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投票、即日開票 下② 集計開始、スナコの涙

『はい、そういう訳で早速即日開票集計に入ります。魔法マークシートの集計については自動魔法投票集計機〇ザジによる集計と、人力による集計のダブルチェックで行います。しばしお待ち下さい』


 全ての有権者王族達が投票を終え、早速その場で開票と集計作業が始まった。セレネは有権者と候補者でありながら選挙管理の責任者でもあるといういびつな物だったが、そんな細かい事を突っ込む者は居なかった。


「ふぅ、わたくし何票くらい入っている物なのでしょうか? スナコさまは事前情報とかありませんの?」


 七華が頬に片手を当て、不安気な顔でスナコちゃんに訊いて来た。


「事前情報って……ヤラセでは無いのですよ、事前に何票入っているのかとか知っている訳ありません。でも心配しないで下さい、七華がゼロ票な訳ありませんから」

「そ、そうでしょうか……あらスナコさまホワイトボードは良いのですの?」

「はっ七華とは抜き差しならない仲ゆえ、思わず地声で話していました。ヘンですかね?」

「変じゃないですわ、むしろその姿でその地声、倒錯ぽくて好きですわ。それに抜き差しならぬだなんて、相変わらずスケベなのですわね」

「えっそういう意味の言葉なのですか!?」


 等と会話していると、砂緒は一瞬故郷に帰還した様な気安さを七華に感じた。


「ちょいちょい、お二人様盛り上がってる所悪いが集計がもう終わったぞ」

「あら、怖いお方が嫉妬されてますわよウフフ」

「せ、セレネさんちょっとした世間話してただけです」


 等と言うと今度は七華が白い目で見て来た。砂緒としては自分勝手を言えば双方大事にしたい相手だった……


『皆さま、お待たせ致しました。今集計が完了致しました。早速獲得ゼロ票から順次発表して行きます』


 セレネはすぐさまよそ行きの声に切り替えてサクサクと先に進め始めた。


「なな、なんやて!? ゼロ票から発表するって、ウチへの公開処刑やないか!? なんでそんな仕打ちするんやっ」


 セレネの発表を聞いて瑠璃ィ(るりぃ)キャナリーは頭を抱えてその場にうずくまった。と、その肩にウェカ王子がポンと手を置いた。


「くふふ瑠璃ィはゼロ票じゃないゾッ」


 言われて瑠璃ィは涙交じりの目で上を向いた。


「え、もしかして王子ウチに!?」

「テヘヘッ」


 王子は気恥ずかしそうに鼻の下に指先を置いた。


「まあっ王子ったらお優しい、貴重な一票をドブに捨てちゃったんですねっ!」

「メアちゃん? 最近なんかウチに毒づいてるやろ?」

「い~え~」


 メアは横を向いて誤魔化した。発表は一応候補者のセレネでは無い選管の女子が読み上げ始めた。


『まずゼロ票お二方、第五候補キィーナール諸島アイイ酋長殿、第八候補荒涼回廊飛び地館主伽耶クリソベリル嬢』


 シィーーン。

 ゼロ票の候補者に皆どういうリアクションを取れば良いか正解が分からず、会場は水を打った様に静寂に包まれた。


「まっ順当なトコやな~~」

「瑠璃ィさん急に気が大きくなりましたねえ。どうせ次の一票止まりですよ!」


 メアは笑いながら言った。


『次一票獲得、第四候補まおう軍まおう抱悶(だもん)さま」 


 シィーーーン。

 再び会場は静かとなった。皆、今折角生まれたばかりのまおう軍との大同盟がぶち壊れてはいけないと、空気を読みまくって座席で眠る抱悶ちゃんを起こさない様に気遣った。


「誰やっ誰が一票入れたんや? てか若君はあの可愛い子を討伐するんか??」

「若君ってダレだよ、お前の全身はボクの物だからな」

「え?」

「王子その言い方は激しく誤解されますよ!?」


 メアは王子の言葉のチョイスにギョッとしたが、王子自身には別にエロい意図は全く無かった。


『次二票獲得、第九候補謎の美少女スナコちゃん』


 その瞬間、スナコはその場に崩れ落ちた。


「終わった……私の大甲子園は此処に終わりを告げました……私の実力は……二票? 二票なんですか??」

「スナコさまおいたわしや……」


 スナコちゃんはホワイトボードを使う事も忘れ、むせび泣きながら一人呟いた。七華はその姿を見て口に手を当て我が事の様に悲しんでうち震えたが、内心自分は勝ったと思った。


「むしろお前が二票も入った事が奇跡だわ」


 すかさずセレネが肩に手を置きながら慰めた。


「……その内の一票は私自身が入れた物です」

「……もう一票はあたしだよ……」

「え?」


 スナコは赤面するセレネを見上げた。

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