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セレネ、おじい様に激オコ


 ―少し時間を戻して学長室。

 討伐部部室の館を出たセレネは光の速さで学長室にやって来ていた。

 コンコン

 一応部屋の前で髪と服を直し改まるとノックをした。


「入りたまえ」


 その聞き慣れた声の返事を聞いてセレネはビキッとなった。


(やっぱり居た……)

「入ります」


 ガチャリとドアを開けて学長室に入ると、見慣れたおじい様であるユティトレッド魔導王国の王が立っている。彼は王であると同時に魔導学園の学園長も兼務していた。


「うむ、やはり来たか」


 背中を向けて立っていた学園長は、なんとかドア的な長い髭を触りながら振り返った。


「おじい様こそ、今日は怒って走って来ると計算して珍しく学園に来たのですね? でも……絶対にっっあの二人をっ学園に呼ばないでって言っていたでしょっっ!!」


 前半こそ王女の体面を保っていたが、後半からは明らかに先程フルエレ達にやったのと同様に、地団駄踏んで駄々っ子の様に怒り出した。これは友達と遊んでいる時に、母親が急にひょいっと顔をだして、もーお母さん来ないでよっ的な物と同じ感情の現象である。


「でも……セレネに会いたかったんじゃー久しぶりじゃのう」


 おじい様は場を和ませる為に可愛い顔をして笑った。


「誤魔化せられませんよ! 雪乃フルエレ女王が学園に不正転入するなど前代未聞じゃないですかっ!」

「ちょっと待て、何故不正転入だと分かる?」

「決まっているじゃないですか、フルエレさんは大変気立ての良い方ですが、勉強の方はバカなので……」

「これ、不敬じゃぞ」


 おじい様に言われてハッとしたセレネは直ぐに頭を下げた。


「今のは失言です。申し訳ありません、けれど学力が未知数なのは確かで恐らく試験も面接も何も無いのでしょう?」

「その通りじゃ。有未レナード公の推薦状を一瞬で許可を出したぞ」


 セレネが再びギロッと睨んだ。


「その通りじゃっじゃないでしょう、真面目に試験を受けて合格した生徒達に申し訳無い。とにかく私は反対ですから、今日来ただけでもうご満足でしょう明日からは来ない様にと直言するべきです」


 しかし今度は学園長のおじい様が少し真剣な顔になった。


「そもそも雪乃フルエレ嬢を女王にと推挙したのはお前ではないのか? その仕えるべき女王の望みを拒絶して、お前は女王を操る立場にでもなりたいのかな?」

「女王を操るなどその様な事は毛頭思っておりません」


 セレネはきっぱり言い返した。


「しかしメドース・リガリァ攻略戦の時も何もかも全てはお前が立案しておったのではないか? 学園に入学したいという願いすら拒否するならそういう事ではないか」

「違います! 私は彼女を尊敬しています」


 セレネも意地になってキッとした顔で言い返した。


「……怒らないでよ、お前に怒られると寿命が縮まるんじゃ~~」

「そんな言い方しても許しません。おじい様は心配しなくとも誰よりも長生きされるハズですから」

「いやいや、大切にせんと居なくなってから泣いてもしらんぞ~~?」

「誤魔化されません。それに女王陛下の身辺にも危険が及びかねません!!」

「まだ言っておるのか? 正直に本心を言うてみい」


 おじい様の言葉に、セレネはぎくっとした。


「本心とは?」

「ほれほれ、何を見られたくないから来て欲しくなかったんじゃ?」


 その言葉でセレネは少しだけ涙ぐんだ。


「くっ……私は雪乃フルエレ女王と砂緒の前では、出来るカッコいいクールなパキッとした女性と思われてるんです。それが……王女として他の生徒の目を気にしてたり、実は生徒達からあんまり人気が無かったり、結構孤立してる所とか……見られたくない」


 言いながらセレネは下を向いた。


「いやいやいやいやいや、言う程お前が思う程も誰とも何も思っておらんぞ? それに二人が真の友達だと言うならあけすけに見せ付ければ良いではないか」

「何で見せ付けなきゃならないのですか」

「もういいじゃないか、薄々お前がそんな感じだとは気付かれておるんじゃろう諦めよ」

「ぐっ……」


 確かにもう全ては後の祭りであった。少なくともスナコとフルエレは飽きるまでしばらくこの学園に通うつもりでいた。

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