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黄金のスナコ

「ガアアアアア!!」


 黄金糖衣竜は巨大な爪で紅蓮のボートめがけて襲い掛かる。


「ちょっとゴメン」

「きゃう!?」


 紅蓮は急いで猫呼(ねここ)の両脇に手を入れると、ぽいっと他のボートに投げた。

 ゴウンッ!!

 直後に今度は素早くテントのポールで炎の剣を再現して竜の爪を防いだ。竜は剣の熱さにたまらず少し後退する。


「今横乳に手が当たったからなスケベッ!」

「ごめんごめん僕も一瞬君に女を感じたよ」

「感じんなよ変態かよ」


 何時いかなる時にでも些細なスケベ心を忘れない王子、紅蓮アルフォードにミラは不信感を感じた……


「にしてもマタマタだとか黄金糖衣竜だとか微妙な竜しか出てこないわねえ」


 猫呼が両手を広げながら言った。


(猫呼つい最近千岐大蛇(ちまたのかがち)っていう凄い敵を倒したじゃない……)


 と、雪布留が思った事をみんなも思ったが、それは同時に彼女の父大猫乃主(おおねこのぬし)の死をも思い出させて口をつぐんだ。


「それは兎も角、この竜僕が豪炎の最大威力で叩き切って倒してやろうか?」

「ダメッ何て事言うの紅蓮」


 雪布留(ゆきふる)が久しぶりにえらい剣幕で叫んだ。


「フルエレさん……」


 皆が忘れかけている砂緒(すなお)を心配しての事だと思い、セレネとミラジーノ達はほろりとした。


「あの竜の体内には私たちの大切な金塊が含まれてるのよ! 湖底にバラバラになったらどうするの!?」


 セレネはコケた。


「そうか、この地底湖は海と繋がってて、この竜は落ちた金塊を拾って食べていたのか……」

「とすると、この竜を上手く捕獲すれば体内の金塊を無事回収出来る訳か」

「でもスナコの命が……」


 やはりミラがスナコの心配をして、のんびりしている一行にやきもきする。


「うりゃーーーー!!」


 ジャキーーーンッ

 そうこうしている内に体勢を立て直した竜に、今度はセレネが氷魔法を掛けて片手を凍らせる。しかしこの超大型の黄金糖衣竜は以前に倒したサーペントドラゴンより遥かに巨大で、30Nメートル程はあったので、体全体を凍らせる事は難しそうだった。


「グワワーーーーーンン」


 黄金糖衣竜は片手を凍らされた違和感に苦しんで、思わずくるりと背中を向ける。


「どこに行く!!」


 紅蓮は猛スピードでボートを漕いで背中を向けた竜を追いかけた。その竜はいそいそと巨大な黄金の塊がある小島に乗りあがると、凍ったままの片手を振り上げた。

 ガチィーーーンガチィーーーン!!

 冷たくて気持ち悪いのか、必死に片手を黄金に叩きつける竜。

 ピシッ

 何度も叩きつけるので、黄金のメッキにひびが入る。


「うっなんか竜が黄金を割ってる……」

「見て、中から濃い紺色の何かが見えるわ……」

「えっ紺色??」


 猫呼がハッとした。

 パキーーン!

 竜が片手の氷を砕いてようやく再びこちらに振り返った。


「地上に居るなら!!」


 ザーーーーン!!

 ボートからジャンプした紅蓮が、再び豪炎で今度は黄金糖衣竜の片足を切り落とした。


「ぐおおおおおおおおーーーーん!?」


 ズダーーーーンッ!

 竜は苦悶の叫びを上げながら小島に乗り上げたまま倒れこんだ。


「よし、取り敢えず脳に氷魔法突き刺してシメちまおう!!」

「それなら腹から金塊もスナコも取り出せるっスね!」

「よーしやっちまえっ!!」


 ミラとジーノが腕を振り上げてセレネに声援を送った。


「ダメッ! 可哀そうよ……」

「雪布留さん?」

「この竜はサーペントドラゴンや千岐大蛇と違って町を襲ったりしてる訳じゃない。ただ落ちてきた金を食べて好みの岩にメッキしてるだけじゃない、何で命を奪うの!?」


 フルエレは両手を組んでセレネに必死に訴えた。


「……スナコを……食ったから……」

「あ、忘れてた……」


 素で天然でもはやスナコの事を忘れていたフルエレであった。これは二人の強い信頼関係があっての事であり、決して金の事ばかりに目を奪われていた訳ではあるまい……

 ドボーーーーンッッ!!

 突然上がる巨大な水柱。


「あーーーーー逃げやがった!!」


 片足を切り落とされたまま、黄金糖衣竜は地底湖深く泳いで消えた。


「わーーーーーースナコ!?」

「雪布留さんどうしてくれるんですかい!?」

「お、落ち着いて、スナコちゃんはこういう危険をいくつも乗り越えて来たのよ」

「フルエレさんどうすんですか!?」


 ミラとジーノとセレネに攻められまくってフルエレは焦りまくった。実際水中深く竜を追い掛ける事は事実上不可能であった。


「あ、そうだ兎幸(うさこ)は!?」

「むり」

「はやっ」

「うぎゃーーーーーっ」


 と、しげしげと黄金の割れ目を見ていた猫呼が突然叫び声を上げた。


「どした猫呼ちゃん!?」


 微かに胸があると分かった途端に優しくなった紅蓮が心配して見る。


「スナコが金の彫像になってる!?」

「えっ」

お読みいただいてありがとうございます。


主人公3人

砂緒(すなお)  元現代日本のデパート建屋だったが、魂が発生し百年後に崩壊してセブンリーフに異世界転生して来た。硬くなる重くなる電気が出るなどの地味スキルを持つ。中程度の怪力で特に強く無い。気分次第で異常に完成度の高い女装スナコちゃんに変身する。


雪乃フルエレ  ヒロイン①【海と山とに挟まれた小さき王国】の 夜宵姫(やよいひめ) だったが家出して色々あってセブンリーフ大同盟の女王になってしまった。金髪の天使の様な美少女。魔導学園では 雪布留(ユキフル)と名乗る。


セレネ  ヒロイン②ユティトレッド魔導王国王女で髪の長い美少女だが異常に強い魔法剣士。最初嫌悪していた砂緒に猛アタックされフィアンセ同然になる。フルエレを女王に推挙した張本人。討伐部部長。


ユティトレッド魔導学園関係者

ミラとジーノ セレネの子分兼大切な友達。

ユーキュリーネ・カナルト・ヒューゴー 生徒会長でユティトレッド重臣の娘。

サトー スナコの隣の席の目立たない生徒。

学園長 ユティトレッド魔導王国の現王でセレネのおじい様。立派な長い髭がある。


仲間

依世(いよ)  雪乃フルエレの妹。 美柑(みか) と名乗り紅蓮と冒険者をやっていた。探していた姉、夜宵姫・フルエレと遂に再会したが喧嘩が絶えない。


猫呼クラウディア  東の地(中心の洲)クラウディア元王国の元王女。失踪中の兄猫名を探してフルエレ達の仲間になった。今は闇ギルドの頭目をしている。背の低いおしゃまな付けネコミミ少女。


兎幸  うさこ。リュフミュラン天球庭園の氷の博物館の館長。月で魔改造されて微妙に成長した。魔ローダーで補助機能になったり砂緒の女装に強力したりする心強いサポート係。


イェラ  元女戦士の褐色の背の高い美人。厨房で料理を作っている。麺料理屋台のチェーン展開するという野望を持つ。口数少ない性格だが砂緒の事が好き。


シャル  猫呼の部下闇ギルド員でボディーガード。腕がぐんぐん伸びる。

イライザ  喫茶猫呼店員。ぜんぜん意地悪く無い普通の子。

ニィル  イライザの兄で元浪人であったが砂緒セレネに拾われ新ニナルティナ軍幹部に。

有未レナード公  旧ニナルティナ王国の軍師だったが、ポンコツで無害だったので新ニナルティナの代表に選ばれた。雪乃フルエレ女王を盛り立て、東の地【神聖連邦帝国】との関係に悩む。


ウェカ王子 ラ・マッロカンプ王国の王子。御幼少のみぎりに幼稚園留学生として出会った依世に一目惚れしたが、彼女の裏の仕事を目撃し魔法を撃たれ死に掛けてしまった。

メア ウェカ王子の理解者でセクシーなメイドさん。しつこいくらいに玉の輿をねだる。


まおう抱悶(だもん)  可愛い熊耳の美少女だが恐ろしい魔力を秘める。砂緒と知り合った関係で雪乃フルエレ女王と大同盟を組む事となった。


神聖連邦帝国(東の地・中心の洲)

紅蓮アルフォード  【神聖連邦帝国】第二百十二代聖帝の息子。西の島、セブンリーフに単身まおう討伐を命じられて渡って来たが、美少女美柑(依世)と知り合い篭絡され、なかなか討伐する気が起きず、いつもブラブラしている。実は劇中一番強い人物だがなかなか本気で戦わない。爽やかでイケメンで真面目な風情に反し、実は人一倍女の子に興味があるムッツリスケベ。


瑠璃ィキャナリー  るりぃきゃなりー。神聖連邦帝国四旗機 桃伝説(ももでんせつ) の搭乗者であったが、紅蓮のサポートとしてセブンリーフに渡り行き倒れ、ウェカ王子に助けられ以降居候になる。かなり強い騎士だが、当地と故郷の間で悩む事になる。モデルは船〇リリィ。


貴城乃シューネ たかぎのシューネ、神聖連邦帝国重臣で主人公達と度々戦う。

猫弐矢 猫呼の兄でクラウディア王国現当主。父王である大猫乃主を失う。


魔法メカ・ロボット

魔ローダー  全高25Nメートルの騎士の鎧、プレートアーマーをそのまんま巨大化した様な、魔法力で動くロボット。魔法や物理等殆どの攻撃が効かず、魔ローダーの魔法エネルギーが乗った剣攻撃しか効かない。


蛇輪、日蝕白蛇輪  へびりん、ひばみはくじゃりん。砂緒とフルエレとセレネが交代で乗る主役機。劇中唯一の複座型で、表面は鏡の様なテカテカのメッキ調の銀色で、装甲各所に金色の華麗な装飾が施され非常に成金趣味な見た目をしている。頭部に蛾の触覚の様な巨大な二本の角があり、背中にはド派手な巨大な羽を背負い鳥型の飛行形態に変形出来る。実は砂緒の前世の前世、【等ウェキ玻璃音大王】が、ル・スリー白鳥號を参考に真似して作った機体。両手の尖った爪で突き刺した対象からスキルや能力をコピーする事が出来る。また砂緒の能力で巨大化したり強力な雷攻撃を発したりも出来る。


ル・スリー白鳥號  はくちょうごう。【まおう抱悶】の先祖である【王永嶋フィロソフィー王】が搭乗していた純白の機体。蛇輪に似ているが、よりヒロイックな形状をしている。古代にクラウディア王国で建造された。今は 【千岐大蛇】(チマタノカガチ) 退治の時に紅蓮が偶然入手し扱いに困惑している。劇中最強の機体で数々の魔ローダースキルが隠されている。かつてセレネと砂緒が制作させた【最強の魔法剣】を偶然所有しているが、標準装備の【魔法の刃の剣】も使用出来る。

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