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出会い スターマインb 崩壊


「ヤバイっ! ぐあっ轢くっっ!」


 若い運転手は叫んだ。深夜止まらない暴走大型トレーラーの先の暗闇の中、突然ヘッドライト先に浮かび上がるコンビニ袋を持った黒髪少女の驚愕し凍り付いた顔。いつもの様に深夜のコンビニで買い物を終えた少女は、ガードレールの継ぎ目からショートカットして無理な横断をしていた瞬間だった。


 若い運転手はとっさに効かないと判っているブレーキを、条件反射で足が折れそうな程の物凄い勢いでベタ踏みし、同時にハンドルを少女が現れた真逆の左に全力で切った。



「いやっ」


 それは全て一瞬の出来事だった。眩しさと恐怖に少女が立ち尽くすまま顔を片手で覆った時、キキキーと甲高い大きな音を発して何故か突然復活したブレーキとハンドルの作用で、右側のタイヤが重力を感じさせない動きでふわりと浮き上がった。


 そのまま巨大なトレーラーはゴロリと左に横転し暗闇にバチバチと火花を散らしながら、ザザザギャギャギャーと複雑に鉄と道路が擦れ合う甲高い音を響かせ滑り抜けて行く。

 ズザザザザーーッ


「うそ……」


 少女のぎりぎり鼻先を普段は見えない巨大なトレーラーの腹側が流れて行った。



 が、事はそれだけでは済まなかった。荷台に載せられていた【大型のロケット】を固定していたワイヤーも拘束台も簡単に破断して、そのロケットがトレーラーから分離してバウンドしつつ道路とこすれる車体を追い抜かし猛烈にすっ飛んでいく。


 そしてロケットは、運悪く事故現場真横にあったリニューアル工事中で覆いをしてある【砂岡デパート】の一階入り口付近に殴り込む様に突入した。

 ザザザーーッドシュッ!!


「伏せろっ!」


 いつの間にか物凄い運動神経で右側のドアから飛び出し着地していた運転手と上官の二人。訓練された素早い動きで呆然と突っ立ったままのコンビニ袋の黒髪少女をタックルする勢いで抱き着くと、男二人でガバッと覆い被さり当然起こるだろうと予想する大爆発から身を挺して庇った。


「ギャーーー何!?」



 カッッ!

 少女が叫んだと同時だった一瞬真昼の様な激しい真っ白い閃光の直後、鈍い地響きの様な腹にズンと来る凄まじい大音響と振動と共に大型ロケットが大爆発した。3人からは横転したトレーラーの腹で遮蔽され見えないが、運転席のフロントガラスは一瞬で飛散していた。


 ドドーーーン! ドドドドドドドーーン!!

 何回にも渡って凄まじい轟音が繰り返される。


 男二人は爆発物へ必死に背中を向けて少女を守っていたが、そのかすかな隙間から少女は夜空を見上げて現実感無く他人事の様にぼんやりと一部始終を眺めてしまっていた。その爆発は、ロケット燃料だとか火薬だとかのただのランダムな明滅というよりも、何故か花火大会の最後の打ち上げラッシュ【スターマイン】の様な不思議な色とりどりの閃光が鮮やかに光り輝く物に見えてしまった。


(綺麗………………)



 少女が不謹慎な感慨を抱いていた時、大正時代に建設され創業百周年を迎えていた、まるでギリシャ神殿の様と言われていた大理石造りの豪華な砂岡デパートは、大轟音と振動と爆炎の中であっさり完全崩落していた。


 ガラガラガラ……グシャッ

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