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依世に迫る影!!


 依世(いよ)は重い顔で喫茶猫呼(ねここ)から地上に出る階段を上がった。


「嗚呼、夜窓から月や星を眺めて一人涙してらした、儚げなお姉さまとは全く変わってしまわれたわ……」


 彼女は目を閉じて大袈裟にヤレヤレと首を振った。


「……それはそれでキツイと思うけどね。僕は今の頑丈なフルエレちゃんも好きだな。でも昔は彼女もす、素潜りでアワビを取ったりして、かなりアクティブな面もあったんでしょ?」

「今紅蓮、素潜りってだけで一瞬妄想して興奮したんでしょ……我が姉ながら魔性の娘ね。でもそれは御幼少の頃の話で、少し大きくなってからは結構清楚系なカンジだったんだよっ!」


 依世はクルリと反転しながら紅蓮アルフォードに語り掛けていた。


「い、いよ……ちゃ、ちゃん……ボクだよ」

「ヒッ!?」


 その階段広場に背中を向けた依世の背後からぺたっと何者かが手を触れた。


「ほ、ほら、僕だよボク、覚えて無いの!?」


 思わず振り返った依世の眼前に、フードを被った同じ背丈くらいの少年が居た。


「誰よ!?」

「ほらっ御幼少のみぎりに君にいきなり魔法で半殺しにされた、ラ・マッロカンプ王国のウェカ王子だよ! 覚えてるでしょ!?」


 依世は姉夜宵(やよい)である雪乃フルエレ女王が涙の即位宣言をして以降、しばしば声を掛けてくるウェカ王子を全力で避けまくっていた。


「……そ、そげな人、知りませんのぅ。何かの人違いじゃなかとね? じゃっ」

(やべっコイツ生きていた上に、私がお姉さまの占いの指示で暗殺してた事まで覚えてるの??)


 依世は視線を逸らし、足早にその場を立ち去ろうとする。


「ちょ、ちょっと依世ちゃん、ボクがどれだけ君を探し求めて来たと思うんだよ! ちょっとだけお話、ね!?」


 しかし構わずウェカ王子は依世の前を遮り逃がさない様にする。


(もーめんどくさいわ、魔法で強打してもっぺん記憶を消してやるか)


 依世が思わず幼少期の凶悪な顔になり、伸縮式の魔法ステッキを繰り出そうとした。


「ちょっと待てよ! 君とのいきさつは知らないけどさ、美柑(みか)は今は僕のパートナーなんだ。もう忘れた方がいいよ? なんなら僕が相手してやろうか」


 今の紅蓮は店のエントランスで預けていた剣を持っていて、それを軽く見せ付けた。


「ちょっ紅蓮、止めてあげて、この子も悪いコじゃないのよ。私にも少しだけ責任が」

(ちょっとちょっと! 私を取り合って的な!? 思わず笑いが、いやイカンイカン)


 依世はシチュエーションに思わずニヘラと笑い掛ける所を、必死に堪えて健気な少女の風情を装って紅蓮を止めた。


「安心して! 僕もこんな子をいきなり斬ったりしないよ。美柑が一体誰のパートナーかって知らせて少し脅すだけだよ」


 紅蓮は振り返って爽やかな笑顔で言った。こうした態度だけなら立派なヒーローにしか見えない美形な彼であった。


「紅蓮……お願いあまり酷い事しないでね」

「はぁ~~~? ボクも遂に怒ったぞ!! 穏便に済ませてやるつもりだったけどな、お前依世ちゃんに付きまとうなら、そこそこ痛い目合わせてやるーーっ!!」


 何故かウェカ王子の脳内では紅蓮が悪役になっていた。そしてスラッと剣を抜いてしまった。


「仕方ないねっ裸にでもなれっ!!」


 シャッ!!

 紅蓮はいつもの恐ろしい速さでウェカ王子のズボンを切り裂いた……つもりだった。

 カキーーーーン!!


「何だ? 何を狙ってんだよ!?」

「え?」

「何」


 依世と紅蓮が同時に驚いた。手を抜いているとは言え最強レベルと思っていた神聖連邦帝国聖帝の息子、紅蓮アルフォードの剣をウェカ王子はあっさりと受け止めた。


「何だーーーでもお前もそこそこヤルみたいだナー、じゃあ本気だすぞっ!! うりゃっ」


 ビュンッ

 剣を押し返し間合いを取ると、ウェカ王子の鋭い剣が真横に胴を切り裂こうとし、紅蓮は慌てて後ろに避けた。


「君もそこそこヤルようだね。意外だよ、ならこれはどうだっ!」


 ブンッ!! カキィイーーン!! シュルシュルシュル……

 紅蓮は大袈裟に上段から兜割りを決めようと振りかぶり、予想通りその隙を突いて胴を突こうと突っ込んで来たウェカ王子の剣を回転する様に巻き取り、手元から剣だけを飛ばそうとした……

 パシィイイーーーーーンッカランッ


「何だコイツやっぱり弱いぞ」

「えっ」

「嘘」


 気付くと逆に紅蓮の剣こそ蛇に巻かれる様にからめ取られ床に転がっていた。本気では無いとしても大番狂わせであった。


「わーーーーーっ王子何やってるんですか!? 完全に不審者じゃないですかっ! すいませんすいません、本当は悪い人じゃ無いんですよーー」


 と、そこで丁度良いタイミングでセクシーなメイドさんのメアがすっ飛んで来たのであった。


挿絵(By みてみん)

主人公3人

砂緒(すなお)  元現代日本のデパート建屋だったが、魂が発生し百年後に崩壊してセブンリーフに異世界転生して来た。硬くなる重くなる電気が出るなどの地味スキルを持つ。中程度の怪力で特に強く無い。


雪乃フルエレ  ヒロイン①【海と山とに挟まれた小さき王国】の 夜宵姫(やよいひめ) だったが家出して色々あってセブンリーフ大同盟の女王になってしまった。金髪の天使の様な美少女。


セレネ  ヒロイン②ユティトレッド魔導王国王女で髪の長い美少女だが異常に強い魔法剣士。最初嫌悪していた砂緒に猛アタックされフィアンセ同然になる。フルエレを女王に推挙した張本人。


仲間

依世(いよ)  雪乃フルエレの妹。 美柑(みか) と名乗り紅蓮と冒険者をやっていた。探していた姉、夜宵姫・フルエレと遂に再会したが喧嘩が絶えない。


猫呼クラウディア  東の地(中心の洲)クラウディア元王国の元王女。失踪中の兄猫名を探してフルエレ達の仲間になった。今は闇ギルドの頭目をしている。背の低いおしゃまな付けネコミミ少女。


イェラ  元女戦士の褐色の背の高い美人。厨房で料理を作っている。麺料理屋台のチェーン展開するという野望を持つ。口数少ない性格だが砂緒の事が好き。


シャル  猫呼の部下闇ギルド員でボディーガード。腕がぐんぐん伸びる。

イライザ  喫茶猫呼店員。ぜんぜん意地悪く無い普通の子。

有未レナード公  旧ニナルティナ王国の軍師だったが、ポンコツで無害だったので新ニナルティナの代表に選ばれた。雪乃フルエレ女王を盛り立て、東の地【神聖連邦帝国】との関係に悩む。


ウェカ王子 ラ・マッロカンプ王国の王子。御幼少のみぎりに幼稚園留学生として出会った依世に一目惚れしたが、彼女の裏の仕事を目撃し魔法を撃たれ死に掛けてしまった。

メア ウェカ王子の理解者でセクシーなメイドさん。しつこいくらいに玉の輿をねだる。


まおう抱悶(だもん)  可愛い熊耳の美少女だが恐ろしい魔力を秘める。砂緒と知り合った関係で雪乃フルエレ女王と大同盟を組む事となった。


神聖連邦帝国(東の地・中心の洲)

紅蓮アルフォード  【神聖連邦帝国】第二百十二代聖帝の息子。西の島、セブンリーフに単身まおう討伐を命じられて渡って来たが、美少女美柑(依世)と知り合い篭絡され、なかなか討伐する気が起きず、いつもブラブラしている。実は劇中一番強い人物だがなかなか本気で戦わない。爽やかでイケメンで真面目な風情に反し、実は人一倍女の子に興味があるムッツリスケベ。


魔法メカ・ロボット

魔ローダー  全高25Nメートルの騎士の鎧、プレートアーマーをそのまんま巨大化した様な、魔法力で動くロボット。魔法や物理等殆どの攻撃が効かず、魔ローダーの魔法エネルギーが乗った剣攻撃しか効かない。


蛇輪、日蝕白蛇輪  へびりん、ひばみはくじゃりん。砂緒とフルエレとセレネが交代で乗る主役機。劇中唯一の複座型で、表面は鏡の様なテカテカのメッキ調の銀色で、装甲各所に金色の華麗な装飾が施され非常に成金趣味な見た目をしている。頭部に蛾の触覚の様な巨大な二本の角があり、背中にはド派手な巨大な羽を背負い鳥型の飛行形態に変形出来る。実は砂緒の前世の前世、【等ウェキ玻璃音大王】が、ル・スリー白鳥號を参考に真似して作った機体。両手の尖った爪で突き刺した対象からスキルや能力をコピーする事が出来る。また砂緒の能力で巨大化したり強力な雷攻撃を発したりも出来る。


ル・スリー白鳥號  はくちょうごう。【まおう抱悶】の先祖である【王永嶋フィロソフィー王】が搭乗していた純白の機体。蛇輪に似ているが、よりヒロイックな形状をしている。古代にクラウディア王国で建造された。今は 【千岐大蛇】(チマタノカガチ) 退治の時に紅蓮が偶然入手し扱いに困惑している。劇中最強の機体で数々の魔ローダースキルが隠されている。かつてセレネと砂緒が制作させた【最強の魔法剣】を偶然所有しているが、標準装備の【魔法の刃の剣】も使用出来る。

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