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カガチ⑩ 神々の戦い再び Ⅱ 助太刀

「モズ様、一旦絶対服従を解除して後退してみませんか?」

「このままだと我らも吸収されかねません!」


 夜叛モズの左右から、中腰で一緒に操縦桿を握る魔力補助用の魔ローダー操縦者が必死に説得した。


「ええい両側から男に言われて鬱陶しいわっ。仮宮殿の中にはまだ多くの避難者が居るでしょうっこのまま撤退すればあそこがどうなる事やら……」

「いやしかし桃伝説が吸収されればどんな被害が出るやもわかりません! それにもともとクラウディア王国の民です、神聖連邦の我らが命を懸ける必要は」

「だまらっしゃい! クラウディア王国が配下となった以上はクラウディアの民も神聖連邦の民に違いはありませんよっ」


 操縦者の一人はハッとして頭を下げた。


「はっ申し訳……」

「ほほほ分かれば良いのですよ」

「あの~~熱い話の途中で申し訳無いのですが、千岐大蛇がぐんぐん迫って来ておるのですが」


 巨大なチマタノカガチは距離感が掴みにくいが、確かにもはや目前にまで来ていたそれは見上げる迫力がある。


「うわーーーお早く御決断をっ! 貴方が秒で前言撤回しても誰も突っ込みませんぞ!」

「そうです勇気ある撤退です!!」

(そんな事言われても~~~!?)


『何をやっているかーーーーーっ!!』


 ガッ!!

 もはや目前に迫って来て、三本程の巨大な長い首を降ろして、桃伝説に襲い掛かって来ていたカガチの頭を、貴城乃シューネの乗る高性能試験機CBR25RRが剣で辛うじて防いだ。しかしサイズ感的にはほぼ自ら大きな口に飲み込まれに行く様な物であった。


『シューネ様!? 一体どうなされるおつもりですかっ? 先程も一機取り込まれたばかりですぞっ』

『いいから一旦引け、桃伝説が取り込まれればもはや手が付けられんぞっ』

『だとしてもシューネ様が!?』

『キモイな……』

『キモイは無いでしょうがーーーっ! 取り敢えず飛び降りなされ!! 早く』


 見る間に先程のGSXR25と同じ様にシューネの機体まで取り込まれて行く……


『飛び降りてどうしようと言うのだ……これも私への罰かも知れない……』

(姫乃……)


 何故かチマタノカガチが現れて以降、すっかりやる気が失せたシューネはこのままカガチに取り込まれて死んでも良い様な投げやりな気持ちになっていた。


「鳳凰の舞!!!」


 ズシャアアッッ!!

 が、シューネのCBR25RRの機体の大半が取り込まれそうになった直前、突然現れた紅蓮アルフォードが剣から炎を吹き出し、おまけに体中から黄金の粒子をまき散らしながら、カガチの身体をジャンプして駆け上がり、シューネの機体を丸のみにしようとしていたカガチの頭の一つを斬り落とした。


「もう一度っっ!!」


 さらに機体を横から喰おうとしていた頭ももう一つ斬り落とした。

 ドシャーーーンッ


『若君!? 何故此処にっ!?』

「何故ここにって一緒に船に乗ってたろうがっ! 何してるいいから降りろっ!!」

「ハッ」


 聖帝家には絶対服従のシューネは若君に命令されたので、約二十Nメートルの操縦席から、何も足場も保障も無く簡単に飛び降りた。例え地面に激突しようともはっきり命令された以上、聞く以外に無い。


「えいやっ」


 ヒューッ

 本当に何の足場も無くシューネは落下した……


「危ないっ!」


 と、地面に激突する寸前でも無い、そこそこの高さの時点で横からビューッと飛んで来た美柑ノーレンジが肩に抱えてキャッチして掴んだ。


「あ、美柑殿かたじけない」

(うっやはりこの子も雪乃フルエレに似て美しい……側女に欲しい)


 自分より小さな女の子に肩に抱かれながら厚かましい事を考えるシューネであった。


「うっ重いシューネさん、今邪な事考えてたでしょっ!」

「い、いやっ」

(やはり女王の妹、勘が鋭いのか……)


 誰でも分かる事であった。そのまま美柑は渡り鳥の様に立ち尽くす桃伝説の操縦席ハッチの前にとまった。


「開けろーーっ! この子を入れてあげてっ」


 ガンガン!

 可愛い顔に似合わず美柑がガンガンとハッチを蹴り上げて、慌ててモズはハッチを開けた。


「おお、シューネ様!」

「じゃ、この人を頼むよ!!」


 美柑は御払い箱の様にシューネを操縦席にぽいっと投げ捨てた。遂に狭い操縦席内は屈強な男四人でギッチギチになってしまった。


「若君は化け物ですか!? あの金色の粉は一体??」

「コレ、不敬であるぞ。若君と美柑殿に助けられたのだ。このまま四人で絶対服従を再開する!!」


 しかしモズが驚くのも無理は無かった。美柑が飛びながら攻撃魔法で牽制したり補助魔法を掛け、その合間にも紅蓮が焼石に水とは言えカガチの数個の首を落として回っている。


「はあはあダメだっ美柑、このままだとこっちも疲弊してもたないよっ!」

「そりゃそうよ!! 山よ山、こんなの生身で相手にする方がどうかしてるよっ!!」


 その直後、再び桃伝説が両手を前に突き出した。


『若君、御引きを!! 男四人ギッチギチ絶対服従百連打ッッ!!』


 シュパパパパパパパパ!!!

 再び妖しいピンク色の玉を無数に放出して、チマタノカガチに当てまくった。


「キュピーーーン!!!」


 先程まで掛かり辛くなっていた絶対服従が、男四人の力で再びハッキリと掛かった感触を得た。


『よし掛かった!!』


 くおおおおおおおおーーーーーんんん!!

 しかしカガチも必死に抵抗を開始した。多数の首をくねらせ前進しようと体をビク付かせている。


『掛かったのか掛かってないのかどっちなのですか!?』

『五人で乗るしか無いのか……若君に乗って頂こう』

『い、いやミカ殿? に乗って頂くというのは!?』

(ダレ?)

『全く邪な気持ちは無いが賛成する』


 等と無駄口を叩いている内にカガチは絶対服従を破りそうな雰囲気になって来た。


「何をやってるんだっ!! このままだと同じ事の繰り返しだぞっ!!」


 ズズーーン、ズズーーン!!

 紅蓮が叫んだ直後、地響きの様な足音がしてカガチばかり見ていた皆が後ろを振り返った。知らぬ間に背後から遂にチマタノカガチと同じくらいに巨大な魔ローダー・ヌが接近していた。


『カガチはこのヌで押し返しますっ! 行くよっヌッ様!!』

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