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魔ローダースキル金輪 中 セレネ出撃


「魔呂が出たッ! あたしはSRV2に乗る、砂緒は蛇輪へ行け、ライラはフルエレさんを蛇輪の中へ誘導! そこが一番安全だっ!」

「ハッ!」


 セレネは言うや否やピョンピョンとSRV2ルネッサまで走って行き、ライラは控室に向かった。しかし急ぎ過ぎてセレネは砂緒が単身では蛇輪を移動できない事を失念していた……


「何だあの魔呂は!? 三毛猫スペシャル?? 見た所アノ聖都の金色みたいですが」


 猫弐矢(ねこにゃ)が呼んだ魔呂はまさしく黄金の機体金輪(こんりん)だが、偽装として茶と白のペンキが雑にまだらに塗られていた。どうやらそれが三毛猫という事らしい。工作員達が土木工事優先で、偽装に回す時間が足りなかったのだった。


「スナコさまっ、これをっ!!」


 蛇輪に向けて一直線に向かおうとする砂緒を呼び止めて、七華がヘッドチェーンを高く掲げた。そのまま七華がヘッドチェーンをブンッと思い切り投げると、宝石はキラキラキラと綺麗な軌跡の弧を描いてスナコの掌に吸い込まれた。


「七華ありがとう!!」

「お早くっお気を付けて!」


 七華は笑顔で大きく手を振った。しかし事態は予想を上回って悪化していた。

 ガッ!!


『先手必勝!!』


 それまでゆっくり歩いていた金輪三毛猫スペシャルは、急激にスピードを上げると舞台の真後ろまでやって来て、蛇輪の背中に足を掛けるとそのまま踏み倒した。

 ドシャーーーン!!


「シューネ、何て事するんだっ!」


 まだ猫弐矢三毛猫仮面が乗り込む前に貴城乃(たかぎの)シューネは攻撃を開始した。


「きゃーーっ!!」

「うおーー逃げろーーーっ!」


 バリバリバリ、グシャーーーン!!

 先程までの演劇の舞台に折り重なる様に巨大な蛇輪が前倒しになって倒れ込んだ。それと同時に逃げ惑う王族と従者と兵士達とで客席と庭園は大混乱となった。


「うわあっ何てことするんだ!? うがっ」


 ガラガラと崩れ行く舞台の天井から、金輪はひょいっと中に浮いた猫弐矢三毛猫仮面をキャッチして操縦席に放り込んだ。


「しまった、蛇輪を前のめりで倒されたっ! 乗り込めないじゃないかっ」


 舞い散る砂埃と破片を腕でカバーしながら、スナコは倒れ込んだ蛇輪を見上げた。


「おい砂緒、どうするんだ??」

「おお、衣図ライグ頼みます、皆を避難誘導して下さい!」

「いや、俺達は魔法ドリル部隊で地下から蛇輪の入り口に迫らないか?」

「おおっそれは助かる」

「避難誘導ならウチがするでっ! あの正体不明機から死者が出んようになっ!」

(ほんまやでシューネ、何やってくれてんねん)


 瑠璃ィ(るりぃ)が仲間の様な口調で割って入って、衣図ライグもスナコも一瞬止まった。


「オバ、いやねーちゃん、神聖連邦の人間なんだよな?」

「い、いやあ? あんな魔呂神聖連邦にはおらへんで? あれ三毛猫仮面とかの怪盗のやろ?」


 一瞬衣図ライグと瑠璃ィは険悪な雰囲気になった。その後ろでメアが心配そうに見ている。


「おいガラの悪そうなお前! ボクの瑠璃ィにケチ付けるなら承知しないぞっ!」


 ウェカ王子が衣図ライグの前に立ちはだかった。


「二人共止めましょう、今は緊急時です一人でも人手が欲しい。瑠璃ィは避難誘導して下さい。ただし魔呂には近付かないでもらいましょう。ウェカ王子、貴方は腕が確かなハズ。余ってる魔呂に乗って応戦して下さい」

「いいのかよ、こんな奴信用して。なんか知らん内にお人好しになったじゃねーか」

「ムムッいいんです。最近は仏の砂緒さんと呼ばれていますよ」

「ホトケって何だ?」


 瑠璃ィはそれ以上文句は言わなかった。確かに今攻撃して来て居るのは金輪だからだ。


「よし行くぞ砂緒!」

「ほい来た!!」


 スナコと衣図ライグ達は取り敢えず一番近場の地下入り口から降り、配下の魔導士に魔法ドリルを展開させた。


「メアお前も来い!!」

「え? わ私は安全な所から王子の御活躍を応援します~~」


 しかし王子はガッとメアの腕を掴んだ。


「僕の操縦席の中が一番安全だっ! だからメアも一緒に来い」

「は、はぃ」


 王子に強く腕を引かれてメアは少し赤面しながら、SRVが林立している地上駐機場に向かった。



「一体どういうつもりだっ! 少しデモンストレーションするだけと言ったじゃないかっ!」


 当の金輪の操縦席内では猫弐矢が激しくシューネに詰め寄り、動きを一時止めていた。


「だからこれがデモンストレーションじゃないか、今の所死者は出ていない様だし平和な物だよ」

「蛇輪を蹴倒したじゃないか? 誰か下敷きになって無いだろうな!?」

「ハハハハ、君も観ていただろう、皆蜘蛛の子を散らす様に一目散に逃げ出したじゃないかっ大した王族達だよ」

「君って奴は!」


 遂に猫弐矢はシューネの胸ぐらに掴みかかった。


「やめたまえ、私達は仲間じゃないか」


 その間でフゥーはおろおろとし続けた。


『そこまでだっ!!』


 大きな魔法スピーカーの音がして、三人とも前を向いた。目の前には長剣を構えたセレネの派手なオレンジ色の優美な女性型をした魔ローダー、SRV2ルネッサが立っていた。


「おおっセレネ様だっセレネ様の魔呂が出撃されたぞっ!」

「これで安心だっ」


 性格は兎も角、セレネの強さは知れ渡っていたので、人々は胸を撫で下ろした。

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