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スナコちゃん再々降臨!! ② 砂緒の霊魂……


 ヒヨンッ!! カカッ!

 いつもながら妙な音を発して、千岐大蛇(チマタノカガチ)の真っ赤な瞳が突然光り、光った時には既に光線は兎幸(うさこ)の展開した魔ローンが跳ね返していた。


『うわっ!? 思い出した様に突然撃ち返して来た!!』

『兎幸ちゃんナイス!! てか、人間なら絶対に避けられない攻撃よね』


 凄まじいスピードを持つ剣の達人のセレネでさえ、カガチの光線は避ける事が不可能な速さであった。それを牽制とでもするかの様に、蛇輪(へびりん)かル・ツー千鋼ノ天か乗組員かが影響している謎の誘引を解かれたカガチは、ふわふわとゆっくりと北に向かって移動を開始した。


『なんだか北に向かい始めたけど……いいのほっといて??』

『接近したらまた撃って来るんだろうなあ、やっぱめんどくさいなあ帰るか?』

『私の話聞いてましたか!? アレは私が捨てた物なんですよ、責任感じませんか!?』


 再び帰ろうと言い出したセレネに蛇輪の中の人、いや中の真実の鏡の声が叫んだ。


『お前のせーだろーがっお前が一人で責任感じとけやっ!』

『セレネさん、アレほっといたら多分蛇輪に釣られていつかセブンリーフまで飛んで来ますよ! もし私達のニナルティナの大都会にあんな化け物がやって来たら、フルエレの女王の座なんて吹き飛びますよ! それでも良いのですか!?』

『へっ?』


 真実の鏡の片割れと話していたつもりのセレネだが、途中から砂緒の声に変わった気がしてビクッとなった。


『砂緒か!? メランさん、兎幸(うさこ)先輩、砂緒がそこにいるんか??』


 セレネは魔法通信画面を操作しつつ、必死に聞いた。だが画面中にはわざとらしくメランが立ち塞がっている。


『え? い、いや居ないよー』

『うんうん、いないない』


 操縦席内を映し出す魔法カメラを隠しながら二人がわざとらしく否定した。


『いや、今砂緒の声が……何故画面を隠す??』

『私も砂緒の声が聞こえた気が』

『今ややこしいからお前は喋んな』

『私は砂緒であって砂緒で無い』

『え? イライラするなあもう、来てるなら来てるでいいから、言ってくれよ!』


 セレネは北に向かうカガチを見ながら、もどかしさに画面を叩いた。


『……私はフルエレ女王に追放され、爪を剥がされ毛を抜かれ、辱めを受けリベンジポルノ的な恥ずかしい写真を撮られ、挙句になんだか良く分からない脱出不能な深き穴に突き落とされ死にました……』

『シャシンて何だよ!? お前死んで無いよな? 生きてるよな?? 穴に落とすてフルエレさんヒド過ぎるよ!!』


 冗談が通じないセレネは半泣きになって画面をこすった。


『そして気が付けば霊魂となってル・ツーに取り憑いていたのです……』

『めんどくせえヤツだなあ? つまりル・ツーに乗ってるんだな? そうだよなメランさん??』

『お願い、今は霊魂という事にしてあげて、私の口からは……これ以上は命の危険が』

『おーおー砂緒は霊魂になってしまったーおーおーおー』


 魔法画面いっぱいに兎幸は大袈裟に泣き真似をした……それを見て逆にセレネは安心してしまった。


『わかったよ、砂緒の霊魂とやら、そんであたしらはどうすればいいんだよ?』

『このまま千岐大蛇が北に向かえば内海湖に着いてしまうでしょう、そうなると無限に海水を供給して復活し続ける事になり、倒すのがさらに困難になります。ヤツが急に翼を展開して飛び始めたのは恐らくは水の流れを断たれた渇きの為。だとすれば、もう一度ダムを破壊して水の流れを回復してやれば良いのです。セレネさん、撃ち返しに充分注意してもう一度カガチに接近して誘引し、南の川上にゆっくりと向かいましょう!』

『お、おう? そうだな……』


 突然現れて今までの話を全部聞いていたかの様な、的確な分析と対応策をテキパキと指示する砂緒に戸惑うと共に、内心では凄くホッとして嬉しいセレネであった。


『今嬉しくてホッとして泣いてるんでしょ~~?』

『……メランさん後で血を見たいんですか?』


 図星を突かれてセレネは意図的に怖い顔をした。しかし気持ちを切り替え、すぐさま蛇輪を旋回させて再びチマタノカガチに付かず離れずの誘引を再開した。北に向かおうとフワフワと飛んでいたカガチは、はたっと気が付いた様に蛇輪に誘引され、再び南の川上に誘われて向かい出した。


『砂緒これで良いんか? 顔を見せてくれよ……』

『霊魂なので顔などないのです』

『マジでめんどくせえな』

『そんな事を言い合っている暇はありません、ヌッ様とやらと通信を回復させなさい、蛇輪!』

『元々砂緒と私は割れた一つの鏡、それを大切なフルエレ様と抱き合ったりキスしたり、見守っていた私が内心穏やかであったと思いますか? 砂緒に命令されるのだけはなんだか癪に障りますね、拒否します』

『私もさっきからコイツの話を聞いてて全くピンと来ませんでした。全部このガラクタのホラでは無いのですか? 少なくとも私前世の前世の記憶とかほぼ無いのですよ』

(セレン・ディピティー……)


 ゲシッ!

 セレネは再び思い切り蛇輪を蹴り上げた。


『いーからやれやっ! 喧嘩すんな、二人してめんどくさ過ぎるんだよ』

『セレネ様の命令なら了解』


 蛇輪は渋々ヌッ様との魔法通信を再開した。


『フルエレッ! その作ったばかりのダムを破壊して、すぐに水流を元に戻して下さい!!』


 ダムが完成し、川の流れを変更してヤレヤレと一息付いていたヌッ様組は、突然の砂緒の声に驚いた。


『え? 砂緒?? 砂緒が此処に来てるの??』

『いえ私は砂緒の霊魂、フルエレに追放された私は……』

『え、霊魂??』

『だからめんどくさいわあああ!! フルエレさん今はコイツに話合わせて下さい。とにかく川の流れを元に戻す為にダムを破壊して下さい! そうしないと翼の生えたカガチが北の内海湖に向かってしまうんです!!』


 砂緒に任せると埒が明かないと思ったセレネは必死にフルエレを説得した。


『……追放した私なんかの為に砂緒来てくれてたのね、凄く嬉しい。よく分かったわダムを破壊すれば良いのね!?』


 切羽詰まっていた時に、思いがけず砂緒の声を聞いた雪乃フルエレ女王は涙が滲む程に嬉しくて、すぐにダム破壊を承諾した。しかしそれとは全く逆に寝耳に水のフゥーは複雑な、どちらかと言えば完全に不満と反発する気持ちで充満した。


『どういう事ですか? 今皆で作ったばかりのダムなんですよ、それをいきなり壊すのですか??』

(砂緒? あの嫌な砂緒が来ていたの?? しかもその砂緒の命令でダムを壊すのなんて絶対嫌よっ!!)

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