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スナコちゃん再々降臨!! ⑪ 第一次衛星爆撃 Ⅱ 温泉と準備


 ―セブンリーフ島東部、ププッピ温泉。

 カポーン カタッ ザバーーーン、カポーン

 過剰な温泉演出が示す様に、サッワと猫名(ねこな)ことスピネルはププッピ温泉のとある湯舟に浸かってくつろいでいた。


「はぁ~~~温泉最高ですねスピネルさん!」

(これで一緒に入っているのがカヤちゃん(まおう軍)か、カレンかフゥーだったらもっと良かったのに……)


 頭上にタオルを乗せたサッワが顔を拭きながらスピネルに言った。


「そうだな」


 いつもの様にスピネルは口数が少ない。しかしスピネルを尊敬して大好きなサッワはその様な事は織り込み済みだ。彼は最高に機嫌が良い状態だと分かっている。


「僕は地獄巡りとか初めてで興奮しました! ナババ(ワニ)地獄とかって画期的過ぎですよ!」

「ふふ、サッワはまだまだ子供だな。温泉卵食べるか?」


 スピネルは浮かぶ風呂桶から温泉卵をサッワに見せた。


「い、いえもう温泉卵は結構です。有難う御座います……けどいいんですか? こんなに道草食ってて」

「いや、外回りの時は適度に息抜きする、これが長続きする否決なのさ」


 スピネルはゆったりと後ろの岩場にもたれ掛かった。細見だが筋肉質な上半身がはっきりと湯気の中に見える。


「えーー、そうなんですかあ? もしかしてパン屋さんの奥さんと上手く行ってないとか!?」


 サッワが余計な事を言って、途端にスピネルがギロリと睨む。しかしすぐに違う方向を向いた。


「パン屋では無い、ケーキ屋だっ!」

「す、すいません! 悪口言うつもりじゃ……」

「ふふっ怒ってなどいないさ」


 ちなみにスピネルの彼女の実家はケーキ屋では無く総菜屋兼弁当屋である。


(ああっシャクシュカ隊がいた頃は美女とお風呂入り放題だったなあ、良かったなあ……今頃エリゼ玻璃音(はりね)女王陛下はどうしてらっしゃるかなあ)


 サッワはどこまでも真っ直ぐな瞳をしたエロ少年だった。



 ―再び東の地(中心の洲)クラウディア元王国。

 少し前。


「という訳でこれより砂緒殿衛星軌道上重量爆弾攻撃及び対千岐大蛇(チマタノカガチ)固定作戦の準備を始める! 各々は予定の配置に付け!」


 と、大猫乃主(おおねこのぬし)の号令により各々は各配置に散って行った。


「よし、私は全力で眠って休息を取るわっ!」


 枕を握りしめながら全力で寝ようとする雪乃フルエレ女王に、メランはズコッとコケた。


「フルエレさんやる事はいつもと同じですね」

『では私も……』

砂緒(すなお)くんは、重量増加の為に着こむ鎧のフィッテイングがあるぞ、それが終わってからだ」

『ちぇー』


 フルエレに付いて行こうとするスナコを猫弐矢(ねこにゃ)が止めた。それをフゥーが横眼で見ながら去って行った。


「あのフルエレちゃん、美柑(ミカ)の事知らないかな?」

「紅蓮くん、私も知らないのよ……何だか私、あの子に嫌われちゃったみたい」

「いや、そんな事は無いよ……」



 ―仮宮殿、仮魔ローダー整備工場。

 工場では整備兵達が大急ぎで破損した蛇輪(へびりん)の胸部装甲を、GSX-R25の装甲に換装していた。


「かっこ悪い神聖連邦製の胸部装甲を付けてやるんだ、同じ雰囲気になる様に銀色を塗れよ!」


 修理してもらっておきながら、セレネは次々に注文を出していた。


「塗装なんてしていたら時間が掛かるであろう。むしろ装甲表面の塗装を落とし、金属の地肌を出した方が他の箇所の雰囲気に近づくぞ」


 わめいていたセレネの後ろからシューネが話し掛けた。珍しい取り合わせであった。


「なんだ貴様か? お前は会場破壊の一件を忘れた訳では無いからな。気易く話し掛けんな」


 一瞬だけ振り返ったが、すぐにぷいっと前を向き直した。


「あの事については賠償しよう。しかしこの修理はフルエレ女王陛下の安全についてとても大切な事だ」

「おや、敵にしてはえらく真面目だな? てっきりワザと手を抜いてあたしらを陥れるじゃないかと思っていたぞクク」


 今度は腕を組んで不敵な笑顔で振り返った。


「いや、そんな姑息な事はしない。このカガチの騒ぎがこれ以上拡大すれば政治的にも生物的にも私の命が危うい、自分自身の為でもある。それにどんな仕事でも手抜かり無くやるのが私の主義だ」


 いつものケレンミあるシューネでは無い、非常に素直な発言を聞いて、セレネは一瞬ドキッとした。


(……やばいやばい、砂緒を二十代前半にした様な美形の顔で言われて一瞬ドキッとしたよ)

「はぁ? かっこつけだな。せいぜい頑張れや」


 長い時間砂緒と接し続けたセレネは、その美的感覚が完全破壊されていた。



 ―雪乃フルエレ女王の仮寝室、ドア前。


『あのう、色々とフルエレと相談したいのだが……開けてもらえませんか?』

「いえ、何人もフルエレ様の安眠を妨害する事は許しません」

『それ、私が以前に言っていたセリフですが……じゃあ入りますよ』

「駄目です」


 しれっとドアを開けようとしたスナコをライラが止めた。


「貴様女執事風情で、私が本気出せば一瞬で貴方を消し炭にする事くらい訳ないんですよ?」


 スナコは地声で話し、指先からバリバリと雷を発した。


「貴方様はその様な事はなさいません」


 しかしライラは一歩もたじろぐ事無く動かなかった。


「ちっそんなタカを括っていると、あの頃の野生の砂緒さんが復活するかもしれませんよ?」

「どうぞ」

「あーーーいたいた、もうこんなとこでくだ撒いて無いで、私とお喋りなさい。兎幸(うさこ)ちゃんも珍しく起きてるから」

「砂緒いこー!」

「……」


 小声だがメランと兎幸に呼び止められて、スナコは渋々フルエレの寝室を離れた。



 ―再び整備工場。


「はえーな、もう出来たんかよ」


 セレネの目の前に一応胸部装甲が据え付けられた蛇輪が完成した。


「いやまだだ。これから貴方に変形の試験をして頂く」

「はいはい」


 セレネは生返事をすると、そそくさと蛇輪に乗り込んだ。


「レディーが変形する時は皆背中を向けろ!」

「は?」

「機密を見られたく無いという事だ。全員背中を向けろ」

「はぁ」


 シューネの号令以下、整備員達が一斉に背中を向けた。


「えらい素直だな、キモイわ」


 しかしセレネは慎重にゆっくりと変形してみせた。

 キイィイイイイイイ

 甲高い奇妙な音がしたが一応変形は出来たのであった。


「変形出来たぞ」

「いや、今明らかに装甲が擦れる音がした。整備兵達に擦れた部分を魔法グラインダーに掛けさせて、スムーズアップする。微妙なズレが高速の変形で不具合を起こす可能性もある」


 細かい事にまで気配りするシューネに、セレネは少し見直してしまったが、直ぐに思いを振り払った。


(イカンイカン、コイツは砂緒の敵だ……)

「仕事に真面目な事だけは褒めてやるよ。じゃあ、あたしゃこれで」


 これ以上余り長く接したくないのでセレネはその場を後にしようとした。


「いやまだだ。スムーズアップの後は此処から西の浜の海中に潜ってもらって、気密性能の試験をする」

「はぁ? まだあたしにやらせる気かよ?」

「フルエレ女王と君しか変形出来ないのであろう? やってもらうしかないな」


 再び砂緒と同じ顔に真っ直ぐな瞳で言われて、セレネはドキッとした。


(頼むから砂緒と同じ顔はやめてくれよ……)

「へいへい、やりゃあいいんだろう」

「君だけに危険な気密試験をさせる気は無い。複座には私も乗ろう」

「はあ? 何気密ならぬ機密を盗もうとしてんだよ」

「気になるなら目隠ししても良いぞ」


 セレネは一瞬たじろいだが、砂緒と同じ顔で言われて抗う事が出来なかった。


「……話しかけんな」

「了解」


 言いながらセレネは初めて砂緒本人と蛇輪に乗った時に、同じ台詞を言った事を思い出した。そうして胸部装甲の調整が終わり次第本当に二人で西の浜に向かい、無言で気密試験を終えて帰投したのであった……


 ―再びフルエレの仮寝室前。

 コンコン

 ライラは静かにノックした。


「フルエレ様、もう六時に御座います。蛇輪の修理も終わったとか。そろそろ作戦の開始に御座います」


 バンッ!

 ライラが言うと同時にいつも寝坊助のフルエレがドアから飛び出した。


「行くわよ! 砂緒は何処??」

「は? はあ彼もメラン様、兎幸様と仮眠中かと」

「エーッ?? 大人しく仮眠してるんでしょうね!?」

「は、はあ」


 フルエレは走り出したが、スナコは別に変な事はせずに本当に大人しく仮眠していた……

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