フルエレ復活 上 ウェカ王子とメアの決意……
SRV隊を壊滅させた貴城乃シューネの魔ローダー金輪は、ふわふわと旗機日蝕白蛇輪とそれに盾となって守っているウェカ王子のSRXに向かって飛んできた。
「メア、これが最後のチャンスだやっぱり降りないか?」
「……もうその事は言わないで下さい。それで無事に乗り切ってまた瑠璃ィさんと爆笑する毎日に戻りましょう! ね?」
「……う、うん、そうだナ!」
しかし王子の声に元気は無かった。決して怖いとか怖気づいたとかでは無くて、メアを巻き込んで降ろせない自分に許せない部分があったからだ。
『まだフルエレは見つかりませんか?』
『申し訳ありません。それにフルエレ女王陛下からのアプローチもありません』
『それは君の責任じゃないな。動いたフルエレが悪い』
『……』
頭がおかしいともっぱらの評判の砂緒から、まともな擁護を受けてライラは何とも言えず再び魔法モニターを目を皿の様にして探し続けた。
「あ、そうだシューネ今晩何食べる?」
「……いきなりどうした猫弐矢、今はそんな時ではないぞ?」
「そうだな僕はあっさりした物が良いな、シューネは?」
必死に時間を稼ぐ猫弐矢の前にフゥーが立ち塞がった。
「猫弐矢さまあからさまな邪魔はお止め下さい」
「有難うフゥー。君はいつでも僕の為に尽くしてくれるね」
「い、いえ」
フゥーは少し赤面して引き下がった。しかしそうこうしている内に金輪はSRXの目前にまで浮遊して来ていた。
『腰抜けの魔ローダー隊は壊滅したぞ! まだそこで銀色を守る勇気は認めてやろう。だがもう勝負は決している。これ以上犠牲は出したくない、大人しく引き下がり給え!』
シューネは魔法外部スピーカーで降伏を勧めた。
『いやだっ! ボクはここをどくつもりは無いゾ! それに貴様は結局殺サ不で攻撃してくる、だったらボクは怖くないぞ!!』
シューネは一瞬あっけにとられたが直ぐに大笑いを始めた。
『あははははは、これは舐められた物だな。殺サ不だから怖く無いか! しかし今回はそういう訳には行かないんだ。さっき可愛い美女二人の戦士達に殺サ不は偽善だ良く無いと批判されてね、ある御方の為に誠意を尽くして来たが、私は本来敵にとどめを刺す主義。それで今回は誠意をもって操縦席を串刺しにしようと思っている!』
その瞬間、砂緒とライラ、ウェカ王子とメアはサーッと血の気が引いた。
「お、王子……」
「メア」
無意識にウェカ王子にしがみ付いたメアを王子は片腕で抱き締めた。
『ライラ短時間なら戦えますか? 操縦は私が行います。なんとか剣技で敵を圧倒しましょう』
『ハッお望みであれば砂緒さまの為に死力を尽くして魔力を放出します』
二回目となるが、地中に居たスナコは蛇輪が光剣を弾き返す事をまだ気付いていない。
『だが安心したまえ! 今回奮闘した君の勇気に免じて降参と言って両手を上げて避けてくれれば以後は君を攻撃はしない』
余りに傲岸不遜な物言いだが、内心メアはホッとしていた。いつものウェカ王子ならあっさりと引いてくれる、そう願った。
『断る!!』
(王子!! 何故?)
しかしその願いを断ち切る様にウェカ王子は即座に断った。
『何故?』
『何故って、ここまで同盟がコケにされて、それではいそうですかって意地でも降参出来るカッッ!』
『声を聞けばうら若き少年かね? こんな所で意地の為に命を落とす必要は無いぞ。それに君が撃破されようがされまいが、結局私は実剣で銀色を潰す。君の意地は無駄になるぞ!』
猫弐矢が声を拾われ無い様に小声で言う
「冗談だよな? 本気で操縦席を貫かないよな?」
「黙ってくれ」
またもや横槍を入れる猫弐矢をフゥーは無言で睨みつけた。
『実剣で銀色を潰す? どうしてアノ光の矢で真っ先に攻撃しないんですかね?』
『いや……もしかしたら蛇輪は光の矢を跳ね返すのかも?』
『……一か八かで賭けるのはリスキーですね』
『ですね』
フルエレの縁故で重要ポストを得た単なるアホの変態だと思っていた砂緒が実は色々考える事を知って、ライラは少し好感を持った。
『もうここまでだっ! 十秒だ、十秒詠んでも反応が無ければ無条件で君の機体の操縦席めがけて無数の光剣を放つ! じゅうーーーう』
シューネの一方的な宣言でカウントダウンが始まったが、プロレスのカウント並みに実にゆっくりなカウントであった。シューネも本心では実力あるこの少年操縦者を惜しいと思っていた。
「王子?」
メアは哀願する様な目でウェカ王子を見た。
「……ごめん、最悪だ。単なる意地の為にメアの事を巻き込んで……」
王子の言葉で決心に揺らぎが無い事を悟った。
「いいえ、大好きな王子にお供出来て嬉しいです!! でももし来世でも一緒になれたら……今度はお嫁さんにしてくれて贅沢三昧させて……下さいね」
メアは涙で一杯の目で笑顔を作った。
「……うん当然だよ。メアをボクのお嫁さんにするよ!」
『ごーーーーー』
『ダメですね、とりあえずアホ王子の前に出ます。死なす訳には行きません』
『はい』
ギギギ……
蛇輪が動き始めた時、SRXの手が動くなの合図で動いた。
『蛇輪は動くな!』
『無視しましょう』
『いえ、例え一秒でも……今は王子を頼りましょう』
ライラは最後の瞬間裏切り、砂緒と逆の動きに抵抗して蛇輪は止まった。
「王子、強く抱いて下さい」
「う、うん……メアの身体、暖かいね」
「う、ううぅ王子」
メアは目をつぶって泣き続け、金輪内部では猫弐矢が妙な事をしない様にフゥーが魔法を放つ勢いで睨んでいる。
『いーーーーーーち、ゼロッ!!』
シャシャシャシャシャッッ!!
粘ったカウントダウンだったが、ゼロになった途端にシューネは躊躇無く無数の光の剣を操縦席に向けてほぼ光の速さで放った。
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