スナコちゃん困った……
一方その頃、相談室に軟禁されている雪乃フルエレ女王が変装する雪布留ちゃんは……
バンッ!
先生は定期的に強く机を叩き、その度に雪布留はビクッとする。
「突然変な転校して来て、三日目でもう無断欠席、貴方に悩みが無い訳が無いでしょ! 早くお言いなさいっ!!」
「ひぃいいいい、怖いよーうう」
恐怖の余り雪布留は兎幸に助けを求めようと、ちらっと振り返った。
「すぴーすぴー」
なんと兎幸はいつもの様に、魔力消費を節約する為に可愛い寝息を立てて立ったまま眠っていた。
(うっ兎幸寝てるーー! でも待てよ今なら)
「せ、せんせい、御耳を!?」
「何なの? 妙な事言ったら容赦しないですよ」
熱血女教師はそっと耳を傾けた。
「せ、せんせえー」
「はぅ耳に雪布留さんの吐息が……じゃないじゃない、何ゞ?」
「実は……私こう見えても、雪乃フルエレ女王陛下様なんですよーっ、これ以上私にストレスを加えたらしょっぴかれて牢屋にぶち込まれちゃいますよ!?」
フルエレのささやきに先生の息がハッと一瞬止まった。
「えっ雪布留さんが雪乃フルエレ女王陛下さまですって!?」
「そそそそそ」
フルエレは百連打うなずきを繰り返した。
「あははははは、貴方が女王陛下な訳無いでしょ!? 貴方がフルエレ女王なら、私は遠い宇宙の星の超能力女王様よ! ふざけて無いで悩みをゲロりなさい!!」
バンッ!!
再び先生は机を叩いた。
「ひぃいいいいい怖いようーー」
雪布留は頭を抱えた。
ー再びユティトレッド魔導学院、高度マローダー研究室A。
「話が決まったのなら申し訳無い、あたしらは一分一秒でも惜しい、このまま早速修理に取り掛かって欲しい……今日眠りに就くまで」
セレネは余韻も何も無く遠慮もせずにずけずけと言った。
「あはは、セレネは本当に小っちゃい頃と変らない、せっかちな子だな! まあでもいいよ、教授が許すなら、早速XS25で壊れたル・ツーを研究所のファクトリーに運ぼう」
ラフィーヌは怒りもせずに、セレネの言う通りにしようと準備を始めた。
「そうだね、王女殿下のおおせのままに」
「ふむ突貫工事も面白いかもね」
アルピオーネも蘭観もルンブレッタも教授も異論は無い様であった。ちなみにXS25とは、同盟の量産型魔ローダーSRVの元ともなった最初期のユティトレッドの魔ローダーであり、魔導学園の生徒達の乗る練習機体でもあった。
「いや、それなら結構! 此処まで運んで来た蛇輪がある。早速あたしが運ぼう! とりゃっ」
「えーーーっ!?」
言うや否やセレネは窓からぴょいんと飛び降りて行った。
「気が早いな」
「なんとも」
「うっあたいらどうすりゃいいのさ!?」
「部長そりゃないよー」
取り残されたスナコ、猫呼、ミラとジーノはいきなり途方に暮れる。
「じゃ、スナコちゃん僕達も研究所のファクトリーに急ごう!」
『え? は、はい……』
ルンブレッタは手持無沙汰のスナコを見つけると、優しく語り掛けた。
「なんだよオマエ、いきなり気に入られてんな~~」
「おらおら、お前だけどうしてだよーー!?」
ミラとジーノがからかう様に絡んで来る。
『そ、そんなんじゃ無いです! ルンブレッタさんが優しいだけですよっ』
(うっ私は何を書いてるんだ?)
スナコの中身の砂緒はちょっとゾッとしたが、状況に合わせるしか無かった。砂緒は見るのが怖かったが、猫呼はそんな彼の様子を内心面白がりながらも、やはりセレネの為に彼の正体を暴露したりする気は毛頭無く、我関せずで遠くに眺めている。
「ネコミミさん、その耳って地肌に生えてるのー?」
「きゃう!?」
かつて砂緒がやった様に、変人の蘭観がいきなり猫呼の付けネコミミを触って、彼女も敏感に反応した。
「こ、こら! レディのネコミミに触るなどセクハラ行為は止めないか」
騎士の様にアルピオーネがすかさず、サッと猫呼を守り優しく語り掛けた。
「ごめんね猫耳の姫よ、この男は変人だが悪気は無いのです」
「あ、あう全然平気です! 慣れっこですからアハハ」
(うっアルピオーネさんって凄い美形だわ)
久しぶりに少しときめいた猫呼であった。
そんなこんなで一行は研究所のファクトリーに辿り着くと、既に先回りしてル・ツーを抱えた蛇輪が突っ立っていた。
『遅い! 一体此処まで来るのにどれだけ時間が掛かっている!?』
今セレネは、ユーキュリーネに負けたくない一心で、同盟軍司令官の時と同じ様な気持ちになり、学院生達を軍隊の部下の様な目で見始めていた。
「こらこら! セレネ、君は何えらそうにしてるんだ? 俺は良いけどさ」
「いや、別に良いでしょう! そこのデッキにル・ツーを置いて下さい!」
「あ、あのさー、ル・ツーの胴体抱えてる機体って、同盟の旗機じゃ!?」
「うむ、日蝕白蛇輪だね。本来ならこの機体も根掘り葉掘り調べたい物です」
ラフィーヌ以下研究員と教授は、いきなり眼前に飛び込んで来た同盟の旗機蛇輪に度肝を抜いたのだった。
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主人公3人
砂緒 元現代日本のデパート建屋だったが、魂が発生し百年後に崩壊してセブンリーフに異世界転生して来た。硬くなる重くなる電気が出るなどの地味スキルを持つ。中程度の怪力で特に強く無い。気分次第で異常に完成度の高い女装スナコちゃんに変身する。
雪乃フルエレ ヒロイン①【海と山とに挟まれた小さき王国】の 夜宵姫 だったが家出して色々あってセブンリーフ大同盟の女王になってしまった。金髪の天使の様な美少女。魔導学園では 雪布留と名乗る。
セレネ ヒロイン②ユティトレッド魔導王国王女で髪の長い美少女だが異常に強い魔法剣士。最初嫌悪していた砂緒に猛アタックされフィアンセ同然になる。フルエレを女王に推挙した張本人。討伐部部長。
ユティトレッド魔導学園関係者
ミラとジーノ セレネの子分兼大切な友達。
ユーキュリーネ・カナルト・ヒューゴー 生徒会長でユティトレッド重臣の娘。
ルシネーア 生徒会書記でユーキュリーネに心酔している。
サトー スナコの隣の席の目立たない生徒。
学園長 ユティトレッド魔導王国の現王でセレネのおじい様。立派な長い髭がある。
仲間
依世 雪乃フルエレの妹。 美柑 と名乗り紅蓮と冒険者をやっていた。探していた姉、夜宵姫・フルエレと遂に再会したが喧嘩が絶えない。
猫呼クラウディア 東の地(中心の洲)クラウディア元王国の元王女。失踪中の兄猫名を探してフルエレ達の仲間になった。今は闇ギルドの頭目をしている。背の低いおしゃまな付けネコミミ少女。
兎幸 うさこ。リュフミュラン天球庭園の氷の博物館の館長。月で魔改造されて微妙に成長した。魔ローダーで補助機能になったり砂緒の女装に協力したりする心強いサポート係。
イェラ 元女戦士の褐色の背の高い美人。厨房で料理を作っている。麺料理屋台のチェーン展開するという野望を持つ。口数少ない性格だが砂緒の事が好き。
メラン 元魔導士の冒険者だったが、フルエレ砂緒と知り合い同盟軍の魔ローダー搭乗者になった。二人が居ない時は一応魔呂部隊の責任者となっている。ル・ツー千鋼ノ天に速き稲妻Ⅱと勝手に命名していた。
シャル 猫呼の部下闇ギルド員でボディーガード。腕がぐんぐん伸びる。
イライザ 喫茶猫呼店員。ぜんぜん意地悪く無い普通の子。
ニィル イライザの兄で元浪人であったが砂緒セレネに拾われ新ニナルティナ軍幹部に。
有未レナード公 旧ニナルティナ王国の軍師だったが、ポンコツで無害だったので新ニナルティナの代表に選ばれた。雪乃フルエレ女王を盛り立て、東の地【神聖連邦帝国】との関係に悩む。
ウェカ王子 ラ・マッロカンプ王国の王子。御幼少のみぎりに幼稚園留学生として出会った依世に一目惚れしたが、彼女の裏の仕事を目撃し魔法を撃たれ死に掛けてしまった。
メア ウェカ王子の理解者でセクシーなメイドさん。しつこいくらいに玉の輿をねだる。
まおう抱悶 可愛い熊耳の美少女だが恐ろしい魔力を秘める。砂緒と知り合った関係で雪乃フルエレ女王と大同盟を組む事となった。
神聖連邦帝国(東の地・中心の洲)
紅蓮アルフォード 【神聖連邦帝国】第二百十二代聖帝の息子。西の島、セブンリーフに単身まおう討伐を命じられて渡って来たが、美少女美柑(依世)と知り合い篭絡され、なかなか討伐する気が起きず、いつもブラブラしている。実は劇中一番強い人物だがなかなか本気で戦わない。爽やかでイケメンで真面目な風情に反し、実は人一倍女の子に興味があるムッツリスケベ。
瑠璃ィキャナリー るりぃきゃなりー。神聖連邦帝国四旗機 桃伝説 の搭乗者であったが、紅蓮のサポートとしてセブンリーフに渡り行き倒れ、ウェカ王子に助けられ以降居候になる。かなり強い騎士だが、当地と故郷の間で悩む事になる。モデルは船〇リリィ。
貴城乃シューネ たかぎのシューネ、神聖連邦帝国重臣で主人公達と度々戦う。
猫弐矢 猫呼の兄でクラウディア王国現当主。父王である大猫乃主を失う。
魔法メカ・ロボット
魔ローダー 全高25Nメートルの騎士の鎧、プレートアーマーをそのまんま巨大化した様な、魔法力で動くロボット。魔法や物理等殆どの攻撃が効かず、魔ローダーの魔法エネルギーが乗った剣攻撃しか効かない。
蛇輪、日蝕白蛇輪 へびりん、ひばみはくじゃりん。砂緒とフルエレとセレネが交代で乗る主役機。劇中唯一の複座型で、表面は鏡の様なテカテカのメッキ調の銀色で、装甲各所に金色の華麗な装飾が施され非常に成金趣味な見た目をしている。頭部に蛾の触覚の様な巨大な二本の角があり、背中にはド派手な巨大な羽を背負い鳥型の飛行形態に変形出来る。実は砂緒の前世の前世、【等ウェキ玻璃音大王】が、ル・スリー白鳥號を参考に真似して作った機体。両手の尖った爪で突き刺した対象からスキルや能力をコピーする事が出来る。また砂緒の能力で巨大化したり強力な雷攻撃を発したりも出来る。
ル・スリー白鳥號 はくちょうごう。【まおう抱悶】の先祖である【王永嶋フィロソフィー王】が搭乗していた純白の機体。蛇輪に似ているが、よりヒロイックな形状をしている。古代にクラウディア王国で建造された。今は 【千岐大蛇】(チマタノカガチ) 退治の時に紅蓮が偶然入手し扱いに困惑している。劇中最強の機体で数々の魔ローダースキルが隠されている。かつてセレネと砂緒が制作させた【最強の魔法剣】を偶然所有しているが、標準装備の【魔法の刃の剣】も使用出来る。
ル・ツー千鋼ノ天 る・つーせんはがねのてん。猫呼の実家、東の地(中心の洲)【クラウディア王国】の旗機であったが、【神聖連邦帝国】に服従した時に彼女の兄【猫名】が乗り逃げしてしまった。その後【三毛猫仮面】と名乗った猫名がセブンリーファで暗躍して搭乗していた。その後雪乃フルエレに負け鹵獲され同盟の副将機となっていた。濃い紺色の機体に頭部に長大な一本角があり全身が鋭角的に尖っている。




