新プロローグ 戦いの前に……b
ザザッ
『雪乃フルエレ女王陛下ご機嫌麗しゅう。のーほっほっほ魔道学園生徒会長のユーキュリーネ・カナルト・ヒューゴーで御座いますわ。我々貴族である魔道学園生徒会部隊も同盟の為に全力で死力を尽くして華麗に戦う姿をご覧に入れますわっ。それとセレネ王女、本当にまおう城内にあのシャケは居るのでしょうね? もし嘘なら許し』
プツッ
突然通信に割って入った生徒会長の話の途中で、何事も無かったかの様にセレネは通話を切った。
『ラフィーヌ、一般生徒のXS25は練習機には違いない。生徒会長や一部の名有り機体と違ってくれぐれも無理させない様にしてくれ』
『もちろんだ。此処には大した敵は居ないそうだけど、特に慎重に戦おう。君の大切な生徒達だからなっ! 絶対に守り抜くよ』
フルエレは絶対に守るという台詞に不意に悲しい思い出が蘇る。
『ラフィーヌさんもアルピオーネさんも、後ルンブレッタさんも蘭観さん……あと誰さんだっけ? とにかく学園生も学院生も皆気を付けてね、命が大事よ』
『有難う御座います女王陛下! 今の御言葉で生徒達全員勇気百倍になる事でしょう』
全ての通信を終えて、再びフルエレ・砂緒・セレネの仲良し三人組の秘匿通信に戻る。
『フルエレさん……地上兵力約3万5千、魔戦車二百両、魔ローダー120騎、全てフルエレさんの号令を待ちわびています。さぁどうぞ』
『さぁどうぞって……本当に平和の為なのよね? 私達の方から【まおう軍の地】に向かう事は正しい事なのよね?』
此処に至ってフルエレはまだ逡巡した。
『まだそんな事を? 私が何度も言いました。【神聖連邦帝国】が動き出す前に不安定なまおう軍の地を叩いた方が良いと。とにかく全て私とセレネに任せて下さい。兎幸、フルエレをしっかりサポートして下さい』
『はいはーい! フルエレ、皆が居るから大丈夫だよっじゃあ行こうかっ』
下の座席からウサミミを立てて兎幸が元気に叫んだ。
『分かった……砂緒とセレネを信じるわ』
『はい』
『行きましょう』
フルエレは全機体に魔法通信を入れた。
『……皆聞いて欲しいの、これより南のまおう軍の地に建つ【まおう城】から主抱悶ちゃんを追い出し、勝手に城を乗っ取ったココ姫を討ちます!!』
オオーーーッ!!
魔ローダー搭乗者のみならず、魔戦車兵も地上兵も一斉に地響きの様な雄叫びを上げた。
『だけど目的は侵略じゃ無いの、あくまで大同盟の大切な相手まおう軍【炎の国】の地と民に平和と安定をもたらす為なの! だからこの地を踏み荒らさないで決してその事を忘れないで。そして何よりも自身と仲間の命を大切に守って戦って欲しいの。私も最前線で戦うわっ皆、行くわよっ同盟軍全軍、攻撃開始!!』
ビュンッ!
女王、雪乃フルエレが乗る同盟の旗機、日蝕白蛇輪の銀色に輝く腕が握る、豪華な剣が振り下ろされた。
ガシャッ
その彼女の号令を見て砂緒とセレネも腕を振り下ろし、同盟軍全軍は一斉にまおう軍の地に侵攻を開始した……
これが【同盟軍まおう軍戦争】の始まりであった……




