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部室でコーヒーを


 ペタッ

 スナコはホワイトボードを壁に貼り付けると、器用に口で咥えた魔法ペンで書き始めた。


『いえっハァハァ……もう、パンツを脱ぐと決意したのです、はぁはぁ……最後まで脱がせて下さい、そこに私の真実が……うっあります……ハァ』


 スナコは興奮気味に口で文字を書きながら、両手はスカートの中で既に膝小僧辺りまで下がっている。もし今スカートがぺらりとめくれたならば、おぞましい物が丸見えになってしまうであろう。


「なんだよ!? お前今、うって何だよ!?」

「怖いよ、うって何が起こったんだよ??」


 しかし何かしらの淫靡(いんび)なスイッチが入ってしまったスナコは、トローーンとした目をしながらさらにパンツを降ろそうとする……



 ― 一方その頃、部室内サロン。

 ピキーーーンッッ!!

 今まさに兎幸(うさこ)の脳裏に何かが響いた。


「あっなにかとめなくては……たぶん」


 スクッとあらぬ方向を見て兎幸が立ち上がった……っと思ったらフルエレがくいっと腕を引いて無理に座らせた。


「やだぁ! 気のせいよ、ゆっくりしてなさい」

「う、うんー?」


 兎幸は冷や汗を掻きながら仕方なく座った。


「ねえー、喉が渇いたわよー砂緒(すなお)が居ないんなら、フルエレがコーヒーでも淹れなさいよっ!」

猫呼(ねここ)何を言うの? 私は女王なのだぞ」



 ―そして女子トイレに戻る。


「ふぅーふぅーもう脱ぎますっ!!」


 スナコは興奮気味にスルリとパンツを脱ぎ捨てようと、膝からさらに降ろそうとした。


「バッカヤローーーーー!!!」


 どぱしぱしぱしぱしぱしぱしぱし!!!

 突然叫んだミラが、凄まじいスピードでいきなりスナコの頬を百連打ビンタし始めた。


『あぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ!?』


 スナコの顔が透明化する程の勢いで叩かれまくる。


「女の子の大切なモン、安売りすんじゃねーーよっ!!」

「そうだバカヤローーー!! 顔じゃ無くボディを狙いなっ!!」


 等と自分で言いながらジーノも腹を二三発殴った。

 どぼどぼっ!!


『あうっぐはっ!?』


 攻撃が止まったのでスナコは頬に手を当てて二人を見ると、二人は何故か号泣していた。


(結局殴っておいて何故号泣!? でも……熱いハートは感じたわっ)


 何故か心の中の声まで女言葉になってしまったスナコも、二人の熱い魂を感じて目頭がジンワリして来たのであった。何はともあれ、無事スナコの性別がバレる事は無かった。


「お、お前っ! もう二度とそんな事すんじゃねーぞ!!」

「そうだっあたいらは弱い者イジメは大嫌いなんだよっ!」

『じゃあ……三人で抱き合っても……いいですか?』

(だったら最初からトイレに閉じ込めなくてもいいでしょうに)


 ただただ殴られ損な気もしたが、スナコはゆっくりと両手を広げた。


「よーしお前はもうダチ公だよ!!」

「ああっセレネ様の従者として認めてやんよっ!!」

『あ、ありがとう……』


 だきっ

 三人はそのまま抱き合ったのであった……


(むふふ、ミラとジーノも近くで良く見ると結構可愛い……)


 何気に女の子二人と抱き合って棚ぼたな砂緒であった。


『じゃあ……このまま三人で走り出しましょうか!!』


 スナコは目を輝かせあらぬ方向に指を差した。


「はぁ? 何言ってんだお前、タリいだろ行く訳ねーだろ」

「お前調子乗んなよ? 締め上げんぞ?」

『え?』



 ―再びサロン。


「魔法ポットってどう使うのよ、そもそも学校の敷地内で勝手に飲み食いしていいの?」


 フルエレが簡易な調理場内を漁りながら言う。


「何言ってるのよ、今時の子なんて学校内でお菓子食べるわ、ジュース飲むわ教室で鍋を始めるなんて当たり前よ?」

「えっ今ってそんな風紀紊乱(ふうきびんらん)になっているの?? 恐ろしいわ……」


 フルエレが口に手を当てて一歩引いて驚いてみせる。


「あんた不正入学しといて風紀紊乱も何も無いでしょーに」

「女王なのだぞ? かような私用で権勢使わずしてなんとする」

「アンタそれ気に入ってるでしょ。私用で権勢使っちゃダメ」


 ソファーに踏ん反り返る猫呼がコーヒーはまだかと催促顔で言った。


「やっぱり使い方分からないよ」


 フルエレが魔法ポットをかちゃかちゃいじるが、なかなか動かない。


「ちっ使えない女王ねえ?」


 猫呼が物凄く大きな舌打ちをして、さすがにフルエレもカチーンと来た。


「何ですって?」

『お待ちを!! コーヒーなら拙者が淹れますゆえ。誰ぞ魔力だけ供給して下され』


 そこにようやく戻って来たスナコが片手を差し出してフルエレを止めた。


「あらあら、もうヤキは入れられたの?」


 フルエレが両手を合わせながらにこっと笑った。


「そんな事はしませんぜ、スナコとはもうマブダチになりやした!」

『ええ、マブのダチと書いてマブダチですからな』

「まあさすがねっ!!」

「あんた今しれっとヤキ入れられたのって言ったでしょ?」


 こうして一応スナコとミラとジーノは打ち解けたのであった。

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