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神スキル 国引き ⑤ ねこ集合……



「飛ぶよっ」


 フィーーーン

 紅蓮アルフォードが操縦し、砂緒と雪乃フルエレ女王とセレネが乗った魔ローダー白鳥號(はくちょうごう)が一気に高度を上げ大型船がぐんぐん小さくなって行く。その甲板上ではスルメをしがむ美柑(ミカ)が目を細めて機影を見送っていた。飛び上がった白鳥號の目の前には巨大な千岐大蛇(ちまたのかがち)が浮遊しており、あまり接近すると誘引してしまう可能性があり、今はカガチに触れない様に急角度の急上昇で避けて通った。


「きゃーーーっ」


 雪乃フルエレが後ろに倒れかけて砂緒が慌てて支えた。


「大丈夫ですかフルエレ、紅蓮にどさくさ紛れにセクハラタッチされたら勇気を出して申告して下さい」

「分かったわ」

「僕はそんな事しないよ!」


 砂緒の冗談に振り返り、いちいち目くじらを立てて紅蓮が怒った。


「犯人はだいたいやってないゆー物ですから」

「何!?」

「紅蓮くん気にしないでね、全部聞き流せば良いから」

「いちいち相手するな小さいヤツだなあ」


 全く悪くない紅蓮なのにセレネに言われて多少へこんでしまった。


「それよかこの〇鶴ですか? この機体は内装までなんとなく蛇輪の完全パクリですなあ」

「白〇じゃない白鳥號な」

「本当にソックリだわ」


 フルエレまでもが言っているが、実際には砂緒の前世の前世である等ウェキ玻璃音(はりね)大王が白鳥號を参考にして建造したのが今の日蝕白蛇輪(ひばみはくじゃりん)であり、蛇輪(へびりん)の方が白鳥號のパクリであった。


「……君達が送り迎えしてくれって言うから来たんだよ? 感謝の言葉とかそういうの無いのかな?」

「あるっかー! お前が私達に感謝こそすれ、何で一回吹き飛ばされたお前に感謝するんじゃ」


 砂緒は光の速さで反論した。しかし砂緒は吹き飛ばされたと度々言っているが、美柑と仲良くしていた所に絡んで行ったのは砂緒とセレネの方であった……


「何で砂緒に感謝しなくちゃならないんだ?」

「お前なんかどうせ神聖連邦ナントカ帝国の王子様とかで蝶よ花よと甘やかされ倒されて育ったんだろ? 私が世間の荒波とか冷たさとか教えてやるって事ですよ感謝しなさい」

「神聖連邦帝国言えてるからナントカ不要な」

「甘やかされてなどないっっ!!」


 ドンッッ!!

 いきなり紅蓮は普段の穏やかな表情と違って怒りの顔になって、機材を壊さない範囲でコンソールを叩いた。それを見てフルエレは怪訝な顔をする。


「ど、どうしたの?」

「父上からも姉上からも厳しく育てられているっ!!」


 神聖連邦帝国王子という事で特別視されるのが特に嫌いな紅蓮アルフォードであった。その点美柑はそういう点にほぼ触れないタイプであり居心地が良かった。でもそれは美柑自体にも隠し事があった為でもある……


「……まあ奥さん、この子冗談の通じない子よ嫌ゃ~ね~~」

「ほんとうですわね、きっと友達少ない子よ」


 セレネも友達がいないタイプであるにも関わらず。


「奥さんもっと言うたれ言うたれっ!」


 ここぞとばかりに砂緒とセレネは、はやし立てた。


「セレネちゃんまで酷いよ」

「もう二人ともそのくらいにしてあげて」

「ぐっ」


 どうにも紅蓮は砂緒が苦手であった。


「まーいいでしょう、じゃあ座が温まった所で本題に入ろう、この機体をくれや」


 砂緒は紅蓮の顔の前にぐいっと片手を出してやおら言った。


「断る! この機体はまおう軍に返す予定だ」

「何にい? 何ていう無欲な奴、あたしなら完全に色塗って違う機体言い張るわ」

「セレネ結構せこいですね」

「早いわ、もうリュフミュランよ」


 その時フルエレが暗いながらも中間の海を越えて陸に入った事に気付いた。


「全力で飛んでるからね」


 緊張感の無い無駄話をしている間に直ぐにリュフミュランに到着してしまった。


「暗い……」

「そりゃもう深夜ですからねえ」


 ニナルティナに比べれば田舎であるという事もある。


「とにかくリュフミュラン城のフルエレが突いた大バルコニーに横付けして下さい、七華(しちか)の寝室は良く分かっています!」

「紅蓮くんの前で余計な事言わないで」

「何で七華の寝室を良く知ってるんだよ?」

「…………し、城でメイドをしていました」

「適当過ぎる嘘を付くな」


 等と言っている間にリュフミュラン城を探り当て、飛行形態のままホバリングで大バルコニーに横付けした。当然フルエレが開けた大穴はとっくに塞がれている……


「今から七華に会いに行くからな、勝手に帰ったら承知せんぞー、それに兵士達とトラブルなよ?」


 砂緒が七華みたいな口調で言った。


「むっ僕は何処に行っても君程に失礼な対応をされた事はないよ!」

「ほらやっぱり王子さま感出して来たじゃないか!」

「セレネちゃんは味方になってよ!」

「な訳あるか」


 タクシー代わりにした、叫ぶ紅蓮を無視してフルエレの手を持ちピョンと大バルコニーに飛ぶと、砂緒は城の中に急いだ。



「あっあ、砂緒さま!? それにフルエレ女王陛下も??」


 半分眠っていた兵達がぴっと立ち直した。


「け、敬礼!!」

「ご苦労ご苦労ふひひ」


 三人と仲が悪いリュフミュラン王は兎も角、下っ端な兵士達からすると今や雲の上の存在である三人が突然現れると緊張して敬礼した。芸能人の母校凱旋処の騒ぎでは無い、興味が無いと言っていたメイド達も砂緒如きに眠い目を輝かせて歓迎した。そうしてすぐさま七華の寝室に到達した。


「なんだかあれだけ邪見にされてた城なのに怖いわ」

「フルエレさんはメドース・リガリァを倒した女傑なのです、普通恐れられて当然です」

「半分以上はセレネがやった気がするわ……」

「皆さん、七華があられもない姿で出て来る可能性がありますが、興奮しないで下さい」

「するかよ」


 コンコン

 メイドの一人が控えめにドアをノックする。


「七華さま……女王陛下と砂緒さまが……」


 ガチャッ

 開いたドアの隙間からネコミミが覗いた。


「ニャッ!?」

「えっ猫呼(ねここ)??」

「猫呼先輩何故??」

「あら、フルエレ?? 砂緒さま!」


 猫呼が飛び出して来た後に、本当にココナツヒメに負けない様なスケスケネグリジェ姿の七華が出て来た。


「七華、会いたかったです」

「まぁ」


 二人は周囲も忘れて一瞬見つめ合った。


「おいちょっとまて、なんで七華がこんなスケスケだって把握してるんだ?」

「それはもう、ねぇうふふ」


 少し照れて七華は砂緒を見た。


「超能力で予知しました」

「嘘くさ過ぎるわ」



 まず七華側が何故猫呼が此処にいるかを説明した。


「何と、する事が無くて暇だから我々が去った直後に、リュフミュラン海の見える神殿でフルエレの北部中部新同盟の女王即位式の予行練習をする計画を練ったと?」

「ええっそうなのよ、既に海の見える神殿の宿泊施設には、招待状を出したフルエレに忠誠度が高い王族達が泊まっているわ」


 スケスケネグリジェに上着を羽織った七華が戻って来た。またもや砂緒とアイコンタクトする。


貴城乃(たかぎの)シューネにぶち壊されたヤツだな……」

「ごめん勝手な事しちゃった? 砂緒達は一体どうしちゃったのよぉ、怪物は倒したの??」


 猫呼も謎の怪物の話はもちろん聞いているが、砂緒のいつもの事だから簡単に倒すと思っていた。



「えっその千岐大蛇てのが強敵で、仮宮殿をぶち壊してこっちに向かってるですって?? 私のお部屋はどうなったの?? 人々は無事なのよね? 宝物庫の金塊は??」


 眠まなこから一転、猫呼はフルエレに掴み掛かって聞いた。


「いえ、もう皆必死でごめんなさい、カガチの発生源に近いラティス川川上周辺では被害者がかなり出てしまったみたい……加耶さんという猫弐矢(ねこにゃ)さんのパートナーもまだ行方不明よ」

「お兄様……」

「猫呼の部屋とか宝物庫とかそんな暇ないですよ、大量の金塊とかどうなったんでしょうか? 忘れてましたよ」

「いやもう今そんな話じゃないだろ」


 猫呼は深刻な顔をして黙り込んだ。


「それで砂緒さま御用はなんですの?」

「荒みきった時に七華の顔が見たかったのですよ」

「まぁ」


 セレネは砂緒を睨んだ。


「七華、悪いけど折角集まった王族達だけど、大急ぎで地元に返す様に早馬で伝えて頂戴」

「あら、大アリリァ乃シャル王様だとかコーディエ様だとか貴方のファンばかりよ? 逃げろと言っても帰らないんじゃ無いですの?」

「……居たきゃいればいいわ、王族達がそうでもリュフミュラン東沿岸部の人々だけでもすぐに避難して……それより! 猫呼行くわよ!!」

「へっ!?」


 フルエレはガッと猫呼の手首を強く掴んで歩き出そうとした。


「ちょ、ちょっと待って何処へ行くの??」


 猫呼もかかとをふんばって抵抗する。


「詳細は言えないのよ! でも一緒に行くのよ必ず!」

「い、いやよ私はまだ帰れない」

「帰るんじゃありません、船に戻るだけです。臨時代用お兄様もお手伝いします」


 砂緒が中程度の怪力で無理やり猫呼をひょいっと抱えた。


「こ、こら変なとこ触んニャーッ」

「猫確保、んじゃここら辺でずらかるわっあばよ~!」

「はい、猫の子さんの普段着ですわ」

「うお!?」


 七華から投げ付けられた衣服を受け取ると、セレネは嫌いな七華に適当に手を振った。


「あら、本当にお茶も頂かないで? 砂緒様また起こし下さいましっ!」


 七華は砂緒だけに向けて手を振り続けた。


挿絵(By みてみん)

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