王子さまは?
「ちょっお前誰なんだよ」
「部長、コイツ誰っスか?」
香水の香りも含めて兎幸の提供するスナコちゃんの完成度の高すぎる女装は、ミラとジーノにちょっと可愛い変な女の子が飛び付いて来たと完全に思わせた。
『あれ、そう言えば誰でしたっけ??』
「スナコ寝ぼけでなんか前もそんな事言ってたな?」
「そうねえ気になるわぁ」
スナコに続いてセレネと雪布留が入って来る。その当たり前の様な態度にミラとジーノは余計に気になった。
「部長、もったいぶらねえで、一体誰か教えてくだせえ」
「そうですぜ」
ミラとジーノの言葉にセレネはようやくハッとすると、今度は顔を真っ赤にして頬をぷくーっと膨らませた。
「もうっ絶対にっ学校には来ないでってっ言ったのにっっ!!」
セレネはその表情のまま、小さな子供の様に地団駄踏んで怒り出した。ミラとジーノにとって展開が良く分からない以上に、いつもクールなカッコいい部長の意外な仕草に思わず可愛いと思ってしまった。この二人は忠実な僕である以上に、心からのセレネの一番のファンでもあった。
(か、可愛いっ部長かわいいっス!)
(部長に子供の様な態度を取らせるこの二人、ただ者では無いな!)
ここでようやく二人は一旦謝る事とした。
「ごめんね、最近セレネが居なくて寂しくて、どうしても来たくなっちゃった」
『いやはや、セレネも喜んでくれるであろうと思っておったのですが、許して下され』
「いや、許さないよ」
二人の謝罪にもまだまだ憤懣やるかたないという感じのセレネであった。
「部長、もういい加減ウチらにも事情を聞かせて下せえよ」
「全く頼みますよ、訳が分からねえ」
「この御方は、私の仕える雪乃フルエレ女王陛下だ、お前らも忠誠を尽くせ」
あっさりと正体を明かすセレネに、フルエレ自身もスナコもミラとジーノの二人もぎょっとした。
『ちょ、ちょっといきなりなんで正体明かすんですか? 危険じゃないですかっ』
「い、いえ私は別にいいけど……」
(もっと引っ張ってから言った方がかっこ良かったのにな)
しかしセレネ自身は落ち着き払っている。
「いやミラとジーノは絶対にあたしを裏切らないし秘密も守ってくれると信じてるからさ、まどろっこしい事は無意味さ」
きっぱりと言い切ったセレネに、ミラとジーノは思わず感激して泣きかけてしまう。
「ぶ、部長!? ウチらの事そこまで……」
「ありがたいっス、絶対に忠誠を誓うっスよ」
『ほほう良い心掛けじゃ』
スナコはそんなミラとジーノの肩と頭を、完全にセクハラレベルにポンポン叩きまくった。
「じぇええいっ!」
だがパシッとミラはその手を弾いた。
「で、部長この子は何者なんですかい?」
「コイツは女王の従者で召使いみたいなモンだよ」
セレネはスナコの正体が砂緒という男である事は伏せた。
「はっ従者っスか?」
「じゃああっしらと同じ立場か……」
「でもウチらの方が先輩じゃね?」
『確かに時系列的には先に二人がセレネに会ってた訳だし、そうかも知れませんねえ』
等と言いながらまた気安く触れようとする。それを見ながらセレネは落ち着く為に少し水を含んだ。
「ちっ気安く触んなや」
「女王陛下が来なすったって事は、時々仰ってる宮殿の同僚の部長の王子さまってのは来て無いんですかい?」
「そうだそうだイケメンの王子サマに会いたいっスよ!!」
ブーーーーーーーーーーーッッ!!!
なにやらミラとジーノが含み笑いしながら言うと、突然セレネは5Nメートル程水を吹いた。そのままセレネの顔は、みるみる赤を越えて茶色に変色する程激しく赤面する。
「ごほっげはっ、て、てめーら訳の分からん事言うなっ!」
そのまま激しくむせるセレネ。
「いつも仰ってるじゃねーですかい」
「何かすいやせん」
『ちょっと聞き捨てならんですな、セレネの王子さまとは何処にいるのですか?』
「ちょっとセレネ、そんなホットな話を隠していたなんて、王子さまってどんな人なの??」
フルエレとスナコは真顔で激赤面なセレネに迫って聞いた。
「い、今の事は全部綺麗に忘れろ―――――っ!!」
突然セレネはスナコの首を絞めた。
ぎゅむーーっ
みるみるスナコの顔が紫色に変色する。
『い、息がホントに死んでしまいます』
「セレネ止めてあげて。それよりも王子さまって何処にいるのよ??」
なんとかフルエレがセレネの手を剥がしたが、セレネはさらに真っ赤になって頬をぷくーっとさせた。
「い、今から学長室行って来るあっっ!! お前らその二人は入部希望者さ、接待しときなっっ!!」
バタンッ!!
セレネは激しく赤面したままガニ又でズンズン歩くと、そのまま大きな音を立ててドアを閉めて出て行った。
更新 「プロローグ0夢 プロローグI雪の女王」 を削除しました。
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