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洋上の極秘会談 下 猫弐矢の想い

「ジグラト?? 何ソレ」


 有未(うみ)レナード公はポカーンとした。


「ジグラトとは石で葺いた人工の丘だ。シューネが言っている物はその中でもかなりデカい奴です。シューネは本当に巨大建造物が好きだなぁ」


 猫弐矢(ねこにゃ)が助け舟を出した。


「スマン、話が見えん。なんでそれが神聖連邦帝国との友好促進になんだよ」


 レナードは眉間にシワを寄せて聞き返した。


「民と王侯が心をいちにして石を運び縄を引く、そうして神聖連邦帝国と同じ手法、形状でジグラトを建設する……つまりそれは神聖連邦帝国の民とも聖帝陛下とも心をいちにする印にて、さらなる友好促進になるのです」


 シューネは両手を広げ目を閉じて陶酔しながら言った。


「……難しいな、なんか宗教っぽいぜ。でも……お高いんでしょう?」

「それなりに費用と年月は掛かります。だがしかし、我らの建築技術をそっくりそのまま伝授いたしますれば、かなり効率的に建設出来る事保障致しますぞ」


 シューネはぐぐいっと身を乗り出してレナードを言葉で洗脳に掛かった。もちろんそれなりの魔法防御を掛けているレナードに対して、速攻でバレる魔法や術は使っていない。


「うーーん、なんかそんなモンで戦争にならないなら割とお得かもな?」

「ええっジグラトを作れば貴方の権威もうなぎ上りですぞ!!」

「ほうほう……」


 なんだかどんどんシューネの言葉に乗せられるレナードを見て、秘書眼鏡も猫弐矢も呆れて汗を流した。


「レナードさんとやら待ってくれ、冷静に考えて下さい。そのジグラトを建ててしまうと、それはもう神聖連邦帝国のフランチャイズに入ってしまう事と同じ、つまりもうセブンリーフの同盟の一員から神聖連邦の一部に組み込まれてしまう事を意味してるんだよ。このシューネという男はやたら高層神殿やジグラトを建てるのが好きなだけじゃない、どこまでも忠実な聖帝陛下の家臣なんだ」

「そ、そうなのか?」


 猫弐矢の警告にレナードは少し冷静さを取り戻したが、シューネは特に怒る事も無く、猫弐矢の言わせたいままにした。


「君も妹の猫呼(ねここ)と親交があるなら少しは聞いているかもしれないけど、僕の国クラウディアももう少し高圧的に神宝の献上を勧められて、祭祀の変更を余儀なくされて高層神殿を建設してくれると約束してくれたは良いが、一向に建設が始まる気配も無い。お陰でクラウディアは我が兄と僕とで二つに分かれる事になってしまった」

「ああ、そうみたいだな」


 レナードは落ち着く為に少し紅茶を飲んだ。


「幸いな事に衰退中のクラウディア王国と違い、セブンリーフ島は大きく強い。それに海に阻まれた地理的有利とまだまだ時間的余裕もある。どうかあの可愛い女王様とセレネくんと砂緒くんと、その他の皆ともじっくり良く話し合って協力して今後の方針を決めた方が良いよ」


 レナード公はごくっとつばを飲み込んでから小さく返事をした。


「そ、だな」

「あっはっはっ、猫弐矢くんはどっちの味方なのかな? やっぱりクラウディア王国の事で我々をまだ恨んでいるのかな」


 突然シューネが大声で笑ったが、不思議と誠実な猫弐矢に対する怒りは無い様に見えた。


「どっちの味方でも無いしどっちも悪とも善とも思えない。大が小を喰う、それはずっと歴史上続いて来た戦国の世の習いだ。けれどセブンリーフ島にも長い歴史と伝統がある以上は、最後までプライドと平和を保つ道を歩んで欲しいと思うだけさ」

「猫弐矢さんかあんたいい人だな、今度猫呼ちゃんに言っとくわ」

「あぁ、それなら心の優しい猫呼が誰かにいじめられていないか見守って欲しいどうか頼みます」


 猫弐矢は頭を下げた。


「……どっちかって言うと、いじめられる方よりいじめる方に近い気がするぜ」

「え?」


 猫呼は猫兄達の前では猫を被っていた。


「何にしても今日どうこう決める事は出来ねーな、俺はもう帰るわ。だがなこれだけは言っておくぜ……お名刺交換出来ますか?」

「はっはっはっもちろんですとも、ドーモドーモ」

「どーもどーも」


 レナードとシューネは腰を折って名刺を交換した。



 ―秘密会談が行われた船室の外。


「貴方達、何たむろしてお喋りしているの? お掃除や洗濯とかする事沢山あるでしょう!」

「ハッ、申し訳ありませんフゥーさま!!」


 油を売っていたメイドさん達は蜘蛛の子を散らす様に消えていった。



「何? フゥーの奴シューネ様の女だからって侍女頭気取りなの??」

「ベッドに裸で猫耳加えて三人で寝てたらしいわよ」

「最悪、不潔よっ!」


 そんな事実はもちろん無い。


「わ、私はもっと掃除を続けて参ります。では……」


 一人の美少女メイドさんが頭を下げるとあらぬ方向に駆け出した。



 ―船底の倉庫。

 メイドさんは大きな樽を叩いてパカッと蓋を外すと、中から紅蓮アルフォードが顔を出した。


「どうだった!? 潜入調査面白かった!?」

「貴方の知り合いだから最終的に見つかっても殺されないって分かっててもドキドキだったわよっ」


 冷や汗を掻く美柑(みか)ノーレンジを見ても紅蓮の笑顔は消えない。


「僕、潜入調査の楽しさに目覚めてしまったんだよ。それで……今度遂にまおう城に潜入しようかと思うんだ……そ、それもメイドさんに女装して、どうかな?」


 紅蓮は目を輝かせて問うた。すると美柑はそっと彼の手を取って天使の様な微笑みになって言った。


「今度……脳の魔法病院行こ?」

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