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依世、セクハラに耐える


 ―少し前、ニナルティナの閑静な立地に立つ高級レストランの個室……

 雪乃フルエレ女王は喫茶猫呼(ねここ)常連のリーダー的存在、芹沢老人を呼び出していた。


「な、なんですかいのう? この老いぼれに女王陛下自ら、ハッいえフルエレちゃんが一体?」


 突如呼び出された芹沢老人は嬉しさ半分、一体何を言われるのだろうかという恐怖もあった。当然雪乃フルエレ女王の背後には、護衛のシャルとライラが仁王像の如くに目を光らせ立っていた。


「あらあら、そんな恐縮しなくて良いのよ芹沢さん。今晩は常連さんの貴方に特別にお礼がしたくて……だけど一つお願いがあるのよ」


 ウイスキーを注ぎつつフルエレ女王は不敵に笑った。しかし芹沢老人は何事かとドキッとする。


「一体何を?」

「うちに依世(いよ)っていう、うぶい新人が入ったのよね。芹沢さんにはちょっとその子の事を揉んで欲しいのよ……」

「なん……ですと!?」


 芹沢老人は雷に撃たれた様なショックを受けた。


「さぁさ、今晩は好きに食べて飲んで頂戴な」


 そう言われても芹沢老人は一体何をどうすれば良いのか、高級料理も味がしない程の戸惑いを覚えた。



 ―そして現在に至る。

 芹沢老人は激しい緊張の中、喫茶猫呼(ねここ)の個室の中で依世(いよ)の到着を待ち構えていた。芹沢老人の脳内にズカズカと分け入ってみよう。


「ふうはあ……一体何事なんじゃろうか。なんでも新人の依世ちゃんは雪乃フルエレ女王の妹さんだと聞く。果たしてそんな子に本当にセクハラをして良いのか? 実はこれはトラップでは無いのかのう? 常連のワシに何か不審点があり、ワシの態度を試しておるのではないか?? それに揉むと言って何を揉むのか曖昧じゃ……本当に依世ちゃんの身体を揉んだりしたら即、怖いニーちゃんが出て来てニナルティナ湾に浮くんじゃなかろうかのぅ? そうじゃこれはトラップじゃ!!」


 ピコーン!

 芹沢老人の脳内はセクハラをしないという決断に至った……

 ガチャッ


「あらいらっしゃい芹沢さん、この子が新人の依世ちゃんよよろしくね。じゃあしっかりお相手するのよ、大切な常連さんなのよ、うふふ」


 フルエレは芹沢さんに目くばせした。


「は、はいお姉さま……」

「じゃあね」


 ガチャッ

 小さな物音にもビクッとしながらオドオドして依世が個室に入って来た。


「ほっほっほっ君が依世ちゃんかね、怖がらなくて良いよ。こっちに来なさい」

「はぃ」


 依世は芹沢老人に導かれるまま、席の隣に座った。当然ながら喫茶猫呼はコンカフェでは無いので、普段はこんなシステムは無い。



 ―しばらく後、緊張の中依世が戻って来た。


「お姉さま、無事接客終了しました。芹沢さん昔話がウザイとか以外はとても優しい方で、何事も無く本当に良かったです!」


 依世が多少疲れた様な顔をして戻って来たが、その表情は晴れやかだった。


「何ですって!? 何事も無かったですって?? あんたみたいなペーペーは触ってもらってナンボよ? もう一回戻って行って脚を触って下さいご主人さまって言って来なさい」

「何でーーーー!!」


 依世は姉の言葉が信じられなくて激高した。


「フルエレ何て事言うの?? セクハラ厳禁は貴方が決めた事でしょ?」


 依世自身だけでは無く、聞いていた猫呼までもが戸惑った。


「……依世には私の後釜になって女王を継いで欲しいのよ。その為にはこうやって世間の荒波に揉まれるのが最適なのよ」

「荒波に揉まれるって意味ちがく無い?」

「ちょっと! お姉さま酷いです。どうやったらこの接客が女王の仕事に役立つんですか!? それに……私一言も女王を継ぐとか言ってませんから!! ていうか絶対に嫌です。今でもほとぼりが冷めたらこの店から脱出する事ばかり考えてましたっ!」


 遂に依世が本心を言ってしまった。


「脱出してどうするのよ?」

「冒険者に戻ります!」


 フルエレが額に手を当てクラッとする。


「なんてこと、冒険者なんてヤ〇ザな商売は止めなさい! 貴方には堅気になって喫茶猫呼で短いスカート履いて働いて欲しいの……」

「この格好のどこがカタギですか!? 冒険者の方がよっぽど堅気です!!」


 言い合いを聞いていて猫呼はどっちの味方をすれば良いか迷った。


「何ですって!? そんな勝手絶対に許さないわよ、貴方は私が楽隠居する為に早く女王に即位するのよ!?」

「楽隠居てアンタ何歳よ?」


 猫呼が呆れたが、雪乃フルエレは現在十六歳くらいである。


「そんなの知らないわよ! 今日はもう終わりますから!!」


 依世は床に可愛いふりふりのエプロンを叩き付けると店を出て行った……


「アッこら待て―――――!!」


 フルエレはドラ猫を追い掛けるサザ〇さんの様に腕を振り上げたが、依世は無視して帰って行った。


「あ、待ってくれよ美柑(みか)!」


 それを紅蓮が慌てて追い掛けて行った。


「……さすがフルエレでも家族が絡むと本性が現れる物ですね、実に面白い」


 砂緒(すなお)は美しい姉妹の喧嘩をにこにこしながら眺めた。


挿絵(By みてみん)

主人公3人

砂緒(すなお)  元現代日本のデパート建屋だったが、魂が発生し百年後に崩壊してセブンリーフに異世界転生して来た。硬くなる重くなる電気が出るなどの地味スキルを持つ。中程度の怪力で特に強く無い。


雪乃フルエレ  ヒロイン①【海と山とに挟まれた小さき王国】の 夜宵姫(やよいひめ) だったが家出して色々あってセブンリーフ大同盟の女王になってしまった。金髪の天使の様な美少女。


セレネ  ヒロイン②ユティトレッド魔導王国王女で髪の長い美少女だが異常に強い魔法剣士。最初嫌悪していた砂緒に猛アタックされフィアンセ同然になる。フルエレを女王に推挙した張本人。


仲間

依世(いよ)  雪乃フルエレの妹。 美柑(みか) と名乗り紅蓮と冒険者をやっていた。探していた姉、夜宵姫・フルエレと遂に再会したが喧嘩が絶えない。


猫呼クラウディア  東の地(中心の洲)クラウディア元王国の元王女。失踪中の兄猫名を探してフルエレ達の仲間になった。今は闇ギルドの頭目をしている。背の低いおしゃまな付けネコミミ少女。


イェラ  元女戦士の褐色の背の高い美人。厨房で料理を作っている。麺料理屋台のチェーン展開するという野望を持つ。口数少ない性格だが砂緒の事が好き。


シャル  猫呼の部下闇ギルド員でボディーガード。腕がぐんぐん伸びる。

イライザ  喫茶猫呼店員。ぜんぜん意地悪く無い普通の子。

有未レナード公  旧ニナルティナ王国の軍師だったが、ポンコツで無害だったので新ニナルティナの代表に選ばれた。雪乃フルエレ女王を盛り立て、東の地【神聖連邦帝国】との関係に悩む。


まおう抱悶(だもん)  可愛い熊耳の美少女だが恐ろしい魔力を秘める。砂緒と知り合った関係で雪乃フルエレ女王と大同盟を組む事となった。


神聖連邦帝国(東の地・中心の洲)

紅蓮アルフォード  【神聖連邦帝国】第二百十二代聖帝の息子。西の島、セブンリーフに単身まおう討伐を命じられて渡って来たが、美少女美柑(依世)と知り合い篭絡され、なかなか討伐する気が起きず、いつもブラブラしている。実は劇中一番強い人物だがなかなか本気で戦わない。爽やかでイケメンで真面目な風情に反し、実は人一倍女の子に興味があるムッツリスケベ。


魔法メカ・ロボット

魔ローダー  全高25Nメートルの騎士の鎧、プレートアーマーをそのまんま巨大化した様な、魔法力で動くロボット。魔法や物理等殆どの攻撃が効かず、魔ローダーの魔法エネルギーが乗った剣攻撃しか効かない。


蛇輪、日蝕白蛇輪  へびりん、ひばみはくじゃりん。砂緒とフルエレとセレネが交代で乗る主役機。劇中唯一の複座型で、表面は鏡の様なテカテカのメッキ調の銀色で、装甲各所に金色の華麗な装飾が施され非常に成金趣味な見た目をしている。頭部に蛾の触覚の様な巨大な二本の角があり、背中にはド派手な巨大な羽を背負い鳥型の飛行形態に変形出来る。実は砂緒の前世の前世、【等ウェキ玻璃音大王】が、ル・スリー白鳥號を参考に真似して作った機体。両手の尖った爪で突き刺した対象からスキルや能力をコピーする事が出来る。また砂緒の能力で巨大化したり強力な雷攻撃を発したりも出来る。


ル・スリー白鳥號  はくちょうごう。【まおう抱悶】の先祖である【王永嶋フィロソフィー王】が搭乗していた純白の機体。蛇輪に似ているが、よりヒロイックな形状をしている。古代にクラウディア王国で建造された。今は 【千岐大蛇】(チマタノカガチ) 退治の時に紅蓮が偶然入手し扱いに困惑している。劇中最強の機体で数々の魔ローダースキルが隠されている。かつてセレネと砂緒が制作させた【最強の魔法剣】を偶然所有しているが、標準装備の【魔法の刃の剣】も使用出来る。

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