とにかく最深部へ
『つまり?』
代表してスナコちゃんが聞いた。
「いやーする事が無かったからさ、この二日程9層まで潜って敵を狩りまくって来たよハハハ」
紅蓮アルフォードは屈託の無い爽やかな笑顔で頭を掻いた。
(外見だけは王子様な奴だな……)
ミラは紅蓮の笑顔を見つつ、複雑な心境になった。
「ハハハじゃねーわ! それで何かイイモン出たのかよ!?」
「セレネちゃん安心してよ! 敵を倒しまくっても何も出なかったよー」
「どうするのセレネ?」
雪布留が小首を傾げた。
「雪布留さん仕方ない、我々で最下層10層まで降りて何か得るしかないでしょう」
「他の生徒がいない時はフルエレで良いのよ!」
「いいえ、フルエレさん言い続けると、とっさの時に出て来ません。最近ようやく雪布留さんで定着して来たのです」
フルエレはにこっと笑った。
「セレネらしいわ! でも今度はニナルティナに戻った時に雪布留さん言いそうねフフ」
『そんな事より! 10層って行くのにどれくらいかかるんですか?』
スナコちゃんがセレネと同じく律儀にホワイトボードで聞いた。
「そうだね、戦いながら行って9層までUターンして二日だったから、急いで行けば半日くらいかな?」
『そんなかかるのか』
「じゃあこうしない? 兎幸に大急ぎで蛇輪を持って来てもらって、大穴を開けて突貫でラスボスか何かを倒しちゃうの!」
フルエレが手を合わせて笑顔で言った。
「やっぱ魔ローダーでやっちゃったらダメなんじゃねースか?」
「一応部活動の成果ですからねえ、あのユーキュリーネがどんな文句付けやがるか」
ミラとジーノの言う事は最もであった。
「そうよ! じゃあ皆で最下層まで行きましょうよ!」
雪布留が再び声を大にして言った。
「いやフルエレさん聞いてました? 皆で行っていたら明日の登校に間に合わない」
「……休みましょうよ」
「休みましょうよ……じゃないです! 転校三日目にして休んじゃだめでしょ!!」
余りのセレネの剣幕にフルエレはビクッとした。
「えーでもセレネだって学校休みがちだし、戦争の時は長期欠席してたじゃない」
「うっ」
それを言われると言い返せないセレネであった。
『仕方ないですね。そうなりゃ急いで行きましょう! けど途中、仮眠するのにもそういうグッズとかあるんですか?』
「安心してー! 私の個人用未確認飛行物体に非常食だとかお菓子だとか寝袋だとか常備してるし、足りないなら子機に持ってこさせるよー!」
突然兎幸がしゃべり出してびっくりするミラとジーノであった。
「こ、この子喋れるの?」
「なんかお人形さんみたいな子ですぜ」
「むっ! 兎幸お人形さんじゃないよーー!! 魔法自動人形だよ!!」
「そ、そうかごめんごめんよ」
「へへ、悪気は無いんだよ」
(やっぱお人形さんなんじゃ??)
それを見てた猫呼が突然UFOのマジックハンドからすたっと降りた。
「じゃ、私も冒険に付き合いますか! 疲れたら簡単な回復魔法を掛けてあげるわっ」
「よーし出発よ!」
『オーーーーッ!』
雪布留の号令にスナコが答えた。
ー数時間後。
一行はひたすら歩き続け、ようやく第7層辺りまで来た。
「敵が出ないから進むだけで良いけど、ただ進むだけって暇よねー!」
猫呼が両手を広げた。
『次に敵が湧くのっていつ頃なのですか?』
スナコの質問にセレネが目を細めた。
「敵が湧く訳ないだろーがっ! 敵も生態系があるから、生き残って隙間とかに逃げ込んだ奴が繁殖したり、どっかからやって来て住み着いたりして増えるもんだろーから、少なくとも今日明日に敵が湧く事はないわバカ」
『ぎゃふん』
「部長ってスナコにやたら厳しいっスね」
「確かにズレた事は言いやすが……」
「そんな事は無い」
セレネは横を向いた。
「多分今頃は外は丁度夜、夕食時だね」
「紅蓮くんの言う通りね。敵が出る事も無いなら、明日に備えて此処で夕食を摂って仮眠しましょうか?」
『わーーそれ賛成です!』
スナコが無邪気に両手を上げた。
「お前喜んでるけど、紅蓮とお前二人でテント入れよな?」
セレネは怖い顔で言った。
『何でですか!?』
「僕もまっぴらごめんだよ」
そこへミラとジーノが横やりを入れた。
「部長! スナコは新入りでズレたとこもやりやすが、さすがに男と同じテントにぶっ込むのはやり過ぎでは?」
「新入りならあたいらのテントに入れてやりやすぜ!」
「いや、それはそれで問題が……」
セレネは眉間にシワを寄せた。
「あのね、あの二人はスナコちゃんが砂緒だって知らないのよ」
「え、そうなの? 実に面白い……」
フルエレは紅蓮の耳元で小声で教えて上げた。
「面白く無いでしょ! ミラとジーノの身が危険でしょーがっ!」
しかし猫呼も小声で突っ込むだけであった。
主人公3人
砂緒 元現代日本のデパート建屋だったが、魂が発生し百年後に崩壊してセブンリーフに異世界転生して来た。硬くなる重くなる電気が出るなどの地味スキルを持つ。中程度の怪力で特に強く無い。気分次第で異常に完成度の高い女装スナコちゃんに変身する。
雪乃フルエレ ヒロイン①【海と山とに挟まれた小さき王国】の 夜宵姫 だったが家出して色々あってセブンリーフ大同盟の女王になってしまった。金髪の天使の様な美少女。魔導学園では 雪布留と名乗る。
セレネ ヒロイン②ユティトレッド魔導王国王女で髪の長い美少女だが異常に強い魔法剣士。最初嫌悪していた砂緒に猛アタックされフィアンセ同然になる。フルエレを女王に推挙した張本人。討伐部部長。
ユティトレッド魔導学園関係者
ミラとジーノ セレネの子分兼大切な友達。
ユーキュリーネ・カナルト・ヒューゴー 生徒会長でユティトレッド重臣の娘。
サトー スナコの隣の席の目立たない生徒。
学園長 ユティトレッド魔導王国の現王でセレネのおじい様。立派な長い髭がある。
仲間
依世 雪乃フルエレの妹。 美柑 と名乗り紅蓮と冒険者をやっていた。探していた姉、夜宵姫・フルエレと遂に再会したが喧嘩が絶えない。
猫呼クラウディア 東の地(中心の洲)クラウディア元王国の元王女。失踪中の兄猫名を探してフルエレ達の仲間になった。今は闇ギルドの頭目をしている。背の低いおしゃまな付けネコミミ少女。
兎幸 うさこ。リュフミュラン天球庭園の氷の博物館の館長。月で魔改造されて微妙に成長した。魔ローダーで補助機能になったり砂緒の女装に強力したりする心強いサポート係。
イェラ 元女戦士の褐色の背の高い美人。厨房で料理を作っている。麺料理屋台のチェーン展開するという野望を持つ。口数少ない性格だが砂緒の事が好き。
シャル 猫呼の部下闇ギルド員でボディーガード。腕がぐんぐん伸びる。
イライザ 喫茶猫呼店員。ぜんぜん意地悪く無い普通の子。
ニィル イライザの兄で元浪人であったが砂緒セレネに拾われ新ニナルティナ軍幹部に。
有未レナード公 旧ニナルティナ王国の軍師だったが、ポンコツで無害だったので新ニナルティナの代表に選ばれた。雪乃フルエレ女王を盛り立て、東の地【神聖連邦帝国】との関係に悩む。
ウェカ王子 ラ・マッロカンプ王国の王子。御幼少のみぎりに幼稚園留学生として出会った依世に一目惚れしたが、彼女の裏の仕事を目撃し魔法を撃たれ死に掛けてしまった。
メア ウェカ王子の理解者でセクシーなメイドさん。しつこいくらいに玉の輿をねだる。
まおう抱悶 可愛い熊耳の美少女だが恐ろしい魔力を秘める。砂緒と知り合った関係で雪乃フルエレ女王と大同盟を組む事となった。
神聖連邦帝国(東の地・中心の洲)
紅蓮アルフォード 【神聖連邦帝国】第二百十二代聖帝の息子。西の島、セブンリーフに単身まおう討伐を命じられて渡って来たが、美少女美柑(依世)と知り合い篭絡され、なかなか討伐する気が起きず、いつもブラブラしている。実は劇中一番強い人物だがなかなか本気で戦わない。爽やかでイケメンで真面目な風情に反し、実は人一倍女の子に興味があるムッツリスケベ。
瑠璃ィキャナリー るりぃきゃなりー。神聖連邦帝国四旗機 桃伝説 の搭乗者であったが、紅蓮のサポートとしてセブンリーフに渡り行き倒れ、ウェカ王子に助けられ以降居候になる。かなり強い騎士だが、当地と故郷の間で悩む事になる。モデルは船〇リリィ。
貴城乃シューネ たかぎのシューネ、神聖連邦帝国重臣で主人公達と度々戦う。
猫弐矢 猫呼の兄でクラウディア王国現当主。父王である大猫乃主を失う。
魔法メカ・ロボット
魔ローダー 全高25Nメートルの騎士の鎧、プレートアーマーをそのまんま巨大化した様な、魔法力で動くロボット。魔法や物理等殆どの攻撃が効かず、魔ローダーの魔法エネルギーが乗った剣攻撃しか効かない。
蛇輪、日蝕白蛇輪 へびりん、ひばみはくじゃりん。砂緒とフルエレとセレネが交代で乗る主役機。劇中唯一の複座型で、表面は鏡の様なテカテカのメッキ調の銀色で、装甲各所に金色の華麗な装飾が施され非常に成金趣味な見た目をしている。頭部に蛾の触覚の様な巨大な二本の角があり、背中にはド派手な巨大な羽を背負い鳥型の飛行形態に変形出来る。実は砂緒の前世の前世、【等ウェキ玻璃音大王】が、ル・スリー白鳥號を参考に真似して作った機体。両手の尖った爪で突き刺した対象からスキルや能力をコピーする事が出来る。また砂緒の能力で巨大化したり強力な雷攻撃を発したりも出来る。
ル・スリー白鳥號 はくちょうごう。【まおう抱悶】の先祖である【王永嶋フィロソフィー王】が搭乗していた純白の機体。蛇輪に似ているが、よりヒロイックな形状をしている。古代にクラウディア王国で建造された。今は 【千岐大蛇】(チマタノカガチ) 退治の時に紅蓮が偶然入手し扱いに困惑している。劇中最強の機体で数々の魔ローダースキルが隠されている。かつてセレネと砂緒が制作させた【最強の魔法剣】を偶然所有しているが、標準装備の【魔法の刃の剣】も使用出来る。




