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有未レナードの報告


 ―あれから数日後。

 喫茶猫呼(ねここ)では依世(いよ)がぶつくさ言いながらも、姉雪乃フルエレ女王の言いつけを渋々守り真面目に此処で働き始めた。


「はい、常連の芹沢老人さんご案内よっ!」


 依世が張り切って入って来た常連の芹沢老人を席にエスコートする。


「いやあ依世ちゃんも板に付いて来たねえ、最初に依世ちゃんを手解きした身としては嬉しいわいハハハ」


 芹沢さんは凄く上機嫌だ。


「ええっ芹沢さんに手取り足取り熱心なセクハラ指導を受けて……泣きながら覚えた技ですよっ!」


 依世は悪戯な顔で耳元で囁いた……


「ちょっ依世ちゃん嘘八百言わないでよ!? 此処ではそういう冗談通じないんじゃ、ワシをニナルティナ湾に浮かせる気ですかいのう」


 芹沢老人はぎょっとして手を振り、本気で慌てて打ち消した。


「ジョーダンですよ冗談うふふ。海に浮きたく無ければ一杯注文して下さいネ」


 依世はウインクすると芹沢老人は頭を掻いた。



「依世ちゃん客あしらいが上手すぎない? 何処にこんな潜在能力が? 顔だけで持ってるやる気の無いフルエレ以上じゃないのさ」


 猫呼(ねここ)は目を細めて半ば呆れて言った。


「はぁ~~血は争えないものね、天性の何かがアレなのよね」

「ごめん、中身が全然ない台詞ね。アンタより凄いって言ってるのだけど」

「確かに依世さんなら一人で切り盛り出来る程の才覚がおありかと」


 そこにまたそ~っと近付き、イライザが二人に小声で囁いた。やはり彼女にとって闇ギルド主人の猫呼と女王フルエレは怖い存在であった。


「うふふ、貴方フルエレに言いたい事がありそうねえ」

「もう分かったわよ! イライザにも悪いから明日女王会議に出る事にするわ。ちょっと依世、貴方明日から臨時のチーフとしてお店をお願いね?」


 突然言われた依世は困惑する。彼女としては早く紅蓮の元に戻りたい事には違い無かった。真面目にやっていればいつか解放してくれると思っていたら、全くの逆になってしまった。


「え、何でですか?? 何で私がこの店のオーナーに!?」

「オーナーとか言ってないし」


 即座にシャルが突っ込む。


「おい貴様、フルエレがやれ言うたらつべこべ言わず喜んでやれば良い! 分かったかっ」


 砂緒がシャルを押し退け指を差して命令した。


「はぁ、何でアンタに言われなきゃならないのよ!? 絶対やめてやるわよ」

「でしたら今すぐ店を出て行きなさい!!」

「アンタがお姉さまの下を去りなさいよ」


 いつもの様に依世と砂緒が言い合いを始めてしまう。


「もう砂緒止めて頂戴、話がややこしくなるでしょう。依世聞いて、お店が忙しくて放置気味だった女王のお仕事に復帰してみようと思うの。依世なら上手くやれるわ、お願いね」


 依世にしてみれば女王の仕事を持ちだされると反論がしにくかった。


「ぐぅ、分かりましたお姉さま。でもすぐに戻って来て下さいね」

「うん、わかったわ!」

「忙しいてアンタ、喫茶猫呼でもマンガ読んで寝てるだけじゃないのさ」

「シッ」


 フルエレは依世の肩に手を置きながらぶつくさ言う猫呼を睨んだ。



 ―次の日。


「ヤレヤレ、じゃあ店を荒らすんじゃないぞ依世!」

「ムッ」


 朝から店に顔を出していた砂緒は、依世に上から目線で指を差すとエプロンをシュッと外した。

 

「お願いね」

「は~~い」


 フルエレに念を押され片手をピッと上げた依世に別れを告げ、一行は出発した。



 ―女王仮宮殿。


「あ~~~今日はとうとう遂に雪乃フルエレ女王陛下のご臨席の、女王会議が開かれる事となった。すっげえ久しぶりだがいつも通り皆、忌憚(きたん)無く話し合いを行ってもらいたい」


 と、そこへ有未(うみ)レナードの言葉通り、雪乃フルエレ女王が堂々と入場して来る。その横には砂緒も同伴している。メドース・リガリァを倒しさらに千岐大蛇(チマタノカガチ)を巨大ヌッ様で固定し倒す事に貢献した彼女には、皆恐れおののいてもはや誰も女王の資格を疑う者は無く、以前にも増して絶対的な権力を握っていた。だから彼女が普段から顔を出さず、喫茶猫呼で寝転がってマンガを読んでいても誰も何も言えないのだった……中には神秘的に姿を隠していると激しく誤解している者も居たが。


「今日は皆が集まってくれて嬉しく思う。我が盟友のセレネ王女が長期欠席であるが、いつもの様にレナード公の言葉通り忌憚無く何でも言い合って課題を解決したいと思う。レナード公、では早速これまでに溜っている課題などを報告して欲しい」


 フルエレは自分が手抜きな事を堂々とスルーして、たまっている課題などとのたまった。しかしレナード公は何も言わず言われる通り答えた。


「そうだな、まずは最優先課題と思っている【域外の帝国・ハイア】への遣使だな。これにはライス氏が直々に行ってくれると言っているぞ。その為に彼は今ラ・マッロカンプから【荒涼回廊】の海沿いに渡るルートを点検中だ。もうすぐ良き報告があるだろう。それに付随して東の地の【神聖連邦帝国】にも内々に域外の帝国への遣使の打診をしているが、好感触を得ているらしい。少なくとも邪魔されたりとかは無いし不快には思っていない様だぞ」


 静かに聞いていたフルエレが答えた。


「それはきっと姫乃(ひめの)さんが良い人そうだから、悪く思う訳無いじゃない!」


 フルエレは能天気だが、神聖連邦帝国は今現在域外の帝国への窓口が無い為、セブンリーフの外交の推移を見守る事にしていた。よって今の所は対抗したり邪魔をしたりする気は無いらしい。ただしかつてあったと言われる【域外の帝国・シルク】との通信再開を望む一派はいる様だが、何分遠かった……

主人公3人

砂緒(すなお)  元現代日本のデパート建屋だったが、魂が発生し百年後に崩壊してセブンリーフに異世界転生して来た。硬くなる重くなる電気が出るなどの地味スキルを持つ。中程度の怪力で特に強く無い。


雪乃フルエレ  ヒロイン①【海と山とに挟まれた小さき王国】の 夜宵姫(やよいひめ) だったが家出して色々あってセブンリーフ大同盟の女王になってしまった。金髪の天使の様な美少女。


セレネ  ヒロイン②ユティトレッド魔導王国王女で髪の長い美少女だが異常に強い魔法剣士。最初嫌悪していた砂緒に猛アタックされフィアンセ同然になる。フルエレを女王に推挙した張本人。


仲間

依世(いよ)  雪乃フルエレの妹。 美柑(みか) と名乗り紅蓮と冒険者をやっていた。探していた姉、夜宵姫・フルエレと遂に再会したが喧嘩が絶えない。


猫呼クラウディア  東の地(中心の洲)クラウディア元王国の元王女。失踪中の兄猫名を探してフルエレ達の仲間になった。今は闇ギルドの頭目をしている。背の低いおしゃまな付けネコミミ少女。


イェラ  元女戦士の褐色の背の高い美人。厨房で料理を作っている。麺料理屋台のチェーン展開するという野望を持つ。口数少ない性格だが砂緒の事が好き。


シャル  猫呼の部下闇ギルド員でボディーガード。腕がぐんぐん伸びる。

イライザ  喫茶猫呼店員。ぜんぜん意地悪く無い普通の子。

ニィル  イライザの兄で元浪人であったが砂緒セレネに拾われ新ニナルティナ軍幹部に。

有未レナード公  旧ニナルティナ王国の軍師だったが、ポンコツで無害だったので新ニナルティナの代表に選ばれた。雪乃フルエレ女王を盛り立て、東の地【神聖連邦帝国】との関係に悩む。


ウェカ王子 ラ・マッロカンプ王国の王子。御幼少のみぎりに幼稚園留学生として出会った依世に一目惚れしたが、彼女の裏の仕事を目撃し魔法を撃たれ死に掛けてしまった。

メア ウェカ王子の理解者でセクシーなメイドさん。しつこいくらいに玉の輿をねだる。


まおう抱悶(だもん)  可愛い熊耳の美少女だが恐ろしい魔力を秘める。砂緒と知り合った関係で雪乃フルエレ女王と大同盟を組む事となった。


神聖連邦帝国(東の地・中心の洲)

紅蓮アルフォード  【神聖連邦帝国】第二百十二代聖帝の息子。西の島、セブンリーフに単身まおう討伐を命じられて渡って来たが、美少女美柑(依世)と知り合い篭絡され、なかなか討伐する気が起きず、いつもブラブラしている。実は劇中一番強い人物だがなかなか本気で戦わない。爽やかでイケメンで真面目な風情に反し、実は人一倍女の子に興味があるムッツリスケベ。


瑠璃ィキャナリー  るりぃきゃなりー。神聖連邦帝国四旗機 桃伝説(ももでんせつ) の搭乗者であったが、紅蓮のサポートとしてセブンリーフに渡り行き倒れ、ウェカ王子に助けられ以降居候になる。かなり強い騎士だが、当地と故郷の間で悩む事になる。モデルは船〇リリィ。


魔法メカ・ロボット

魔ローダー  全高25Nメートルの騎士の鎧、プレートアーマーをそのまんま巨大化した様な、魔法力で動くロボット。魔法や物理等殆どの攻撃が効かず、魔ローダーの魔法エネルギーが乗った剣攻撃しか効かない。


蛇輪、日蝕白蛇輪  へびりん、ひばみはくじゃりん。砂緒とフルエレとセレネが交代で乗る主役機。劇中唯一の複座型で、表面は鏡の様なテカテカのメッキ調の銀色で、装甲各所に金色の華麗な装飾が施され非常に成金趣味な見た目をしている。頭部に蛾の触覚の様な巨大な二本の角があり、背中にはド派手な巨大な羽を背負い鳥型の飛行形態に変形出来る。実は砂緒の前世の前世、【等ウェキ玻璃音大王】が、ル・スリー白鳥號を参考に真似して作った機体。両手の尖った爪で突き刺した対象からスキルや能力をコピーする事が出来る。また砂緒の能力で巨大化したり強力な雷攻撃を発したりも出来る。


ル・スリー白鳥號  はくちょうごう。【まおう抱悶】の先祖である【王永嶋フィロソフィー王】が搭乗していた純白の機体。蛇輪に似ているが、よりヒロイックな形状をしている。古代にクラウディア王国で建造された。今は 【千岐大蛇】(チマタノカガチ) 退治の時に紅蓮が偶然入手し扱いに困惑している。劇中最強の機体で数々の魔ローダースキルが隠されている。かつてセレネと砂緒が制作させた【最強の魔法剣】を偶然所有しているが、標準装備の【魔法の刃の剣】も使用出来る。

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