謎の物体がっ、氷の博物館!!b
「……モンスターが絶滅しても良いように……展示してます」
「貴方名前が無いなんて可哀そうだよ。兎幸って名前はどうかしら!?」
「うさこ……安直……嬉しい。私兎幸……でもなんかそんな名前で……呼ばれてた気もする」
「?」
「嬉しいのか。猫呼が言ってた天球庭園とはここの事だったのか、なかなかに風流な場所ですねえ」
「ここに人をいっぱい呼べば、いいかもしれないわね!」
「嬉しい……でも手遅れ。昔は人がいっぱい来ました。人々から少しづつ魔力を貰って動いていました……でも忘れ去られて……もう魔力が残り僅か。あと数日で崩壊……します」
「それは大変ですね。これだけの施設を無下に崩壊させるなどもったいないですよ。確かフルエレは魔力がありましたね?分けて上げられませんか?」
「もちろんいいよ!」
フルエレが即座に了解した。
「……だめ。貴方干物になります……普通の魔術師何人分も魔力が要ります」
「じゃあ、少しだけでも送ってみます! 駄目そうなら途中で止めちゃうし」
そう言うとフルエレはゆっくりと兎幸に近づき、両手を握った。確かにその手は冷たかった。
「行くねっ」
バシッ!! フルエレと兎幸が光り輝く。
「きゃっあっあっあっあ~~」
兎幸の目や全身が光り続け、雷に打たれた様にびりびり震えている。
「お、おい大丈夫ですか!? なにか悩ましい声を出していますが」
「私の方は何の手応えもないですけど……」
苦笑いするフルエレ。
「も、もういいです……大丈夫です。20年分程頂きました……」
魔力を送られた方の兎幸が、がくがくでフルエレはけろっとしながら手を離した。すると突然ぱっぱっと天井の魔力ライトが点灯して行き、高い天井で広い空間の奥まではっきり見える。
「うわ、割と魚介類率が高いですよ。はっきり見えなかった方が幻想的でしたね」
透明な氷の床を見て廻る砂緒。
「……貴方おかしいです。こんな超大魔力普通無いです……これだけの魔力があれば、未来を完全予知したり……あるいは見えた未来を変えたり……出来ます。禁断の最高位の魔法です」
信じられない存在の様にフルエレを見る兎幸。対してフルエレは急に顔が曇る。
「そんな事出来る訳ないでしょう……私そんな能力無い」
「ここはどうやらおかしな連中に踏み荒らされてはいけない場所の様だ。兎幸が寂しく無い様に、信頼のおける人々にだけ教えます。秘密の庭園です」
「……有難う。とても嬉しい」
砂緒は先程までの元気なフルエレから一転、俯いて黙り込んでしまった姿が気になった。
過去に書いた内容を忘れて、雪乃フルエレが新たに命名した「兎幸」という名前を、のちのち100年前の知人・大猫乃主が呼ぶという矛盾が発生してしまっています。
それを回避する為に、雪乃フルエレはかすかに残ってた占い能力で、偶然兎幸の真の名前を言い当てたという無理やりな後付け理由にします。兎幸はこの時点でド忘れしているという事にします。
2024年5月9日修正