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カガチ⑬ 再生……ハーフタイム

「見て紅蓮、大きな化け物がパージした両腕を吸収してるよっ」

「本当だ……」


 二人が指摘した様に、トカゲの尻尾の如く本体を逃がした巨大な両腕は千岐大蛇(チマタノカガチ)の複数のアゴでかじられた挙句、最終的に形状を保持出来なくなって大量の海水に戻ってびちゃっと流れて消えた。


猫弐矢(ねこにゃ)さま……これも巨大化に繋がるのでしょうか?」


 フゥーは不安気に推移を見た。


「分からない両腕が無くなった今、僕達にはもうどうする事も出来ないよ……」

「腕が無くとも蹴りがあります! 何なら海まで走って行って水を再供給して腕を再構築します!」


 絶対服従が掛かり、再び動きが鈍化したチマタノカガチを眺めながらフゥーが提案した。


「ちょっと待って操縦者ちゃん!」

「フゥーです」

「フゥーちゃん、このデカブツの腕って水で出来てるの? ならなんとかなるかもよっ」

「腕だけじゃ無いです体全体が海水で出来てます。それにデカブツじゃ無いですヌッ様です」

「わかったわかったヌッさまねっ! 片腕だけなら私がなんとかするわよ、紅蓮後よろしくね!」

「あっちょっと」

「開けてよー」

「……はい」


 シュッ

 紅蓮が止める間も無く、なんとかするという美柑(ミカ)をフゥーはすぐさま外に出した。もしかしたら屈託ない元気印っ子が嫌いなだけかも知れなかった。

 きゅっきゅーーっ

 置いて行かれたフェレットも心配そうだ。


「行っくわよ~~~っはあああああアイスベルクッ連発ッ!!」


 美柑がひらひらとした服とスカートをひらめかしながら、大声で魔法を詠唱すると、空中に巨大な氷の塊が何個も出現した。本来なら敵にぶつけたり凍らせたりするセレネが使いまくっている魔法だが、彼女は巨大魔ローダー・ヌの抜けた片腕の上空付近に集中的に何個も発生させた。


「これを拾ってくっ付けてぇ!!」


 空中に落下する氷の塊は直ぐに処置しないとただ地面に激突するだけだが、猫弐矢はフゥーがどうするのかと見た。


「フゥーくん?」

「やって見ます! ヌッさま氷から腕を再生してっお願いとりゃあああああ!!」


 ヌの約三百Nメートルの巨体でドタドタと助走を付け、軽くジャンプして氷の塊達が一直線になった瞬間に肩をぶつけ、謎のエネルギーなのか一瞬でシュバッと溶けた氷の水が、落ちる事無く巻き込む様な巨大な水流になり、一本の巨大な腕の形に収れんしていく…… 

 しゅるるるるる……しゅばっ!!

 最終的に巨大な片腕が完全に再生され、拳を試しにぐっぱーぐっぱーした。


「凄い……本当に出来ちゃった!!」


 美柑は飛びながら再生した片腕を見て感嘆した。


「むぅ見ろ片腕が再生したぞ……」


 貴城乃(たかぎの)シューネはぎっちぎちの魔呂桃伝説(ももでんせつ)の操縦席内で驚いた。


「へぇーーーしかしいいんですかね? ヌの腕も食べられたんでしょう??」


 同じ懸念を美柑が戻ったヌの操縦ルーム内でも猫弐矢が感じていた。


「しかしカガチがヌ様の再生能力を獲得していたら……」

「いえでもこれはヌ様の中心核があるから成し得る事なのでは」

「だといいよね」

「御免、私今の魔法で疲れたから一旦休憩入るよ! 今の内にどんどん川上に押し上げて行ったら?」


 フェレットを再び肩に乗せた美柑が球体の壁にもたれ掛かって休憩に入ったが、誰も何も言わなかった。


「そうですね、早速攻撃を再開しますっ! 行くわよおりゃあああああああ」


 フゥーが操縦するヌは再生した片腕と蹴りでどんどんと攻撃を繰り返し巨大なカガチはどんどんと川上に押し上げられていく。


『シューネ様、交代要員を乗せたGSXR25が到着しましたぞ』

『うむ、絶対服従を切らさない様に慎重に交代しよう』


 両手を前に掲げながら踏まれない様に進む桃伝説の前に、にじり寄ったGSXR25から掌に乗った交代要員がやって来た。そして順調に操縦者を交代しつつヌをサポートし続けたのだった。



『空が白み始めて来たな……』


 もはや無言になっていたシューネがポツリと言った。


「みろっチマタノカガチが眠りに入りつつあるぞっ!」


 ヌの中で猫弐矢が指差すと、真っ赤に光っていた数多くの瞳がどんどんと閉じて行くのが見えた。


「チャンスよっフゥーちゃん」

「今の内にっヌッさまで連続攻撃して倒します!! はあああああヌッ様メガトンパーーーンチ!!」


 ドカーーーーン!!

 眠りに入りつつあるカガチの首がびちゃっと飛んだ……が、先程まで目を閉じつつあった瞳が再び真っ赤にビカッと光り再び攻撃を再開しようとするので、一旦後ろに引いた。


「しまった起こしちゃった!?」

「いや見ろ、こちらが攻撃を止めた途端にカガチも再び眠りに入ったぞ……」

「でも、やっぱり腕を食べてからまた少し大きくなってないか?」

「今の内に倒した方が?」


 フゥーが再び倒そうとした直後だった、紅蓮が口を開いた。


「申し訳ない、もうこれ以上は限界っぽい。敵が眠り始めるならこちらも休息したい。美柑は?」

「うっ同じく~~」


 いつの間にか魔力補助に戻っていた美柑も同じ意見であった。


『フゥーくん、良く頑張った。我らも限界が近い。此処は一旦仮宮殿に戻ろう。ヌ様という新たな戦力を得た今、よく考えれば良策はあるはずだ』


(あともう少しなのに……)


 フゥーは心の中で悔しがったが、シューネの意見に敢えて反対する者は居なかった。こうして今夜の戦いは終了したのであった。


『皆の衆よ、私の苦労がお分かり頂けましたかな?』


 夜叛(やはん)モズが何故か自慢げに言ったが、誰も何も言う気力も無く家路を急いだ。

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