思い付いちゃった!
「もちろんだ。フルエレ女王が仰る通り今すぐコトを構えるという訳では無い」
有未レナードが【神聖連邦帝国】重臣、貴城乃シューネと極秘に接触したのも今は相手の出方を知る為であった。
「次は?」
「はい、次は神聖連邦帝国からの侵攻に備え、北部セブンリーフの強化案に付いてだ」
フルエレは軽くコケた。対照的に砂緒は無表情で見ている。
「あらゆる事態を想定してという事でしょう。聞いておきましょう」
有未レナードは居並ぶ家臣達を前に話し続けている。
「……仮に神聖連邦帝国が攻めて来るとすれば、新しく出現したアナとセブンリーフの海峡から、リュフミュラン辺りになだれ込んで来る事になる。その場合守るに不利なリュフミュランは一旦捨て、此処ニナルティナを防衛線として各種防御施設を充実させる。そして最終防衛線としてザ・イ・オサ新城を強化し、同盟軍の本陣をタカラ山新城に置く。これで鉄壁の防御となろう」
レナードが言い終わると家臣達からおおーっと感嘆のうめきが響いた。
「有未レナード、それ程北からの備えばかりで、南からの侵攻に備えなくて良いのか?」
(というか、七華のリュフミュランを捨てるとか……私怨か?)
いつも無関心無言の砂緒がいきなり異を唱えた。
「軍事の常道を考えれば、神聖連邦帝国がわざわざ南から攻めて来る事は無い! 素人が口出しせんでもらいたいな」
「北部に鉄壁の防御強化を施せば、南から攻めたくなる物ではないだろうか?」
砂緒には珍しくまともな事を言っていた。
「資源や資金には限度がある。出来る範囲からするしか無いのだ。それは女王陛下のご意見か?」
「ううんいいの、レナードさんに任せるわよ、砂緒の事は無視してねっ!」
雪乃フルエレ女王は、もがもが言う砂緒の口を押さえてレナードに賛成した。
「有難き幸せ女王陛下」
レナードは頭を下げた。
「フルエレ酷いです。私の神算を無視するのですか!?」
「いいのよ黙ってて、早く帰りたいでしょ?? レナードさん他には何か?」
フルエレと砂緒の言い合いを冷たい目で見てから、レナードが報告を再開した。
「次に、わが同盟軍の新たなる戦力となるべく教育を開始した、ユティトレッド魔導学園の魔ローダー学科の話だ。此処で育った生徒達がやがて幹部候補となり、魔ローダー搭乗者となって行く」
この辺りはセレネが言っていた事だ。
「あのう、何故女学校なのでしょうか?」
家臣の一人が聞いた。
「うむ、もともと高い魔力は女性が持っている事が多く、自然と魔ローダー搭乗者も女性パイロットが多くなる。だから最初から女学校を対象に選んだのだ」
「成る程」
「そしてこの魔ローダー学科ではセレネ王女が直々に……」
有未レナードの話は続いた。
「う~~む、セレネは上手くやっているでしょうかねえ」
レナードの話そっちのけで、砂緒はフルエレに話し掛けた。
「貴方より何でも上手くやれる子よ?」
「しかし……セレネが頑なに学校に来て欲しく無いというのが気になります」
「もぅ! セレネは友達が少ないからそれを見られたく無いのよ!」
「いや~少ない処かゼロだったりしたらセレネさんが可愛そうです……」
「アンタもでしょ?」
「授業参観に来て欲しく無いみたいな?」
後ろで黙っていた猫呼までもが口を出す。
「でも私学校生活に憧れちゃうの。小さい時から占いをして、その後は家出してて今に至るから、学校ってどんなのか妄想しちゃうわ」
「へェーフルエレもそういう所あるのねえ?」
猫呼は付けネコミミをぴくぴく動かした。
「いえいえ、学校も良い事ばかりとは思えません」
「アンタ学校行った事あるの?」
猫呼が白い目を向ける。
「当然ありません! 一体何が良いのですフルエレ?」
再びフルエレに疑問を投げ掛ける砂緒。
「ええ? 友達とか部活とか学食とか鉄製の細長いロッカーでハァ~~イとか言ったり」
「鉄製の細長いロッカーってアメリカーンですなあ。しかしイジメにパワハラにセクハラ教師に児童買春に学級崩壊とか、教師の過酷な待遇とか良い事ばかりとは思えません……」
砂緒が肩をすぼめた。
「そうかなあ?」
「アメリカーンて何よ? なんか砂緒、偏って無い?? もしかしてセクハラに興味あるんじゃないの?」
「な、何を失敬な! 私は官能小説でも誘惑モノしか読まぬジェントルマンですぞ」
砂緒は気色ばんだ。
「普通は少年は官能小説読まないのよ……」
「カンノー小説って何?」
フルエレが指を立てて小首を傾げた。
「フルエレの場合ボケてんのか本当に知らないのか謎よね」
「フルエレは分厚い実録マンガ専門ですから」
「はぁ~~~~一回で良いから学校に通ってみたいわぁ……ってハッ!!!」
突然フルエレが夜街角で目が合った野良猫の様に目を見開いた。
「どしたのよ?」
「私、何でも出来る女王だって忘れてたわっ」
「だから何??」
おしゃべりが佳境に入った三人をレナードが睨んだ。
「女王陛下、将来の貴方の部下になる者達の話です。ちゃんとお聞きですか?」
「もちろんよっ! ちゃんと聞いてるわよ」
しれっと言ったが嘘だ。全然聞いていなかった……
主人公3人
砂緒 元現代日本のデパート建屋だったが、魂が発生し百年後に崩壊してセブンリーフに異世界転生して来た。硬くなる重くなる電気が出るなどの地味スキルを持つ。中程度の怪力で特に強く無い。
雪乃フルエレ ヒロイン①【海と山とに挟まれた小さき王国】の 夜宵姫 だったが家出して色々あってセブンリーフ大同盟の女王になってしまった。金髪の天使の様な美少女。
セレネ ヒロイン②ユティトレッド魔導王国王女で髪の長い美少女だが異常に強い魔法剣士。最初嫌悪していた砂緒に猛アタックされフィアンセ同然になる。フルエレを女王に推挙した張本人。
仲間
依世 雪乃フルエレの妹。 美柑 と名乗り紅蓮と冒険者をやっていた。探していた姉、夜宵姫・フルエレと遂に再会したが喧嘩が絶えない。
猫呼クラウディア 東の地(中心の洲)クラウディア元王国の元王女。失踪中の兄猫名を探してフルエレ達の仲間になった。今は闇ギルドの頭目をしている。背の低いおしゃまな付けネコミミ少女。
イェラ 元女戦士の褐色の背の高い美人。厨房で料理を作っている。麺料理屋台のチェーン展開するという野望を持つ。口数少ない性格だが砂緒の事が好き。
シャル 猫呼の部下闇ギルド員でボディーガード。腕がぐんぐん伸びる。
イライザ 喫茶猫呼店員。ぜんぜん意地悪く無い普通の子。
ニィル イライザの兄で元浪人であったが砂緒セレネに拾われ新ニナルティナ軍幹部に。
有未レナード公 旧ニナルティナ王国の軍師だったが、ポンコツで無害だったので新ニナルティナの代表に選ばれた。雪乃フルエレ女王を盛り立て、東の地【神聖連邦帝国】との関係に悩む。
ウェカ王子 ラ・マッロカンプ王国の王子。御幼少のみぎりに幼稚園留学生として出会った依世に一目惚れしたが、彼女の裏の仕事を目撃し魔法を撃たれ死に掛けてしまった。
メア ウェカ王子の理解者でセクシーなメイドさん。しつこいくらいに玉の輿をねだる。
まおう抱悶 可愛い熊耳の美少女だが恐ろしい魔力を秘める。砂緒と知り合った関係で雪乃フルエレ女王と大同盟を組む事となった。
神聖連邦帝国(東の地・中心の洲)
紅蓮アルフォード 【神聖連邦帝国】第二百十二代聖帝の息子。西の島、セブンリーフに単身まおう討伐を命じられて渡って来たが、美少女美柑(依世)と知り合い篭絡され、なかなか討伐する気が起きず、いつもブラブラしている。実は劇中一番強い人物だがなかなか本気で戦わない。爽やかでイケメンで真面目な風情に反し、実は人一倍女の子に興味があるムッツリスケベ。
瑠璃ィキャナリー るりぃきゃなりー。神聖連邦帝国四旗機 桃伝説 の搭乗者であったが、紅蓮のサポートとしてセブンリーフに渡り行き倒れ、ウェカ王子に助けられ以降居候になる。かなり強い騎士だが、当地と故郷の間で悩む事になる。モデルは船〇リリィ。
魔法メカ・ロボット
魔ローダー 全高25Nメートルの騎士の鎧、プレートアーマーをそのまんま巨大化した様な、魔法力で動くロボット。魔法や物理等殆どの攻撃が効かず、魔ローダーの魔法エネルギーが乗った剣攻撃しか効かない。
蛇輪、日蝕白蛇輪 へびりん、ひばみはくじゃりん。砂緒とフルエレとセレネが交代で乗る主役機。劇中唯一の複座型で、表面は鏡の様なテカテカのメッキ調の銀色で、装甲各所に金色の華麗な装飾が施され非常に成金趣味な見た目をしている。頭部に蛾の触覚の様な巨大な二本の角があり、背中にはド派手な巨大な羽を背負い鳥型の飛行形態に変形出来る。実は砂緒の前世の前世、【等ウェキ玻璃音大王】が、ル・スリー白鳥號を参考に真似して作った機体。両手の尖った爪で突き刺した対象からスキルや能力をコピーする事が出来る。また砂緒の能力で巨大化したり強力な雷攻撃を発したりも出来る。
ル・スリー白鳥號 はくちょうごう。【まおう抱悶】の先祖である【王永嶋フィロソフィー王】が搭乗していた純白の機体。蛇輪に似ているが、よりヒロイックな形状をしている。古代にクラウディア王国で建造された。今は 【千岐大蛇】(チマタノカガチ) 退治の時に紅蓮が偶然入手し扱いに困惑している。劇中最強の機体で数々の魔ローダースキルが隠されている。かつてセレネと砂緒が制作させた【最強の魔法剣】を偶然所有しているが、標準装備の【魔法の刃の剣】も使用出来る。




