転校生② ユティトレッド魔導学園……(ユティトレッド魔道王国地図)
―数日後遂に転校当日、ユティトレッド魔導学園へ向かう道路上。
「この道のずっと先が遂にセレネの通うユティトレッド魔導学園なのね」
「いろんな意味でドキドキしますねえ。でも二人で魔輪に乗るのは久しぶりで楽しいですー」
砂緒とフルエレは一番最初に出会った時の様に、サイドカー魔輪に乗り込んでいた。もちろん当然ながらフルエレの運転である。
「それにユティトレッドっていちいち全てがおしゃれねえ、柵一つ取ってもなんだか装飾が洒落てるわぁ」
フルエレが言う様に、新ニナルティナが19世紀ロンドン風な街並みなのに比して、ユティトレッドはそれより古い16~18世紀風の端的に言ってしまえば、街全体が某なんとか魔術学校風の世界観が広がっていた。それでいてセブンリーフをリードする魔法工業の先端都市なので、そうした古い町並みに隠される様に魔法機械の信号や通信装置などが配置されているハイテク都市でもあった。移動手段は路面念車こそ無いが、バスや魔車は普通に行き交っている。
「何でこんな近くなのに一回も来て無かったんですかねえ」
「セレネが絶対来るなって言ってたからでしょ」
「あ・そうでした」
「あの向こうに見えるのがセレネのおじい様の薔薇の城ねえ綺麗だわあ」
フルエレがときめく様に、いかにも魔法の城という様な数多くある尖塔に煌びやかな飾りが付いた華麗な城であった。此処に以前ウェカ王子一行が迷い込んだ場所でもある……
「ふ~ん特に……興味ありませんねえ」
忘れ去られた設定だが、元デパート建屋として何故か対抗意識を燃やす砂緒であった。
同国の南に位置する薔薇城周辺の都会から少し離れ、中央部の学園がある森に向かう道路の周辺に木々が増え始めた辺りで、突然物陰から道路上にビャッと女性が飛び出した。恐ろしく仏頂面の片眼鏡のマイヤーが、二人の魔輪を誘導する為に学園までのルート上で待ち構えていたのであった。
キキーッ
慌ててブレーキを掛けるフルエレ。二人は前につんのめった。
「ひゃあびっくり!」
「何なんですかこの命知らずの女は」
マイヤーは魔法アシスト付き自転車に乗り、仮にも女王に対して物凄く嫌そうな顔でくいくいと片手を差し出して誘導し、急ぐ二人は何も言わずそのまま従った。
「ささっこちらで御座います。目立たぬ様に……」
目的地ユティトレッド魔導学園は、ユティトレッド魔導王国の丁度中央部に位置する最高学府である学院の付属高として開校し、主に北セブンリーフ中から王侯貴族やさらに富豪等裕福なお家柄のハイソなお嬢様が通う女学校であった。もちろんこの学園の建物群もいかにもファンタジックな外観をしていた。
―同校内、控室。
二人はマイヤーによって目立たない裏口から校内に誘導され、一つの控室に案内された。此処で校則通り好みの制服に着替えて転校生としてセレネの教室に入って行くのだ……
「私の好みで選んだセエラア服で良かったですかフルエレ? なんだかちらっと覗き見た女子共は、えらいファンタジックな制服を着ていますが……」
スナコは自らチョイスした制服をフルエレに渡しながら少し心配になった。
「ううん、私もスナコちゃんと同じセーラー服の方が好みだわ」
シュルッ
等と言いながら突然フルエレは着ていた上着を脱ぎ出そうとする。
「ちょちょ、ちょいちょいフルエレどうしたんですか? 何故脱ぐのですか?」
スナコちゃんは慌ててガシッとフルエレの手を制止した。
「へ? だって着替えるのでしょ??」
「いやいや私が目の前に……」
「あははっ何言ってるのよ! もう家族みたいな物じゃないの」
フルエレはけらけらと笑った。
「い、いえフルエレにはまだまだ私の前でも恥じらいを持っていて欲しいです。そちらの方が興奮します」
「へ?」
フルエレは一瞬小首を傾げたが、スナコが部屋の隅っこで背中を向けると着替えだした。
「さぁっ二人共着替えが終わったわね!! いくわよドキドキするわねえ」
「そうですねえ、初めての学園生活ですから」
「私も行くのニャー」
二人が意気揚々とマイヤーの下に向かう寸前、置いてあった箱からパカッと猫呼が顔を出した。
「え?」
「いや年齢が駄目でしょ、てかどうやって来たのですか」
コンコン
しかしそうこうしている内に痺れを切らしたマイヤーが迎えに来てしまった。
―セレネの教室。
またいつもの様に退屈な授業が始まる……等と考えながらセレネは頬杖をつき、窓の外の空をぽけーっと眺めていた。
「えー今日は授業の前に皆さんに転校生のご紹介をしたいと思います! 皆さん暖かく迎え入れて上げて下さいね」
ざわっ
生徒達と同様にこれまたお嬢様育ちの品の良い女教師が、転校生の事を告げて教室内は小声で騒然となった。
(転校生だと……おじい様聞いて無いぞ)
セレネは転校生というワードに反応した。彼女は学園の些細な事まで王であるおじい様から聞き出していた。
「恥ずかしがらずに入っていらっしゃい!」
「はい……」
『はい……』
ドアが開き、二人は多少頬を赤らめて入って来た。
(えっ)
入って来た二人を見て、セレネは無言で立ち上がった。
ユティトレッド魔道王国・地図
主人公3人
砂緒 元現代日本のデパート建屋だったが、魂が発生し百年後に崩壊してセブンリーフに異世界転生して来た。硬くなる重くなる電気が出るなどの地味スキルを持つ。中程度の怪力で特に強く無い。気分次第で異常に完成度の高い女装スナコちゃんに変身する。
雪乃フルエレ ヒロイン①【海と山とに挟まれた小さき王国】の 夜宵姫 だったが家出して色々あってセブンリーフ大同盟の女王になってしまった。金髪の天使の様な美少女。
セレネ ヒロイン②ユティトレッド魔導王国王女で髪の長い美少女だが異常に強い魔法剣士。最初嫌悪していた砂緒に猛アタックされフィアンセ同然になる。フルエレを女王に推挙した張本人。
仲間
依世 雪乃フルエレの妹。 美柑 と名乗り紅蓮と冒険者をやっていた。探していた姉、夜宵姫・フルエレと遂に再会したが喧嘩が絶えない。
猫呼クラウディア 東の地(中心の洲)クラウディア元王国の元王女。失踪中の兄猫名を探してフルエレ達の仲間になった。今は闇ギルドの頭目をしている。背の低いおしゃまな付けネコミミ少女。
兎幸 うさこ。リュフミュラン天球庭園の氷の博物館の館長。月で魔改造されて微妙に成長した。魔ローダーで補助機能になったり砂緒の女装に強力したりする心強いサポート係。
イェラ 元女戦士の褐色の背の高い美人。厨房で料理を作っている。麺料理屋台のチェーン展開するという野望を持つ。口数少ない性格だが砂緒の事が好き。
シャル 猫呼の部下闇ギルド員でボディーガード。腕がぐんぐん伸びる。
イライザ 喫茶猫呼店員。ぜんぜん意地悪く無い普通の子。
ニィル イライザの兄で元浪人であったが砂緒セレネに拾われ新ニナルティナ軍幹部に。
有未レナード公 旧ニナルティナ王国の軍師だったが、ポンコツで無害だったので新ニナルティナの代表に選ばれた。雪乃フルエレ女王を盛り立て、東の地【神聖連邦帝国】との関係に悩む。
ウェカ王子 ラ・マッロカンプ王国の王子。御幼少のみぎりに幼稚園留学生として出会った依世に一目惚れしたが、彼女の裏の仕事を目撃し魔法を撃たれ死に掛けてしまった。
メア ウェカ王子の理解者でセクシーなメイドさん。しつこいくらいに玉の輿をねだる。
まおう抱悶 可愛い熊耳の美少女だが恐ろしい魔力を秘める。砂緒と知り合った関係で雪乃フルエレ女王と大同盟を組む事となった。
神聖連邦帝国(東の地・中心の洲)
紅蓮アルフォード 【神聖連邦帝国】第二百十二代聖帝の息子。西の島、セブンリーフに単身まおう討伐を命じられて渡って来たが、美少女美柑(依世)と知り合い篭絡され、なかなか討伐する気が起きず、いつもブラブラしている。実は劇中一番強い人物だがなかなか本気で戦わない。爽やかでイケメンで真面目な風情に反し、実は人一倍女の子に興味があるムッツリスケベ。
瑠璃ィキャナリー るりぃきゃなりー。神聖連邦帝国四旗機 桃伝説 の搭乗者であったが、紅蓮のサポートとしてセブンリーフに渡り行き倒れ、ウェカ王子に助けられ以降居候になる。かなり強い騎士だが、当地と故郷の間で悩む事になる。モデルは船〇リリィ。
魔法メカ・ロボット
魔ローダー 全高25Nメートルの騎士の鎧、プレートアーマーをそのまんま巨大化した様な、魔法力で動くロボット。魔法や物理等殆どの攻撃が効かず、魔ローダーの魔法エネルギーが乗った剣攻撃しか効かない。
蛇輪、日蝕白蛇輪 へびりん、ひばみはくじゃりん。砂緒とフルエレとセレネが交代で乗る主役機。劇中唯一の複座型で、表面は鏡の様なテカテカのメッキ調の銀色で、装甲各所に金色の華麗な装飾が施され非常に成金趣味な見た目をしている。頭部に蛾の触覚の様な巨大な二本の角があり、背中にはド派手な巨大な羽を背負い鳥型の飛行形態に変形出来る。実は砂緒の前世の前世、【等ウェキ玻璃音大王】が、ル・スリー白鳥號を参考に真似して作った機体。両手の尖った爪で突き刺した対象からスキルや能力をコピーする事が出来る。また砂緒の能力で巨大化したり強力な雷攻撃を発したりも出来る。
ル・スリー白鳥號 はくちょうごう。【まおう抱悶】の先祖である【王永嶋フィロソフィー王】が搭乗していた純白の機体。蛇輪に似ているが、よりヒロイックな形状をしている。古代にクラウディア王国で建造された。今は 【千岐大蛇】(チマタノカガチ) 退治の時に紅蓮が偶然入手し扱いに困惑している。劇中最強の機体で数々の魔ローダースキルが隠されている。かつてセレネと砂緒が制作させた【最強の魔法剣】を偶然所有しているが、標準装備の【魔法の刃の剣】も使用出来る。




