出陣、冒険者部隊とフルエレ
洗濯屋さんからの帰り道、砂緒は嫌な物を見てしまい目を浄化したくて何気なくふらっと植土の作業場に立ち寄った。
「フルエレ……」
作業場の前のガレージには植土とフルエレが立っていた。
「何をしているのですか?」
「ああ砂緒おかえり! 今植土さんにサイドカー魔輪の再迷彩化をお願いしていたの。もう一度塗り直すのじゃ無くて、緑色の布を打ち付けてもらって、その上から網を被せて小枝とか挟もうかと」
「今フルエレさんからどれだけお金を浮かせて改修するか相談を受けていました」
砂緒は簡単に植土の言葉を遮る。
「そうでは無くて、何故サイドカー魔輪を迷彩化しているのですか? という事です」
「だって……もし義勇軍が本当に作戦に参加するとなったら必要じゃないかしら!」
「義勇軍が参加してもフルエレは関係無いですよ」
「いえ、私も行きます」
「何を言っているのですか? そんな事が許される訳がありません。大変危険なんですよ」
「始動鍵を持っているらしい魔ローダーも見たいし……」
「冗談ではありません。これまでの出来事とは比べ物にならないくらい危険です。諦めて下さい」
今度ばかりは砂緒は安易にフルエレの言う事を聞くのでは無くて、絶対折れない覚悟だった。
「最近砂緒凄く変わって来たね。変な意味じゃ無くて言う事がまともになって来たね……」
「どういう意味ですか怒りますよ。私が心配するのはフルエレだけですよ。村がどうなっても本心では知りません」
「猫呼ちゃんとイェラさんは禁じ手かも知れないけど、ダメ元で冒険者ギルドの登録者に作戦への参加を募集してるわ……でも冒険者のみなさんは戦争や義勇軍嫌いだから芳しく無いそうだけど……だから私も出来る事をしようと思って」
「折角家を得たこの村を守る為に戦いたいという気持ちは誰も同じです。けれどフルエレは村に居て欲しいですね」
また平行線に戻る二人。
「でも今日はもう戻りましょう。私もおしぼりを持って帰らねばなりません」
「そうだね、サイドカーは預けて行くから歩きだね。植土さん改修お願いします」
「ええ、なるべくお金を浮かせる様に頑張りますよ。さようなら」
フルエレが頑固にもまだサイドカー改修などと言ってる事に多少呆れながら二人は無言で館に戻った。
再び冒険者ギルド一階は貸し切りとなり、作戦会議が開かれていた。
「とうとう内々に王都の正規軍の作戦開始が○月○日、今日から○日後と通達が来た。それまでに戦力を整えて西に進撃しろとよ。あの馬鹿ども本気でやる気らしいねえ、困ったもんだ」
衣図が顎を触りながら呆れて密書をテーブルに投げ捨てる。
「もう行きましょう、このままここで待っててもジリ貧になるかもしれないです。砂緒が言った様に正規軍の動きを見はからった上でですが、より有利になる為に動きましょう!」
フルエレが口火を切った。誰もそれしか無い事は分かっていた。
「私も行きます。砂緒が守ってくれます!」
「おいおい大丈夫かよ、嬢ちゃんも行くってか?」
「もう絶対に曲げないつもりですね、では私は何かあれば全てかなぐり捨てて、フルエレだけ抱えて守って二人で何処ぞへ逃げます。村の皆さん、猫呼ともここでお別れかもしれません。事前にお礼を言っておきます。有難うさようなら」
猫呼が立ち上がり半泣きで叫ぶ。