フルエレ復活 中
「うぐっしっかり覚えてやんの……細かい子供ですね」
『砂緒さま?』
『任せて下さい』
『何の話だふざけるなっ!!』
シュパパパパパ!!
ボウッボウボウボウッ!!
抱悶ちゃんの乱入に怒った貴城乃シューネがなおも追加で光剣を発射するが、抱悶はノールックで事も無げに次々に燃やし落としていく。
(くくく、良いですよ抱悶ちゃんその調子です……)
『抱悶ちゃん聞いて下さい!』
バシャッ!
スナコ姿の砂緒は上側のハッチを開け、かざした掌の上に乗った。びゅうっと風が吹きスナコちゃんの可愛い三つ編みの髪型と白いヒラヒラのドレスがなびいた。
「なんつー恰好しとるんじゃ」
『抱悶ちゃん聞いて下さい! 実は……実は全部セレネが悪いんです!!』
「なんじゃと!?」
『だから痴話喧嘩をするなーっ!!』
シュパパパ!!
ボウボウボウッ!!
シューネがさらに怒って光剣を乱打してもやはり次々落とされていく……
『実はあの時もっと抱悶ちゃんと一緒に旅をしたいねーウフフと話していた所、突如嫉妬に狂ったセレネが、嫌ゞ二人きりになりたいと泣き叫び始めて……彼女は一度ヒステリーになると手が付けられないんです』
スナコは悲し気な顔をして首を振った。
「なんという事じゃあのアマ……」
『ううっそこでせめて抱悶ちゃんが寝ている間にそっと放流しようと……抱悶ちゃんはあら〇ぐま〇スコゥの最終回観た事ありますか? 抱悶ちゃんの可愛い手を離した時、私のハートは叫び声をあげていました……くっ』
スナコは涙を溢れさせ目頭を押さえた。
「すまなんだ砂緒、そなたそれ程ワシの事を??」
『ええ、抱悶ちゃんはいつでも私の嫁候補筆頭ですよ……』
言いながらスナコは頬を赤らめ遠い目をして空を見つめた。
「な、なんと! 気が早過ぎるのじゃ砂緒~~。でも許せんのはセレネじゃああーー!!」
『だ、だからやめろーーーっっ!!』
シュパパパパパパパ!!
今度は背中の黄金の輪から360度周囲全てに向けて全力で光剣を放った。
『危ない!?』
「きゃーーーっ!!」
シュボッボボボボボボボ!!
しかしやはり直後に全て抱悶に燃やされ消されていく。
『なんだと、これ程の力なのか?? 生身で魔ローダーの、この神聖連邦帝国四旗機の金輪の攻撃を防ぎ続けるか?』
「シューネ、潮目が変わったここで帰ろうよ」
今度こそ猫弐矢は決断を促すつもりで強く肩を掴んだ。
「ふぅ~~何だか良く分からんが本当に助かったらしいナ、ははは」
「いやー良かったですー、帰ったら本当におヨメさんにして贅沢三昧させてくれるんですね?」
一瞬の沈黙があった。
「……ン、何の話だメアー?」
「……テメー??」
メアの目がカッと怪しく光った。
『ささっ抱悶ちゃん、この蛇輪に乗るのです。そして一緒に戦いましょう!』
スナコは掌の上で両手を広げた。
「何でじゃ?」
『え? あのフォルモサ島沖の時の様に早く乗って下さい』
「嫌じゃ! そんな事よりワシはセレネを探して来る! 懲らしめてやるわい!!」
そのまま抱悶ちゃんはビューンとザ・イ・オサ新城の宮殿に向けて飛んで行った。
『あっ……』
スナコちゃんが飛び去った抱悶に向けて力なく腕を伸ばすが時既に遅しだった。ふたたび風が吹いてスナコの三つ編みが虚しく揺れた。
『おや、どうしたのかね? 頼もしい加勢は飛んで行ってしまった様だね!』
シューネの声に自信と力強さが戻った。
「メア……やっぱりもうダメみたいだ……」
「そんな上がったり下がったり出来ないわっ! もう私が動かして逃げます王子は黙ってて下さい!」
「あ、こ、こらメアー勝手に動かすナ~~」
「生きるの! 生きて贅沢三昧するのよ! 王子は魔力だけ出しといて下さいオラー」
メアは王子が握る操縦桿に無理やり手を重ねてSRXを戦線から離脱させようと滅茶苦茶に動かし始めた。無理な姿勢の為にウェカ王子の顔にメアの大きなおっぱいが無理やり押し付けられる。
「や、やめろメアー、服が落ちてるぞ、生のおっぱいがっ」
「うるさいっ!」
シューネはぎこちなく動き始めた首両手が無いSRXをもはや無視した。
『ふぅ茶番は終わりだ。外に出てる偽物君を先にサクッと刺し殺そうかっ! 行け光剣っ!!』
シュパパパパパ!!
数多くの光の剣が、一筋になって一直線に躊躇なくスナコに向かって吸い込まれていく。
『砂緒さまっ!?』
どうする事も出来ず、ライラが叫んだ。
ピカアッッバリバリバリバリ!! ドドドーーーン!!
全ての出来事は光の速さに近い為に一瞬で終わったが、おびただしい光剣が砂緒の身体に達しようとする目前、久しぶりに砂緒いーじすシステムの雷が発動して全て撃ち落とした。
『なんだ!? 今度は何だ……そうか、あの時の麻痺術の雷!? 貴様ッッ!!』
嫌な記憶が戻りシューネは歯ぎしりした。
「良かった砂緒いーじすが効くなら蛇輪で増幅すれば完璧に防ぐ事が出来るハズです」
砂緒が操縦席に戻ろうとした瞬間だった。
「砂緒おーーーーーー!! ごめん! 戻って来たわーーーーーっ! 今からそこに行くわよっ!!」
セレネの魔輪にまたがった雪野フルエレ女王の可愛い声が響いた。砂緒はその声だけは絶対に聞き逃さなかった。
『宮殿駐輪場フルエレ確認! マーカー送ります。こっちに走って来るつもりです』
『ええっ!?』
ライラは慌てた。
砂緒いーじすシステム 主人公砂緒に危機が迫ると、天から雷が落ちて来て防いでくれる。普段両手の指先から出す雷より威力は高い。魔ローダー蛇輪に搭乗して魔力で増幅した場合、さらに威力の大きな雷を放出する事が出来る。




