーーーン!! バシーーン!!
スナコは額に汗を滲ませながら、真面目にひたむきにどんどんと黄金の分厚いメッキを剥がして行く。しかし全高25Nメートルの魔ローダーの胴体に対して、一人で行う作業量は大変な物であった。
「スナコちゃんのあれってどうなってるの??」
ルンブレッタの問いに蛇輪から降りて来たセレネが答えた。
「スナコは両手から雷を発生させる事が出来てな、中程度の怪力で衝撃を与え微細な亀裂を生じさせ、そこからメッキと装甲の間に雷を流す事で、メッキを剥離出来るのだ」
「凄いではないかね? 魔法メッキを施す作業の逆を人力でやるなど大したものですよ」
教授もスナコの頑張りに感心しきりだ。
(うっアイツここぞとばかりにいい子ぶりやがって)
セレネは男達に人気上昇中のスナコに、よくわからない嫉妬を始めていた。
一時間後。
スナコは一心不乱にメッキを落とし続け、遂にル・ツー千鋼ノ天の黄金メッキを全て剥がし落とし、本来の濃いネイビーの装甲色が露わになった。
『ふぅ』
ボードにため息を書き、スナコは額を拭った。そこにルンブレッタが急いで駆け寄る。
「大丈夫かい? 手、痛かったでしょ?」
等と言いながら彼は思わずスナコの白い手をきゅっと握ってしまった。
お読みいただいてありがとうございます。
ブックマーク、下の☆評価、是非お願いします!
主人公3人
砂緒 元現代日本のデパート建屋だったが、魂が発生し百年後に崩壊してセブンリーフに異世界転生して来た。硬くなる重くなる電気が出るなどの地味スキルを持つ。中程度の怪力で特に強く無い。気分次第で異常に完成度の高い女装スナコちゃんに変身する。
雪乃フルエレ ヒロイン①【海と山とに挟まれた小さき王国】の 夜宵姫 だったが家出して色々あってセブンリーフ大同盟の女王になってしまった。金髪の天使の様な美少女。魔導学園では 雪布留と名乗る。
セレネ ヒロイン②ユティトレッド魔導王国王女で髪の長い美少女だが異常に強い魔法剣士。最初嫌悪していた砂緒に猛アタックされフィアンセ同然になる。フルエレを女王に推挙した張本人。討伐部部長。
ユティトレッド魔導学園関係者
ミラとジーノ セレネの子分兼大切な友達。
ユーキュリーネ・カナルト・ヒューゴー 生徒会長でユティトレッド重臣の娘。
ルシネーア 生徒会書記でユーキュリーネに心酔している。
サトー スナコの隣の席の目立たない生徒。
学園長 ユティトレッド魔導王国の現王でセレネのおじい様。立派な長い髭がある。
仲間
依世 雪乃フルエレの妹。 美柑 と名乗り紅蓮と冒険者をやっていた。探していた姉、夜宵姫・フルエレと遂に再会したが喧嘩が絶えない。
猫呼クラウディア 東の地(中心の洲)クラウディア元王国の元王女。失踪中の兄猫名を探してフルエレ達の仲間になった。今は闇ギルドの頭目をしている。背の低いおしゃまな付けネコミミ少女。
兎幸 うさこ。リュフミュラン天球庭園の氷の博物館の館長。月で魔改造されて微妙に成長した。魔ローダーで補助機能になったり砂緒の女装に協力したりする心強いサポート係。
イェラ 元女戦士の褐色の背の高い美人。厨房で料理を作っている。麺料理屋台のチェーン展開するという野望を持つ。口数少ない性格だが砂緒の事が好き。
メラン 元魔導士の冒険者だったが、フルエレ砂緒と知り合い同盟軍の魔ローダー搭乗者になった。二人が居ない時は一応魔呂部隊の責任者となっている。ル・ツー千鋼ノ天に速き稲妻Ⅱと勝手に命名していた。
シャル 猫呼の部下闇ギルド員でボディーガード。腕がぐんぐん伸びる。
イライザ 喫茶猫呼店員。ぜんぜん意地悪く無い普通の子。
ニィル イライザの兄で元浪人であったが砂緒セレネに拾われ新ニナルティナ軍幹部に。
有未レナード公 旧ニナルティナ王国の軍師だったが、ポンコツで無害だったので新ニナルティナの代表に選ばれた。雪乃フルエレ女王を盛り立て、東の地【神聖連邦帝国】との関係に悩む。
ウェカ王子 ラ・マッロカンプ王国の王子。御幼少のみぎりに幼稚園留学生として出会った依世に一目惚れしたが、彼女の裏の仕事を目撃し魔法を撃たれ死に掛けてしまった。
メア ウェカ王子の理解者でセクシーなメイドさん。しつこいくらいに玉の輿をねだる。
まおう抱悶 可愛い熊耳の美少女だが恐ろしい魔力を秘める。砂緒と知り合った関係で雪乃フルエレ女王と大同盟を組む事となった。
神聖連邦帝国(東の地・中心の洲)
紅蓮アルフォード 【神聖連邦帝国】第二百十二代聖帝の息子。西の島、セブンリーフに単身まおう討伐を命じられて渡って来たが、美少女美柑(依世)と知り合い篭絡され、なかなか討伐する気が起きず、いつもブラブラしている。実は劇中一番強い人物だがなかなか本気で戦わない。爽やかでイケメンで真面目な風情に反し、実は人一倍女の子に興味があるムッツリスケベ。
瑠璃ィキャナリー るりぃきゃなりー。神聖連邦帝国四旗機 桃伝説 の搭乗者であったが、紅蓮のサポートとしてセブンリーフに渡り行き倒れ、ウェカ王子に助けられ以降居候になる。かなり強い騎士だが、当地と故郷の間で悩む事になる。モデルは船〇リリィ。
貴城乃シューネ たかぎのシューネ、神聖連邦帝国重臣で主人公達と度々戦う。
猫弐矢 猫呼の兄でクラウディア王国現当主。父王である大猫乃主を失う。
魔法メカ・ロボット
魔ローダー 全高25Nメートルの騎士の鎧、プレートアーマーをそのまんま巨大化した様な、魔法力で動くロボット。魔法や物理等殆どの攻撃が効かず、魔ローダーの魔法エネルギーが乗った剣攻撃しか効かない。
蛇輪、日蝕白蛇輪 へびりん、ひばみはくじゃりん。砂緒とフルエレとセレネが交代で乗る主役機。劇中唯一の複座型で、表面は鏡の様なテカテカのメッキ調の銀色で、装甲各所に金色の華麗な装飾が施され非常に成金趣味な見た目をしている。頭部に蛾の触覚の様な巨大な二本の角があり、背中にはド派手な巨大な羽を背負い鳥型の飛行形態に変形出来る。実は砂緒の前世の前世、【等ウェキ玻璃音大王】が、ル・スリー白鳥號を参考に真似して作った機体。両手の尖った爪で突き刺した対象からスキルや能力をコピーする事が出来る。また砂緒の能力で巨大化したり強力な雷攻撃を発したりも出来る。
ル・スリー白鳥號 はくちょうごう。【まおう抱悶】の先祖である【王永嶋フィロソフィー王】が搭乗していた純白の機体。蛇輪に似ているが、よりヒロイックな形状をしている。古代にクラウディア王国で建造された。今は 【千岐大蛇】(チマタノカガチ) 退治の時に紅蓮が偶然入手し扱いに困惑している。劇中最強の機体で数々の魔ローダースキルが隠されている。かつてセレネと砂緒が制作させた【最強の魔法剣】を偶然所有しているが、標準装備の【魔法の刃の剣】も使用出来る。
ル・ツー千鋼ノ天 る・つーせんはがねのてん。猫呼の実家、東の地(中心の洲)【クラウディア王国】の旗機であったが、【神聖連邦帝国】に服従した時に彼女の兄【猫名】が乗り逃げしてしまった。その後【三毛猫仮面】と名乗った猫名がセブンリーファで暗躍して搭乗していた。その後雪乃フルエレに負け鹵獲され同盟の副将機となっていた。濃い紺色の機体に頭部に長大な一本角があり全身が鋭角的に尖っている。




