兎幸かわいい導き手と、瑠璃ィなんか邪魔者が来た…
「兎幸は魔ローダーなんて知っていますか?」
「……魔ローダーですか、珍しいですね。最近見ない……おや、貴方のポシェット」
兎幸が雪乃フルエレの腰のポシェットを指さす。
「ん? これかな? フルエレが無造作に七華から預かったヘッドチェーンを見せる」
「ぞんざいに扱い過ぎでしょう。猫呼が言う様に本当にズボラですね」
あの時以来、内心芽生えた七華への不信からぞんざいに扱ってしまっていた。
「この宝石の部分……もともと魔ローダーの始動鍵。後で加工してるだけ。大事にして……」
兎幸はヘッドチェーンをまじまじと見つめながら言った。
「そうなんだ!? びっくりだよ……私、魔ローダー乗れるかな?」
「貴方の魔力なら……寝転んで、サンドイッチ食べながら……でも動かせます」
「本当!! やった私でも動かせるんだ!!」
ぱああっと明るくなるフルエレ。乗り物の話題でフルエレを元気付ける作戦が成功した。
「この子なら本当にやりそうなので変な事吹き込まないでもらいたい」
「もし……また知りたい事があれば、私教える……聞きに来て下さい」
「はい、そうします!」
「私もここにはまた来てみたいですよ」
二人は兎幸に手を振ると、その場を後にしようとした。
「……待って下さい。言いたい事があります……」
「え、なんでしょうか?」
少しどきっとして二人は振り向いた。
「……石の扉の修理代を……この子が後日取りに行きます」
戻って来たUFOが兎幸の横に漂っている。
「うっ」
「えー? 友達になったと思ったのに~」
「……友達と器物破損は別……」
でも兎幸の顔はかすかに笑っていたので、魔法機械人形ギャグだったのかもしれない。
天球の庭園を出ると、白いモヤがかかって急激に建物が見え難くなる。
「お客さんに来てもらいたいのか、隠したいのかどっちなんでしょうかね」
「さあ~養分吸収したから、しばらくは来なくていいって事じゃないかしら」
「怖いですね、その考え方。しかしフルエレは凄かったのですね、未来が完全予知出来たり、未来その物を変えてしまう事が出来る程の魔力ですか? 私の雷攻撃なんて霞んでしまいましたよ」
砂緒はフルエレが喜ぶと思って褒めてみた。
「……だけの量の魔力って事でしょう。実際にはそんな事出来る能力は無いの。もうその話は嫌」
やはりこの話題はフルエレはかなり嫌なのか、あからさまに顔色が曇って不機嫌になっていく。以前の砂緒なら無配慮にずけずけ続けたかもしれないが、そのような事はもう出来なかった。
「そうですね、これも二人だけの秘密にしましょう。そうだフルエレ、このまま突っ切って東の海とやらに出てしまいませんか? 私は横に乗っかるだけでアレですが」
正に困った時の乗り物頼みだった。
「まあ素敵ね! 私も同じ事考えてたの。帰り深夜になったって別にいいよね」