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スピナ、夜の訪問者


「やっと行ってくれましたねえ、何者達なのでしょうか」

「ほんっとに今頃腹が立って来た」


 折角砂緒と……と思ったが雰囲気はぶち壊しだった。


「猫呼の事を知っている様でしたが、あんなのが知らない内にうじゃうじゃ海を渡って来ているとすれば不気味ですね」


「貴方に……言われたくないでしょうけど、そうね。でも、よく耐えたわね砂緒!」


「当たり前ですよ。相手は良く分からない野蛮人です、文明人の紳士として当然の大人な態度でした。連中きっと他人との距離感が異常な、笑いの絶えない国から旅して来たのでしょう」


「そうね、でも私達も今度は王都の北の海にも行ってみたいなあ……」


 フルエレはにっこり笑いかけた。もうすぐ日が暮れそうな雰囲気だった。


 差し込む夕日で金色の髪や白いドレスが透けて見え、フルエレの華奢なスラッとした肩や手足がはっきり判る。


 砂緒は瑠璃ィの『胸が……』という言葉を思い出す。砂緒は眼球が下を向かない様に必死に瞳を見つめた。


「ん、どうしたの?」

「い、いいえ何でも無いです。深夜になる前に帰りましょうか」

「は~い! じゃあ乗って乗って」


 二人はサイドカー魔輪(まりん)に乗り込むと家に向かって走り出した。


(あの方って誰なんだろう……)


 フルエレは言わなかったが、瑠璃ィの言葉がずっとひっかかっていた。



 来た道と逆に海から南西に進み続けたが、途中天球の庭園は通り過ぎなかった。


 あるいはすっかり夜となり魔輪の魔法ランプの灯かりだけが頼りだったから、気付かずに通り過ぎただけかもしれないとも二人は思った。


 ようやく王都の東面に達してライグ村に帰る為に今度はひたすら南に向かう。


「もうすっかり深夜ですが、猫呼やイェラが心配してるでしょうかねえ」

「二人には悪い事しちゃったね。でも私は来て良かったと思っているのよ」

「私もです」


 途中妙な地獄に突入するまでの記憶が蘇る。


「ま、またどこかに行きたいわね」

「そうですね……」


 ようやく村に入り、南の玄関口に近い冒険者ギルドの館に辿り着く。館の灯かりは消えて村内の他の家屋と同様にシンと静まり帰っている。


「あはは、寝ちゃってるのね。当たり前かあ」


「あの二人が泣きながら玄関前で立って待っていてくれてるとでも思いましたか? 甘いですよ。私達二人はよっぽど何があっても大丈夫だと信じられている証拠です。静かに入りましょう」


「う、うんそうだね」


 二人は魔法ライトを消し、手押しで車庫に入れようとした時だった。急に闇夜から声がした。

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