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転校生④ 生徒会長……

「ぎゃーーーーーーっ!? スナコちゃん大丈夫なのっ?」


 壁にべちゃっとぶつかったまま動かないスナコを見て、先生は頬に両手を当てて飛び上がった。しかしセレネも雪布留(ゆきふる)と名乗っている雪乃フルエレ女王も、彼がこんな事では全くダメージを受けない事を知っていて、一方は無表情一方はにこにことしていた。


 キュキュッ

『ううんウチ、ぜんぜんへいき!』


 血をだらだら流しながらも、何事も無かったかの様にムクッと起き上がったスナコは、光の速さで文字を書き先生を安心させた。

  

(え、ウチ?)

「でも血が……そうなの? じゃあそうね、皆さんから質問コーナーよ」


 スナコとフルエレに触れる内に段々感覚が壊れて来た先生が、スナコちゃんの平気という言葉を真に受け、少し混乱したまま軌道修正を図った。空気を読んだ兎幸(うさこ)猫呼(ねここ)は何事も無かったかの様にフェードアウトして行く。いっぱいいっぱいの先生は二人の退場に突っ込む余裕は無かった。


 ざわっ

「先生大丈夫? スナコさん血がダラダラ流れてるわよ……」

「でもウチへいきって言いましたし」


 セレネはもうどうしていいか分からないという表情で固まっていた。


「ほらほらおしゃべりして無いで、お二人に質問のある方は?」


 ガタッと一人が手を上げて聞いた。


「雪布留さん、魔輪(まりん)ってあの魔法力で動く二輪車の事ですか?」

「そうです、大切なおじい様に譲ってもらった名機を持っていて……レストアして小さい時からお友達の様にして乗っているんです」

「まあっ」


 フルエレは平気で大嘘を付いたが、実際には襲って来た敵兵から盗んだバイクである。


「スナコちゃんさん、世界平和を祈る事以外に何かご趣味はおありですか?」

『星を……見る事……』


 スナコは遠い目をしながら書いた。しかし雪布留がスナコちゃんは家族を邪竜に襲われたという謎設定を事前に言っている為に、あっなんだかこれ以上は触れ辛いなって空気が広がり、誰も何も言わなかった……


「そうねっじゃあ早速席に座ってもらいましょうかっう~~んとあら、最前列の席が二つ偶然空いているわね~~~」


 等と口走っているが席が偶然空いている訳も無く、全て事前に先生が指示した事である。


「先生、良いでしょうか?」


 と、突然雪布留が手をピシッと綺麗に上げた。


「えっ何かしら?」

「私あの一番奥の窓際の、ストレートな長い髪が綺麗な御方の横が良いですっ」


 その言葉で全員の視線がセレネに集中した。


(フルエレさん!? 何のつもりだっ)


 ざわっ

「え、何故セレネ様の横をご指名!?」

「そんなシステムありますのっ?」

「ちょっとご自分勝手ですわ」


「あ、あのもうそこには既にサトーさんが座ってらっしゃるから」


 その先生の言葉で、今度は偶然セレネの横に座るサトーの総毛が立った。


(ヒッ一体これはどうすれば良いの!?)


 すると雪乃フルエレはにこにこと無邪気な目でサトーを見つめ出した……


「せ、せんせい……」

「何かしらサトーさん」

「わ、私急に最近ド近眼になりまして……是非空いている前の席に移動出来ないでしょうか?」


 空気を読んだサトーのナイスアシストであった。


「そうなの!? それは仕方無いわね、じゃあ雪布留さんがセレネさんの横に、サトーさんはスナコちゃんと前の席に座ってね」

「有難うサトーさん!」

「あっ」


 サトーが気を利かせたつもりで席に着くと、スナコちゃんが恥ずかしそうに顔を背けた。どちらにしても重荷に違いは無かった。


「さっ此処からは学生の本分の授業開始よっ!!」


 その言葉を合図に生徒達は真面目に前を向いた。


「セレネさん初めまして、雪布留よこれからもよろしくね!」

「……どうも」


 一言だけ言うとセレネは前を向いた。



「……くかーーー」


 しかし授業が始まるや否や、学校に憧れこそすれ勉強には1Nミリも興味が無いフルエレは光の速さで寝た。


(フルエレさんヨダレ垂らして寝とるやないかっ!)



 それに比して意外にもスナコちゃんは真面目に授業を受けつつ、休憩中は新たな転校生に生徒達が群がったがセレネは一人無視して本を読んでいた。



 ―そして昼食時間になった。


「雪布留さんスナコちゃんさん、御一緒に初めての昼食行きませんか!」

「私も行きたい!!」

「私もーっ」


 わいわいと最近の人当たりの良くなったフルエレに生徒達が群がったが、それらを完全無視してセレネはスッと立つと何処かに消えて行った。


「あっ御免なさい! 私セレネさんの所に行かなくちゃ! また誘って下さいますか??」

『私も下僕なので一緒に行くの』

「まあっそうですの?」

「残念ですわ」

(えっ何故セレネ王女を追い掛けなさるの??)


 慌ててセレネを追い掛ける雪布留とスナコちゃんを、皆が残念そうに見送った。



 ―廊下。

 セレネは目を細め、かなり不機嫌な顔で一人スタスタと歩いた。目的地は二つ、一つは彼女のオアシス討伐部部室と、もう一つは学長室だった。


「あーーーーらっセレネさま、また御一人でご行動ですの? 討伐部部室明け渡しの件、お考えをお聞きしたいのですが」


 と、そこに縦カールが激しい御令嬢風の美少女が立ち塞がった。


「また後でお願いします、急いでいますので」

(ちっまたコイツか生徒会長……)


「あらあら、いつもそんなつれない御返事ばかりで寂しいですわ」


 生徒会長の言葉にセレネが激しく嫌そうな顔をした時であった。後ろからドタドタと雪布留とスナコが走って来た。


「ちょっとセレネッなんで無視するのよっ!!」

『もはや抜き差しならぬ仲の我らを無視するなんて酷いですぞっ』


 目の前には嫌いな生徒会長、背中からはおぞましい砂緒のオーラ、セレネは頭を抱えた。

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