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操縦席の中身

 セレネ達が見ると、本当に金色のテッカテカになってしまったスナコがすくっと立った状態で存在した。


「ぎゃーースナコが本当に金色の彫像に!?」

「実に興味深い……これは我が国の倉庫の奥に展示したいな」


 紅蓮アルフォードが顎を触りながらしげしげと眺めた。


「ちょっと待って! このまま待ってれば銀のスナコちゃんと普通のスナコちゃんが出てきて、その内どれかを選ぶ事になるんじゃないかしら!?」


 雪布留が冗談とも本気ともつかない口調で言った。この異世界にもアレと類似の昔話が存在するようだ。


「あんた達そんな事言ってる場合スか?」

「スナコは今呼吸出来ていないんスよ!」

「そうだ、一体どうやって助けようか??」


 セレネとミラとジーノがスナコ像の前で右往左往する。


「よし、取り敢えず僕が炎で焼いてみよう!」

「ダメだっ! もし気絶してたら硬化出来てないから死んでしまう!」

「硬化てなんスか?」

「じゃあどうすんのよ??」


 猫呼が冷静に聞いた。


「剣先で地道に削っていくか? 兎幸先輩紙ヤスリとかないですか?」

「そんなペーパーで削るとか皮膚まで削れそうだし、剣先とか危なすぎるわ!」


 簡単そうに見えてどうすればいいか皆迷った。


「仕方ない……岩に打ち付けよう……それでヒビが出来たらそっから爪で削っていこう!」

「え、爪??」

「今爪って言ったっスか??」


 結局爪で削るという超原始的な手法に決定した。


「おりゃーーーーー!!」


 ドシャッ

 スナコの両足を抱えたセレネが思い切り彼の体を謎の巨大黄金物体に打ち付けた。

 ゴーーーーーーン!

 鈍い音が響く。


「ヒビが入った!?」

「まだだ、もう一回!!」


 ゴーーーン!

 虐待の様にも見えるが助ける為だ。

 ぱりぱりぱり……


「見て! 全身にヒビが入ったわ!!」

「よし皆で爪で削れ!!」

「本当にやるの? 下半身は担当したく無いけど」

「……あたしがやるよ」

「まっ」

「このやり取りは何スか?」


 どしゃっとスナコを島に置くと、一斉に皆で爪で削ろうとしたが……

 パシパシッ

 何か感じ、突然紅蓮が飛び上がった。


「みんな危ない! スナコから離れろっ」

「えっ?」

「良いから従えっ!」


 と再び紅蓮が叫んだ直後、パシパシという音が段々強くなり、やがてバリバリとはっきりと激しい音が聞こえた。

 パシッビシッ!! バリバリバリッッ!

 皆の見ている前で黄金のスナコ像のヒビの中を激しい稲妻が走っているのが見えた直後。

 ぺりぺりぺり

 体中の厚めの黄金メッキが剥がれ落ちた。その中には目をグルグルに回し、泡を吹いているスナコのやつれて気絶した姿があった。


「スナコーーーーッッ!!」

「スナコ大丈夫!?」


 セレネと雪布留が慌ててしがみついた。


「心臓が動いてない……」

「えっ?」


 直後、セレネは泡を吹いているスナコの口に躊躇なく吸い付いた。さらに心臓マッサージを開始する。


「くっ猫呼先輩回復魔法を!」

「うん!」

「うおースナコ頑張れっ!」

「15分は経っている、どうかな?」

「うるさいわっ!」


 ミラが紅蓮のつぶやきにイラついて叫んだ。その後もセレネの必死の蘇生は続いた。



 ー数分後。


「ぐはっげほげほ……セレネ」

「もうースナコのばか!」

「よかったわーー!」


 二人の間に何度か繰り返された光景である。雪布留が見守る中、しばし二人は無言で抱き合った。


「うっスナコと部長って何かあんのか?」

「だな、部長の様子が尋常じゃないね」

「さ、追い回復魔法よ」


 猫呼が続けて回復魔法を掛け、皆はスナコの頭がハッキリするのを待った。



「どうやらあの竜が二回目に顔を出した時、べっとスナコを口から出していた様だね」

『命拾いしました。あのまま湖底に連れていかれたらと思うと』


 スナコの意識がハッキリした所で今度は猫呼がずいっと皆の前に出た。


「皆聞いて、この黄金の塊だけど……これは多分私のお父様のル・ツー千鋼ノ天だわ。それでスナコちゃんにお願いがあるのだけど、貴方の中途半端な怪力で操縦席辺りの厚めのメッキを破壊して欲しいの」


 突然の発言に皆意表を突かれた。


「そうか、ヒビ割れた隙間から見える紺色の装甲、ル・ツーだったか」

「私達がヌッ様で影縫いして巻き込んでしまった……此処まであの竜が?」

『確かに片腕と両脚を無くした形状とか大きさとかピッタリです。本当に良いのですか?』

「ええ、良いわやっちゃって頂戴」

『兎幸!』

「あいあい」


 言われて兎幸はUFOでスナコをハッチの上まで導いた。


『はぁあああああああ!!』


 気合までボードに書くスナコ。精神集中すると弱い電気を帯びた正拳突きでハッチを思い切りパンチした。

 ガーーーーーン!!

 ピシッぱりぱりぱり……

 先程のスナコの時よりも厚めの黄金メッキがパラパラと落下して良く。より広範囲が露出するようにスナコはその作業を繰り返した。


「ス、スナコそこそこやるじゃねーかハハ」

「そうだな」


 ミラとジーノは甘く見ていたスナコの怪力に多少びびった。


「皆一緒にハッチの周りまで登って……お願い」


 猫呼の言葉に皆は無言で従いよじ登って行った。

お読みいただいてありがとうございます。


主人公3人

砂緒(すなお)  元現代日本のデパート建屋だったが、魂が発生し百年後に崩壊してセブンリーフに異世界転生して来た。硬くなる重くなる電気が出るなどの地味スキルを持つ。中程度の怪力で特に強く無い。気分次第で異常に完成度の高い女装スナコちゃんに変身する。


雪乃フルエレ  ヒロイン①【海と山とに挟まれた小さき王国】の 夜宵姫(やよいひめ) だったが家出して色々あってセブンリーフ大同盟の女王になってしまった。金髪の天使の様な美少女。魔導学園では 雪布留(ユキフル)と名乗る。


セレネ  ヒロイン②ユティトレッド魔導王国王女で髪の長い美少女だが異常に強い魔法剣士。最初嫌悪していた砂緒に猛アタックされフィアンセ同然になる。フルエレを女王に推挙した張本人。討伐部部長。


ユティトレッド魔導学園関係者

ミラとジーノ セレネの子分兼大切な友達。

ユーキュリーネ・カナルト・ヒューゴー 生徒会長でユティトレッド重臣の娘。

サトー スナコの隣の席の目立たない生徒。

学園長 ユティトレッド魔導王国の現王でセレネのおじい様。立派な長い髭がある。


仲間

依世(いよ)  雪乃フルエレの妹。 美柑(みか) と名乗り紅蓮と冒険者をやっていた。探していた姉、夜宵姫・フルエレと遂に再会したが喧嘩が絶えない。


猫呼クラウディア  東の地(中心の洲)クラウディア元王国の元王女。失踪中の兄猫名を探してフルエレ達の仲間になった。今は闇ギルドの頭目をしている。背の低いおしゃまな付けネコミミ少女。


兎幸  うさこ。リュフミュラン天球庭園の氷の博物館の館長。月で魔改造されて微妙に成長した。魔ローダーで補助機能になったり砂緒の女装に強力したりする心強いサポート係。


イェラ  元女戦士の褐色の背の高い美人。厨房で料理を作っている。麺料理屋台のチェーン展開するという野望を持つ。口数少ない性格だが砂緒の事が好き。


シャル  猫呼の部下闇ギルド員でボディーガード。腕がぐんぐん伸びる。

イライザ  喫茶猫呼店員。ぜんぜん意地悪く無い普通の子。

ニィル  イライザの兄で元浪人であったが砂緒セレネに拾われ新ニナルティナ軍幹部に。

有未レナード公  旧ニナルティナ王国の軍師だったが、ポンコツで無害だったので新ニナルティナの代表に選ばれた。雪乃フルエレ女王を盛り立て、東の地【神聖連邦帝国】との関係に悩む。


ウェカ王子 ラ・マッロカンプ王国の王子。御幼少のみぎりに幼稚園留学生として出会った依世に一目惚れしたが、彼女の裏の仕事を目撃し魔法を撃たれ死に掛けてしまった。

メア ウェカ王子の理解者でセクシーなメイドさん。しつこいくらいに玉の輿をねだる。


まおう抱悶(だもん)  可愛い熊耳の美少女だが恐ろしい魔力を秘める。砂緒と知り合った関係で雪乃フルエレ女王と大同盟を組む事となった。


神聖連邦帝国(東の地・中心の洲)

紅蓮アルフォード  【神聖連邦帝国】第二百十二代聖帝の息子。西の島、セブンリーフに単身まおう討伐を命じられて渡って来たが、美少女美柑(依世)と知り合い篭絡され、なかなか討伐する気が起きず、いつもブラブラしている。実は劇中一番強い人物だがなかなか本気で戦わない。爽やかでイケメンで真面目な風情に反し、実は人一倍女の子に興味があるムッツリスケベ。


瑠璃ィキャナリー  るりぃきゃなりー。神聖連邦帝国四旗機 桃伝説(ももでんせつ) の搭乗者であったが、紅蓮のサポートとしてセブンリーフに渡り行き倒れ、ウェカ王子に助けられ以降居候になる。かなり強い騎士だが、当地と故郷の間で悩む事になる。モデルは船〇リリィ。


貴城乃シューネ たかぎのシューネ、神聖連邦帝国重臣で主人公達と度々戦う。

猫弐矢 猫呼の兄でクラウディア王国現当主。父王である大猫乃主を失う。


魔法メカ・ロボット

魔ローダー  全高25Nメートルの騎士の鎧、プレートアーマーをそのまんま巨大化した様な、魔法力で動くロボット。魔法や物理等殆どの攻撃が効かず、魔ローダーの魔法エネルギーが乗った剣攻撃しか効かない。


蛇輪、日蝕白蛇輪  へびりん、ひばみはくじゃりん。砂緒とフルエレとセレネが交代で乗る主役機。劇中唯一の複座型で、表面は鏡の様なテカテカのメッキ調の銀色で、装甲各所に金色の華麗な装飾が施され非常に成金趣味な見た目をしている。頭部に蛾の触覚の様な巨大な二本の角があり、背中にはド派手な巨大な羽を背負い鳥型の飛行形態に変形出来る。実は砂緒の前世の前世、【等ウェキ玻璃音大王】が、ル・スリー白鳥號を参考に真似して作った機体。両手の尖った爪で突き刺した対象からスキルや能力をコピーする事が出来る。また砂緒の能力で巨大化したり強力な雷攻撃を発したりも出来る。


ル・スリー白鳥號  はくちょうごう。【まおう抱悶】の先祖である【王永嶋フィロソフィー王】が搭乗していた純白の機体。蛇輪に似ているが、よりヒロイックな形状をしている。古代にクラウディア王国で建造された。今は 【千岐大蛇】(チマタノカガチ) 退治の時に紅蓮が偶然入手し扱いに困惑している。劇中最強の機体で数々の魔ローダースキルが隠されている。かつてセレネと砂緒が制作させた【最強の魔法剣】を偶然所有しているが、標準装備の【魔法の刃の剣】も使用出来る。


ル・ツー千鋼ノ天  る・つーせんはがねのてん。猫呼の実家、東の地(中心の洲)【クラウディア王国】の旗機であったが、【神聖連邦帝国】に服従した時に彼女の兄【猫名】が乗り逃げしてしまった。その後【三毛猫仮面】と名乗った猫名がセブンリーファで暗躍して搭乗していた。その後雪乃フルエレに負け鹵獲され同盟の副将機となっていた。濃い紺色の機体に頭部に長大な一本角があり全身が鋭角的に尖っている。

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