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魔ローダースキル金輪 上 アノ男再び

「全部……スナコの所為だっ」

「ええ!?」


 セレネがギラッと目を光らせ、おでこに手を当てるスナコに迫った。


「お前が変な劇作ってフルエレさんが最後スーッと消えて引退するみたいなヤツ作るからこうなったんだっ!! 全部何もかも全てまるっとお前の所為だっ!!」

「痛いいたたた」


 セレネは叫びながら、なおも痛がる砂緒をボカボカ叩き始め、周囲はあっけにとられて何も言えなかった。


「いやアレはフルエレが大幅加筆修正した物で、だから終わり方不自然だったでしょう!? 私としても不本意な終わり方だったのですよっ」

「知るか、んなもんとにかく全部お前の所為だっ!!」

「でもフルエレがぶっちぎりの首位で、どうせ決選投票でも勝ってしまうのでしょうし良いじゃないですかっ何でセレネさんがそこまで激怒しているのか良く分かりません!」

「勝てばいいって物じゃないんだよっ! ぶっちぎりの一発当選じゃなきゃ意味が無いんだっバカーー」


 当初はセレネの思惑通り雪乃フルエレ現女王が一発当選する趨勢であった。所がそこに貴城乃(たかぎの)シューネによる横槍で候補者が二名増え、さらにはその彼が事前に北部列国の旧王族有権者中心に金品を配りまくった事で大きく情勢は変化していた。しかし理由はそれだけでは無かった。最近の余りにもユティトレッド魔導王国セレネ王女のワンマンぶりに危惧を感じた人々が、得票を伸ばしても害の無い対抗馬として海の向こうの東の地の神聖連邦帝国聖帝の娘、姫乃ソラーレに投票したのだった。そうする事で無言の圧力をセレネに掛け様という思惑だった。つまり砂緒の劇は特に余り関係は無いのだった……


「痛いいてててて、セレネさんいくら私でも硬化しないと死んでしまいます」


 結局砂緒は雪乃フルエレに続いてセレネにまで殴られ続けた。


「いい加減にやめろっ! 砂緒が本当に死んでしまうぞっ」


 心配になったイェラが突然出て来てスナコを奪い、大きめの胸に抱き締め谷間に挟んで庇った。


「イェラお姉さま……」


 剣の実力的には遥かにセレネの方が強いのだが、スラリとした長身で凛々しいイェラの外見とさっぱりした性格が好きなセレネにとって、王のおじい様と雪乃フルエレと並んで、数少ない言う事を聞く存在だった。


(嗚呼ァ~~~この感じ久しぶりです~~~スリスリ)


 スナコはここぞとばかりにイェラの深い胸の谷間に子猫の様に顔を擦り付けまくった。


「何をしている??」

「い、いえ~お構いなく」

「ほらほら、そんな奴を信用しないで下さい!!」


 セレネはもう一度殴り掛かろうと腕を振り被った。


「こらっ! セレネは少し砂緒に甘え過ぎだっ何でもかんでも砂緒に八つ当たりするなっ」

「どうぞっ! 私はキーキー言う部分も含めてセレネさんが好きなのです。さあっ私の広い胸に甘え倒しなさい!!」


 スナコは両手を広げ菩薩の様な顔でセレネを受け入れた。


「うっキモイわ……」


 セレネはスナコの表情がキモ過ぎて思わず後ずさった。


「スナコさま大丈夫ですの?」

「セレネあんたいつもやり過ぎよ。もし嫌われたら泣く癖に」


 七華と猫呼(ねここ)が揃ってスナコを庇った。砂緒は久しぶりにハーレムっぽくなって少し嬉しかった……


「三人ともご安心下さい、ああ見えてセレネさんは土砂降りの雨の中で子猫を拾って、お前もあたしと一緒だね、なんて言いながら傷心に耽る様な良い子なのですよ……」

「えっそんな恥ずかしい事があったの??」


 猫呼が激しく赤面して聞き返した。


「そんな恥ずかしい場面は無い! 適当な嘘を言うな!!」

「さすがにセレネでもそんな恥ずかしい場面は無いだろう……」


 その瞬間、三人に庇われてイェラの胸の谷間に挟まったままのスナコはニヤッと笑ってセレネを見た。


「貴っ様ぁ~~~!!」


 セレネに殴られまくる事で同情を集めようとしてるスナコの思惑が透けて見えてセレネは激怒して再びなぐろうとした。


「アンタそんな事してていいの? 選管の皆さんが困惑してるわよ、早く決戦投票とやらを始めなさいよ」


 猫呼に言われてようやく我に返ったセレネが見ると、確かに選管の職員達がどうして良いかわからずあたふたしていた。


「そうだな……姫乃に投票した連中は後で徹底調査して暗に嫌がらせしてやる」

「アンタね、怖過ぎるわよ」


 と、セレネがようやく立ち直り粛々と手続きを再開しようとした時だった。


 タタタターーーータタターーー、タタタターーーータタターーーテテッ

 タタタターーーータタターーー、タタタターーーータタターーーテテッ


「はーーーはっはっはっはっ、はーーーはっはっはっはっ」


 突然会場にアノBGMが鳴り響き、不気味な笑い声がこだました。


「見てっ!! アレは三毛猫仮面よっっ!!」


 王族の御婦人の一人が指をさすと、野外劇場の屋根の上に灰色装束の不気味なマントの男が立って居た。

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