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魔ローダースキル金輪 下 全滅危機① セレネ完敗

「ば、バカな……そんな訳無いよ」


 先程までの自信過剰は吹き飛び、セレネは震えかけていた。それもそのはず、セレネは金輪(こんりん)が巨大な謎の輪っかを出現させた時点で、得意の見えない魔法の格子を出現させてあらゆる攻撃を未然に防ぐ体勢を取っていた。自信過剰と言ってもやる事は一応やっていたのだ。それがあたかも敵の攻撃が格子をすり抜け突然発現したかの様に、腕がぼとっと落ちて混乱の極みにあった。


『セレネッもう撃つわよっ』


 メランが魔法スコープを覗き込んで冷や汗を流しながら叫んだ。


『駄目だっ! もし何かの仕掛けで第一撃が避けられて反撃されたら切り札が無くなる!』

『そんな事言って、貴方がやられたら意味無いじゃない!』

『意味無い事ありません。砂緒とフルエレさんがこの同盟の主ですから、二人が勝てば』

『ちょ、ちょっと!!』


 セレネは直立不動の金輪三毛猫スペシャルの後光と手元を確認しながら、ゆっくりと落ちた片腕から剣を拾おうとした。


「大した女だ。まだまだ戦う気らしいな、気に入ったぞ」

「セレネくん痛いだろうに……」

(魔ローダースキル金輪? 初めて見たが何なんだ?)


 先程まで負ける負けると大騒ぎだった猫弐矢(ねこにゃ)は、今度は片腕を落とされたセレネのSRV2ルネッサの悲壮な姿を見て固唾を飲んだ。その後ろでフゥーは仲間達を次々倒して行った元強敵セレネの意外な姿を複雑な思いで見ている。


 カチャッ

 少し屈んでルネッサはちぎれた片腕の剣を慎重に握ろうとした。

 シャシャッ!!


 ダーーーンッッ!! ズシャッ……


「うぐっっ」


 しかし拾おうとした瞬間、金輪の後光の様な輪から何かの作用なのか、再び残った片腕まで吹き飛んだ。


「お、おいおいセレネ様は大丈夫なのか??」

「セレネさま!?」

「何てことなの??」


 多くの人々が一時避難している一帯に移動したイェラは、人々が強いと信じるセレネの機体の信じられない姿に驚き、重苦しい空気に包まれている事を感じた。それは同盟への不信にも繋がった。


「まずいぞセレネ……砂緒はどうした??」


『もう撃つわよ、どいてちょうだいっ!!』

『駄目だっ、蛇輪が起動するまで待て!! いや、敵が蛇輪を破壊しようとしたら撃って下さい』


 言いながら両腕を失ったSRV2ルネッサはゆっくりと立ち上がった。


(手を失っても脚がある!!)


 再び戦う気力を取り戻したセレネは、自身のしなやかな身体同様に魔ローダーの脚部をピンと張って次々に蹴りを繰り出していく。


「むっまだまだ戦うかっ見上げた女だ。側女に欲しいくらいだフフ」


 貴城乃(たかぎの)シューネの金輪三毛猫スペシャルはセレネの機体の鋭い蹴りをギリギリ寸前でなんとか交わしていく。もし相手が只の一般兵ならこの蹴りだけで首を落とされる様な強力な攻撃であった。

 ビュンッビュンッ!!

 セレネは右に左に時には回転して回し蹴りや後ろ蹴りを繰り出して、必死にシューネを追い詰めようとした。


「凄いぞセレネ……足だけでそこまで戦えるのか……」


 まおう抱悶(だもん)を背負ったままのイェラは感心して見上げた。


「だが、もうその美脚攻撃は飽きたよ」


 ビュンッ

 シューネが言った直後、蹴り上げた女性型をしたSRV2の優美な片足が機体の根元から切断され、ブーメランの様に回転しながら飛び続けて遠くの地面に突き刺さった。


「うぐっ!?」


 セレネは突然の攻撃に一瞬バランスを崩しそうになりピョンピョンと数回跳ねた後に、上手く体勢を整えて座り込む様に擱座した。

 バシャッ!!

 セレネは一か八か敵の眼前でハッチを開けると、巨大な輪を背負った金輪を睨んだ。飛び出すタイミングを図る為だ。


「むむっやはり美しい子だな、どうしてくれようか?」

「シューネ、分かっていると思うが生身の子を魔呂で攻撃したら承知しないよ?」


 猫弐矢は見知った美しいセレネが無残な何かしらの攻撃を受けない様に、シューネの肩を強く握って牽制した。


「じゃ、此処はフゥーくんに決めてもらおうか? どうするかね」


 フゥーの脳裏に魔法剣で次々破壊されたシャクシュカ隊の仲間達の姿が浮かんだ……


「……ご主人様の機体でしたら例えあの女が乗り換えてもまた勝てるかと」


 特にフゥーは七華(しちか)猫呼(ねここ)と違ってセレネと絡みがあった訳では無い、どちらかと言えば憎いだけの仇だが、一時同じ陣営に居たよしみで生身の止めには気が引けた。


「だ、そうだ命拾いしたね! まあ正直私も殺りたくは無かったハハハ」


 シューネは他人事の様に笑った。


『メランさんまだじっとしてて、タイミングを見計らってそっちに走ってSRVに乗り換えるよ』

『はぁ? 何言ってるの?? もう撃つわっその隙に走って来て!!』

『こらっまだ撃つな』


 しかしメランは命令を無視して機体のトリガーを握る指を絞る様に力を込めた。

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魔ローダー、魔呂 全高二十五メートルの魔法で動くロボット。多くがプレートアーマー(鎧)をそのまんま巨大化した様な形状をしている。

魔ローダースキル 魔呂の中心機関、魔ァンプリファイアが特別製の伝説機体だけが使用出来る固有の魔法。


日蝕白蛇輪 主人公砂緒と雪乃フルエレが乗る同盟側の主役機体。銀色で羽があり変形出来る。

金輪 東の地、神聖連邦帝国の四旗機の一体。黄金色のド派手な機体。

SRV2ルネッサ 同盟の量産型機体SRVの指揮官機。オレンジ色で優美な細身の女性型をしている。

SRV 同盟の量産型で赤や青や緑などツヤツヤな高級塗装で外見に気を遣っている。


砂緒 主人公で少しだけおちゃめな変態。今はスナコちゃんという女装を自己満足の為にしている。

セレネ ヒロイン二号、同盟の軍事司令官で非常に強い魔法剣士。

メラン 物語初盤の方からの砂緒とフルエレの知り合いで魔導士。魔戦車で砲撃の才能がある。

雪乃フルエレ 同盟の女王に祭り上げられて困惑している金髪の美少女。砂緒と最初に知り合う。


貴城乃シューネ 東の地、神聖連邦帝国の重臣で姫乃ソラーレの元学友。

猫弐矢 東の地、クラウディア元王国の王子で実質的指導者。主人のシューネに連れ回されている。

フゥー 流浪の民出身で先祖はクラウディア出身らしい。元同盟の敵で奴隷化していた。

姫乃ソラーレ 神聖連邦帝国聖帝の娘で政治軍事を手助けしている。実は女王でも何でも無い。

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