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フゥーの旅立ち ③ 初会談、ギルティハンド再び……

『はぁ? 今頃シャル如きに何が出来るのやら』


 スナコちゃんは渋い顔で肩をすくめた。


「……のォーーーギルティハンドッッ!! 二本立て!!」


 シャルはポケットから出した両手を前に突き出した。するとその両手は、ト〇ック劇〇版2の阿〇寛、もしくは怪〇くん、もしくはろくろっ首、もしくはつき立ての餅の様にみにょ~~~~~んと勢いよく伸び出した。


『くそっ剣は無いのか剣は!?』


 四つん這いで自らが破壊したSRVの残骸の中から剣を探すが、殆どの剣はウェカ王子が使い切りなかなか見つからない。メランの後ろに居た控えのSRV隊の残骸の中にはまだあるかも知れないが、蛇輪とル・ツー速き稲妻Ⅱが仁王立ちしておりそこには行けない。と、その金輪(こんりん)の背後にシャルの伸びた腕がぐんぐんと迫り、遂には足から背中を這う様に伝って行く。


「お、おいみっともないぞ……もういいじゃないかっ」

「駄目だっ! まだまだ諦めんぞ!!」

「シューネさま……」

 

 そんなやり取りの時にギルティハンドは魔ローダーの気密性の高いハッチの顕微鏡レベルの隙間からぴょろりんと中に侵入した。


「きゃーーーっ!?」


 最初にフゥーが不審な両手を発見して叫び声を上げた。それに釣られてシューネは思わず金輪の腰を上げて周囲を警戒した。


「な、何だこれは!?」


 ブチッッ

 その瞬間、掌に目でも付いている様に正確にシューネの首にぶら下がった姫乃ソラーレからの露店のペンダントを掴むと無理やり引きちぎった。


「あっ貴様っ返せっ!!」


 シューネが叫んだ時には既に遅く、一本目の手はペンダントを掴んだまま抜け出て行ってしまった。


「まだ一本残っているぞ!!」


 猫弐矢(ねこにゃ)が腰の剣に手を掛けた直後、残りの手は緊急脱出ハンドルを引いた……

 カチカチカチ……バンッシュバッッ!!

 小さな魔法爆発が次々に閃き、最後に金輪のハッチが飛び去って行った。直後、残りの手もあっさりと引いて行った。

 パンパン

 素早くペンダントを自分の首に掛けると、シャルは自慢げに手を払った。


「ま、俺の実力ならざっとこんな物だなっ」


『動くなっ!!』


 皆が吹き飛んだハッチであっけにとられた瞬間、メランが護身用のル・ツーの腰にぶら下がった戦闘ナイフを一瞬で抜き、開け放たれた操縦席に突き刺す勢いで切っ先を突き立てた。


「完全に勝負あったな……」

「そうですね」


 セレネに肩を貸すイェラが呟き、彼女も同意した。その時だった、突然雪乃フルエレ女王が砂緒に頼る事無く自ら蛇輪を動かし、ル・ツーの横に並ばせると腕を金輪の操縦席近くまで伸ばしハッチを開けてするすると滑り降りた。


「フルエレ危ない! 何するですかっ」


 勢いでスナコちゃんもスカートをひらめかしてフルエレの横に立った。


「出て来なさい!! この魔ローダーを動かしていた三毛猫仮面ですか?? 早く姿をお見せなさい!!」


「フゥーくん隠れて!!」

「猫弐矢さまっ」


 とっさにささっと猫弐矢とフゥーは操縦席の壁に張り付く様に隠れた。直後、白い仮面を装着した三毛猫仮面三世ことシューネがゆっくりと姿を現す。


「フフフ、これはこれは麗しいお姫様……うっ姫乃……殿下?」


 最後まで負けず嫌いのシューネは余裕のポーズで出て来たが、対面した金髪の少女雪乃フルエレの顔を一目見て驚いた。一瞬魔呂の画面越しに見た以上に本当に姫乃にそっくりであった。


(何だ……似ている等と言うレベルでは無い。髪の色こそ違うが姫乃に瓜二つではないか……これがたぶらかしの姫?? しかし15歳か16歳か……ふふっ丁度私と姫乃が思春期でお互いを意識して遠ざけ始めた時期……あの頃の気持ちに戻ってしまう様だ、なんと初々しくカワイイ……イヤイヤそんな場合では)


 パァーーーーーン!!

 シューネがフルエレの現実離れした美しさにトリップしている瞬間、突然フルエレは躊躇無く背負っていた魔銃ライフルを構えてシューネの白い仮面の端っこを正確に狙い撃ちした。仮面は粉々に砕け散り、シューネの頬には一筋の血が流れた。


(ぎょっ!?)


 壁に隠れる猫弐矢とフゥーは血の気が引いた。


「無礼であろう! 我らの大切な式典を穢し、あまつさえ仮面の姿で出てくるとは何事かっ! 今すぐ跪き頭を下げよ!!」

(うわっ本当に砂緒に似てるわねえ……)


 言いながらフルエレもシューネと同じ思いであった。


(この娘、躊躇なく撃った……しかもまだ全くブレる事無く正確に心臓を狙う姿勢、そしてこの目、人を殺した事のある目だ。ハッタリでは無い、それに姫乃と同じ顔と声で言われると……)


 直後、シューネはスッとその場に跪いた。


「これは申し訳ありませぬ。我としては式典に華を添えようと思ったまで。決して悪意は御座いませぬ。しかしながら雪乃フルエレ女王陛下にご不興あらば謝罪致しましょう」


 シューネは素直に頭を下げた。


(信じられない、シューネが頭を下げた)

(シューネさま……)


 しかしすぐに後ろに控えるスナコちゃんが出て来た。


「いやそれでは大怪我をしたセレネが済まない。早速拘束して拷問しまくりましょう!」


 そのままスナコちゃんは指先をわきわきさせて眩い稲妻を放出させた。


「す、砂緒さまフルエレ様、どうぞお止め下さい! 後生で御座います!!」


 その瞬間、突然操縦席の奥から姿を現したフゥーはシューネの前に立ちはだかった。

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