来ちゃった……Ⅱ 中 部屋で……
―新ニナルティナ港湾都市中央駅近辺、冒険者ギルドビルディング。
このレトロでモダンな外観のビルには今や廃れた冒険者ギルドと、猫呼クラウディアが取り仕切る裏稼業を生業とする闇ギルド事務所が入居している。最上階七階にはその猫呼のオフィスがあり、そして地下一階には雪乃フルエレ女王が身分を隠して働く、喫茶猫呼がひっそりと営業している。
「確か七華はもう此処の事は詳しいのですよね?」
何故か七華はぽっと赤面した。
「え、ええ、実は砂緒さまがメドース・リガリァ征伐に出られている間に、入れ違いに此処でしばらく働いてたのですわ」
言いながら七華は豊かな胸の谷間にチョコレートをまぶしたりと、謎のサービス過剰接客をしていた事を思い出して気恥ずかしかった。それだけ順応しようと必死だったのかもしれない。
「OH~七華のメイドさん姿、さぞや艶やかだったでしょうなァ」
「恥ずかしいですわ……でもいつでも着て良いのですわよ、プライベートで……」
(ごくり。ププ、プライベートですと?? 早速やってもらわねば)
「私も、私も着ますっ!!」
何故か九歳の妹リコシェ五華も勇気を出して言った。
「ハハハ、何か勘違いしていないかな。そんな事より此処からはまさに命懸けぞ。喫茶猫呼の少し離れた所にVIP住人専用の直通魔法エレベーターがあります。それに乗って一気に私の部屋まで行きますよ」
(よくぞ言った妹御よ)
言うと、砂緒は特殊部隊の隊長の様に掌で複雑なサインをしつつ、七華五華姉妹を後ろに連れてEVの入り口まで誘導した。
「EVクリアー!」
「クリアー?」
「EV搭乗!! さっ早く」
アクション映画の主人公さながらに左右を確認した砂緒は、素早くEVに彼女たちを乗り込ませた。
チーーン!
レトロな外観のエレベーターが砂緒達の豪華な部屋が並ぶ六階に到着した。
ガラガラガラ……
「シッ!」
不用意にアコーディオンの扉を開けた七華を叱る砂緒。
「申し訳ありません」
「いいえ、此処はフルエレやセレネの部屋もある最も危険なゾーン。私が安全を確認します、後ろから付いて来て下さい!!」
「はい」
「はい!」
かさかさとゴキブリの様な動きで砂緒が先行し、後から二人が付いて行く。
「廊下クリアー! 行きます」
遂に砂緒は自室の前まで来た。此処までは恐ろしく順調に来た。しかしドアを開けた瞬間、イェラやセレネが恐ろしい顔で仁王立ちしているのではないかと脳裏を過った。
「ふぅふぅ、身を屈めて下さい。此処に最後のトラップがあるやもしれません。犠牲は私一人で充分です」
「砂緒さま……」
ガチャッ
砂緒は鍵を開け静かにドアを開けると、ささっと侵入して魔法ランプのスイッチを上げると左右を確認した。
「玄関クリアー、突入して!」
「はい!」
三人が部屋に吸い込まれると静かにドアを閉めた。
カチャッカチャッ!
すぐさま二重ロックを掛ける砂緒、他の部屋にも人影は無く最後まで抜かりは無かった。
(おっしゃあああああ!!)
遂に勝利の瞬間だった。
「七華、もう一回抱き締めて良いですか?」
「え、は、はい……わたくしもそう願っていました」
言った途端に二人は玄関で抱擁しあって激しくキスを始めた。
「むーーーーーーっ」
が次の瞬間、二人の視線の先に激しく頬を膨らませる五華の可愛い顔があった。
「あっと」
「まあはしたないですわ五華」
「もう、二人とも私の事忘れていますよっ!」
「ま、まあ入りましょう。ハハハ窓を開けて空気を入れ替えましょうか」
ガラガラガラ。
大都会である新ニナルティナでも高い方である六階の窓から新鮮な空気が入り込む。
「ふぅ、疲れましたわ……それに少し熱いですわ」
ぱさっしゅるっ
サングラスを外し頭に巻いていたスカーフを外し、そして厚ぼったい上着を脱いだ。ふわさっと空気が揺れ七華の汗の匂いが少し混じった香水の香りが部屋に漂う。そしてその下にはいつもの七華のサービス過剰な胸元が見え過ぎなセクシーな衣装が現れた。
「七華……」
「砂緒さまが喜ぶと思いましてうふふ」
「むーーーまたすぐに二人の世界に入ってしまうのです!」
砂緒は七華の姿を見て一瞬で違う世界にトリップしてしまったのだが、すぐに五華の声で現実に引き戻された。果たして五華まで引き入れた事は正解だったのか悩み始めた。
「わたくし……良ければお風呂に入りたいですわ」
(はやっ!)
砂緒も戸惑う程の七華の積極姿勢だが、すぐに彼はちらっと五華の表情を見た。
「私も、皆と入ろうかな……恥ずかしいです……」
(何ですと!? 今なんと言いましたか、これはすぐさま飛びついて良いんか? トラップか)
「五華良いのですね? 王女としての覚悟はあるのですね?」
「うん、お姉さまと砂緒さまと一緒になりたいの……」
「ですわ、よろしいかしら?」
姉妹そろって砂緒を見た。
「ああ、もちろんさ。私は二人揃って平等に愛するよ、さっ三人で一緒にお風呂に入ろう」
「ええ」
ちなみに自動魔法給湯システム完備なので二十四時間いつでも入れる様になっている。
「では姉のわたくしが……最初に脱ぎますわ此処で」
「此処で??」
砂緒はリビングの真ん中で脱ぎ出すという七華に驚いた。
「背中のジッパーを降ろして下さる?」
「背中の、ジッパーを?」
「そうですわ」
ごくり……
生唾を飲みながら砂緒は震える手で七華の美しい背中のジッパーを下げようとした。
「だめええええええええええええええ!!!」
が、その次の瞬間に終焉は訪れた。突如開いた窓からUFOに雲梯の様にぶら下がって飛んで来た兎幸が、綺麗なフォームでジャンプして砂緒を蹴り飛ばし、彼は反対の壁までいきなりブチ飛ばされた
「ぐはああああああああ!?」
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