一緒にいるのに別れ ③ 流星……後
(くやしいが年下のこの子の方が魔力が大幅に大きい? まるで……)
「あんたはフルエレさんの関係者か?」
「関係無いでしょ今」
美柑は魔法モニターに向き直した。カガチはもう完全に仮宮殿を離れてさらに移動中であった。
『でもあれをどうすれば良いんだ!?』
『ウインドウ川に向かっています!!』
『取り敢えず大きな翼を斬ってしまおう!!』
『ワシも手伝うぞ』
白鳥號が魔法の剣をビュンッと出して、うにゃうにゃと動く無数の巨大な首で守られている羽の根本に接近しようとしていた。ル・ツーは両機よりは攻撃力は下がるが、それでも必死に首を落とし続けた。
『では、私も残りの羽をなんとか爆破しますっ!!』
そのまま白鳥號と片腕のヌッ様は首達と格闘しながら、必死に羽の根本を斬ろうと奮戦した。
キラッ!!
しかしもうその頃には上空の蛇輪は高度二万Nキロをとうに過ぎていた。
『皆さん、退避して下さい! もうそろそろ砂緒を投下しますっ!!』
そうした最中に再びフルエレの通信が入った。
『今まずい事になっている、カガチが動きだした……』
『えっ!?』
『何やってんだこの役立たず共が』
カガチの首を掻い潜り、なんとか羽を斬り落とそうとする地上班に、スナコの無情な言葉が投げ付けられた。
『済まない……』
猫弐矢が目を細めた。
(ヤバッ私がごちゃごちゃ砂緒と会話してたから!?)
フルエレの額に汗が流れた。
ザンッッ!! ズダーーン
その時、白鳥號が片方の翼を根本から斬り落とし、巨大なカガチの身体が地上に落着した。
「くおおおおおーーーーーんんん!!」
ヒュンッカッ!!
苦し紛れなのか、カガチは叫びながら赤い光線をあらぬ方向に乱射した。
『危ない!?』
『誰も当たってないか!!』
シュバッッ!!
しかし降下中の蛇輪の真横を光線はかすめていた。
『なんか滅茶苦茶な状況ですなあ』
『どうしよう……カガチが移動してるなんて』
『落ち着いて下さい、急降下爆撃は普通動いてる艦船に行う物です。蛇輪なら余裕で当たります』
『う、うん、そろそろ八千Nメートルに到達するわ』
『じゃあ、頼みますよアディオスッ!!』
スナコはスチャッと指を振ると、ハッチ解放に備えた。
しかしその頃地上では、片翼になったカガチにヌッ様が苦戦していた。片翼になりながらもカガチはズリズリとウインドウ川方面の南に向かって進み、ヌッ様は襲い来る首達と格闘していた。
『助太刀するよっ!! とりゃあああ!!』
苦戦するヌッ様とル・ツーを見かね、白鳥號の紅蓮が魔法の剣を振りながら助太刀した直後であった。
『高度八千、突入します!! スナコ解放!!』
『え!?』
『早い!』
『もう??』
『当たってくれい』
『砂緒がんばー』
人々が空を見上げると、天高く、月の横に大きく光る流星があった。
『ヌッ様は避難民の壁になって!! 早く』
『はいっ!』
ヌッ様は戦闘を停止し、仮宮殿の北西側に回った。
バシャッ!! バキッガン、ゴンガン……
ハッチが開いた途端に、空気抵抗で根本から折れ、蛇輪の装甲にぶち当たりながら飛んで行った……
『あっハッチ!?』
『行きます!』
ビュンッ
飛んだハッチを無視し、体育座りで席から飛び出したスナコを人生史上最大の反射神経で、フルエレが鳥型の脚で器用にキャッチに成功した。
パシィイッ!!!
『やった!! 超加速!!!』
キィイイイイイイイインンン!!!
スナコをキャッチした瞬間、フルエレが魔力を全開にして翼から黄金のキラキラ粒子をまき散らし超加速を始めた。
「うぶぶうぶぶうぶうううぶああああああ!?」
空気が巨大な壁となってスナコにぶち当たりスナコは瞬間的に硬化して重量を最大化する。
パァーーーーーーーーーンン!!
その瞬間、蛇輪は一気に音速を越えた。
『うおおおりゃああああああああ!! たああああああああああああ!!!!!』
音速を越えた蛇輪は一気に南西に移動中の千岐大蛇の直上に到達した……
『砂緒ッッッ!!!』
ビュンッッッ!!
本当にカガチに当たるか当たらないかの直上で、フルエレは地表に向けて砂緒を投げ付けた。
ギュンッ
投げ付けた直後、ほんの一瞬だが睨むカガチの赤い瞳と目が合いながら、フルエレは一気に機首を上げた。その周囲には突っ立つヌッ様の影が。
カッッ!!!
ドォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンン!!
その直後、真っ白い閃光と凄まじい轟音とそしてクラウディアの大地に巨大な火の玉が発生した……
『衝撃に備』
『きゃーーーーーーーー!?』
ビリビリビリ……
しばらく魔法モニターの焼き付きが起こり、人々は状況が不明であった。




