ミラとジーノは恥ずかしい…… ‐
ユティトレッド王立魔導学院、それは魔導学園が女子高に相当するのに対し、王立学院は大学に相当して、位置的にも広い学園エリア内で学園が西端にあるのに対し、学院は東端に存在した。その王立学院は、ユティトレッド魔導王国が繰り出す新型魔ローダーの開発にも関わっていて、セレネはそこでル・ツー千鋼ノ天を修理しようと考えたのだ。
「ほ、本当に行くんですかい?」
「ウチらは留守番しときやす」
何故か急にミラとジーノがモジモジし始めて皆が困惑した。
「どうしたお前らも行くぞ!」
「わぁ楽しみねえ」
魔法機械好きな雪布留はどんな所だろうと目を輝かせた。
「い、いやあそこは男子率が高いっス」
「そうスよ、言わば女子高の此処と違って男の園……」
「だから、それがどうした?」
セレネは目を細めて二人を見た。
「ど、どんな服着て行ったらいいかとか」
「おめかしとかどうすれば良いかとかわかんねースよ」
セレネはコケた。しかしなおも二人は急に頬を赤らめ、人差し指を合わせてくりくり回転し始めた。
「着替えも要らんしいつもの制服のままで良い、おめかしも要らんぞ!」
「で、でも学院に将来のお婿さんがいるかもしれないっスよ!?」
「そうですよ! 電撃的な出会いを果たすかも知れないじゃないですか!!」
セレネは口を開けたまま何も言えなかった。
(フッお前らも乙女だな……)
そう思いながらぼけーっとして突っ立っているスナコを見た。セレネも白馬の王子様とまでは夢見がちでは無かったが、それなりに将来の相手を夢想していたら、実際に掴まった相手は目の前にいる頭のおかしな少年であった。
「まあっ! ますます楽しみねっ」
(フルエレさん……)
セレネが両手を合わせて笑顔になった雪布留を見た直後。
「雪布留さーーーーーん! 今日は逃がしませんよーーーっ!」
向こうからズドドドと担任の女教師が走って来た。
「は、はい先生?」
「貴方転校したばかりでいきなり無断欠席したわね? 今日こそ相談室でじっくり話し合いましょう!」
先生は熱のこもった瞳で見つめながら、両手で雪布留の白魚の様な細い指を掴んだ。
「い、いえ今からとても大切な用事が……」
「駄目よ、今日は先生と相談しましょう!」
『では拙者も同伴致しましょう』
セットの様に雪布留の横に立つスナコを先生はじーっと見つめた。
「貴方は……いいわ。貴方は大丈夫そうね」
担任の女教師は短い教師生活の中でもスナコの危険性を本能的に察知していた。正しい判断である。
『えーーウチも先生と二人きりで相談したかったです!!』
「ううん、貴方は大丈夫よ、さぁ行きましょ雪布留さん」
「いやあぁああ」
先生は強引に雪布留の腕を引っ張って行く。
「仕方ない兎幸先輩、雪さんが妙な事口走って先生を脅迫しない様に見張って下さい! 我らは学院に急ぎましょう」
「アイアイサー」
兎幸は個人用UFOで引っ張られる雪を追い掛けて行った。
「よし早速全員蛇輪に乗れ!」
「エーッ」
「エーッじゃない! 早くしろ」
セレネの言葉でミラとジーノと猫呼とスナコは蛇輪に乗り込んだ。
「猫呼先輩も?」
「当たり前でしょ、あれは実家の機体よ」
とか言いながら彼女も男目当てであった。
ウィーーーンヒュイーーーン
上の座席でセレネが魔力を供給し、下の座席のスナコが操縦した。ミラとジーノはスナコの両横に立っている。そして蛇輪は転がるル・ツーの胴体をよいしょと持ち上げた。
「お前、本当に魔呂の操縦出来るんだな?」
「何処で覚えたんだよ」
二人は初めて乗る操縦席に興奮した。
『お前らスナコはこれでも数多の戦場を経験した猛者なんだぞ!』
「え、まじっスか!?」
「もしかして敵を撃破とか??」
『スナコはこれでもエースなんだぞ。ボッコボコ敵魔呂を撃破してる』
事実である。
キュキュッ
『私も教室で授業を受けていると、ふと戦場を思い出す事があります……』
「ス、スナコさん?」
「す、凄いッスねハハ」
『いやだなあ、お二人は私の部の先輩、今まで通りで良いですよキャハッ』
「お前いい奴だなあ」
「この可愛い奴め!」
ミラが思わず抱き着くと、大きな胸がスナコの顔にむぎゅっと押し付けられた。
(ミラはおめかし等しなくとも凄い武器があるじゃないですか……)
スナコは無言でル・ツーを抱え王立学院に向かった。
ユティトレッド魔道王国・地図
お読みいただいてありがとうございます。
主人公3人
砂緒 元現代日本のデパート建屋だったが、魂が発生し百年後に崩壊してセブンリーフに異世界転生して来た。硬くなる重くなる電気が出るなどの地味スキルを持つ。中程度の怪力で特に強く無い。気分次第で異常に完成度の高い女装スナコちゃんに変身する。
雪乃フルエレ ヒロイン①【海と山とに挟まれた小さき王国】の 夜宵姫 だったが家出して色々あってセブンリーフ大同盟の女王になってしまった。金髪の天使の様な美少女。魔導学園では 雪布留と名乗る。
セレネ ヒロイン②ユティトレッド魔導王国王女で髪の長い美少女だが異常に強い魔法剣士。最初嫌悪していた砂緒に猛アタックされフィアンセ同然になる。フルエレを女王に推挙した張本人。討伐部部長。
ユティトレッド魔導学園関係者
ミラとジーノ セレネの子分兼大切な友達。
ユーキュリーネ・カナルト・ヒューゴー 生徒会長でユティトレッド重臣の娘。
サトー スナコの隣の席の目立たない生徒。
学園長 ユティトレッド魔導王国の現王でセレネのおじい様。立派な長い髭がある。
仲間
依世 雪乃フルエレの妹。 美柑 と名乗り紅蓮と冒険者をやっていた。探していた姉、夜宵姫・フルエレと遂に再会したが喧嘩が絶えない。
猫呼クラウディア 東の地(中心の洲)クラウディア元王国の元王女。失踪中の兄猫名を探してフルエレ達の仲間になった。今は闇ギルドの頭目をしている。背の低いおしゃまな付けネコミミ少女。
兎幸 うさこ。リュフミュラン天球庭園の氷の博物館の館長。月で魔改造されて微妙に成長した。魔ローダーで補助機能になったり砂緒の女装に強力したりする心強いサポート係。
イェラ 元女戦士の褐色の背の高い美人。厨房で料理を作っている。麺料理屋台のチェーン展開するという野望を持つ。口数少ない性格だが砂緒の事が好き。
シャル 猫呼の部下闇ギルド員でボディーガード。腕がぐんぐん伸びる。
イライザ 喫茶猫呼店員。ぜんぜん意地悪く無い普通の子。
ニィル イライザの兄で元浪人であったが砂緒セレネに拾われ新ニナルティナ軍幹部に。
有未レナード公 旧ニナルティナ王国の軍師だったが、ポンコツで無害だったので新ニナルティナの代表に選ばれた。雪乃フルエレ女王を盛り立て、東の地【神聖連邦帝国】との関係に悩む。
ウェカ王子 ラ・マッロカンプ王国の王子。御幼少のみぎりに幼稚園留学生として出会った依世に一目惚れしたが、彼女の裏の仕事を目撃し魔法を撃たれ死に掛けてしまった。
メア ウェカ王子の理解者でセクシーなメイドさん。しつこいくらいに玉の輿をねだる。
まおう抱悶 可愛い熊耳の美少女だが恐ろしい魔力を秘める。砂緒と知り合った関係で雪乃フルエレ女王と大同盟を組む事となった。
神聖連邦帝国(東の地・中心の洲)
紅蓮アルフォード 【神聖連邦帝国】第二百十二代聖帝の息子。西の島、セブンリーフに単身まおう討伐を命じられて渡って来たが、美少女美柑(依世)と知り合い篭絡され、なかなか討伐する気が起きず、いつもブラブラしている。実は劇中一番強い人物だがなかなか本気で戦わない。爽やかでイケメンで真面目な風情に反し、実は人一倍女の子に興味があるムッツリスケベ。
瑠璃ィキャナリー るりぃきゃなりー。神聖連邦帝国四旗機 桃伝説 の搭乗者であったが、紅蓮のサポートとしてセブンリーフに渡り行き倒れ、ウェカ王子に助けられ以降居候になる。かなり強い騎士だが、当地と故郷の間で悩む事になる。モデルは船〇リリィ。
貴城乃シューネ たかぎのシューネ、神聖連邦帝国重臣で主人公達と度々戦う。
猫弐矢 猫呼の兄でクラウディア王国現当主。父王である大猫乃主を失う。
魔法メカ・ロボット
魔ローダー 全高25Nメートルの騎士の鎧、プレートアーマーをそのまんま巨大化した様な、魔法力で動くロボット。魔法や物理等殆どの攻撃が効かず、魔ローダーの魔法エネルギーが乗った剣攻撃しか効かない。
蛇輪、日蝕白蛇輪 へびりん、ひばみはくじゃりん。砂緒とフルエレとセレネが交代で乗る主役機。劇中唯一の複座型で、表面は鏡の様なテカテカのメッキ調の銀色で、装甲各所に金色の華麗な装飾が施され非常に成金趣味な見た目をしている。頭部に蛾の触覚の様な巨大な二本の角があり、背中にはド派手な巨大な羽を背負い鳥型の飛行形態に変形出来る。実は砂緒の前世の前世、【等ウェキ玻璃音大王】が、ル・スリー白鳥號を参考に真似して作った機体。両手の尖った爪で突き刺した対象からスキルや能力をコピーする事が出来る。また砂緒の能力で巨大化したり強力な雷攻撃を発したりも出来る。
ル・スリー白鳥號 はくちょうごう。【まおう抱悶】の先祖である【王永嶋フィロソフィー王】が搭乗していた純白の機体。蛇輪に似ているが、よりヒロイックな形状をしている。古代にクラウディア王国で建造された。今は 【千岐大蛇】(チマタノカガチ) 退治の時に紅蓮が偶然入手し扱いに困惑している。劇中最強の機体で数々の魔ローダースキルが隠されている。かつてセレネと砂緒が制作させた【最強の魔法剣】を偶然所有しているが、標準装備の【魔法の刃の剣】も使用出来る。
ル・ツー千鋼ノ天 る・つーせんはがねのてん。猫呼の実家、東の地(中心の洲)【クラウディア王国】の旗機であったが、【神聖連邦帝国】に服従した時に彼女の兄【猫名】が乗り逃げしてしまった。その後【三毛猫仮面】と名乗った猫名がセブンリーファで暗躍して搭乗していた。その後雪乃フルエレに負け鹵獲され同盟の副将機となっていた。濃い紺色の機体に頭部に長大な一本角があり全身が鋭角的に尖っている。




