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投票、即日開票 上 シューネの焦り 


 ―ザ・イ・オサ新城、投票会場の地下。


「駄目だ……急に警備が厳しくなっていて金輪(こんりん)を隠した場所まで辿り着けんではないか」


 貴城乃(たかぎの)シューネが地下通路の角から隠れながら、要所要所で警戒している警備兵達をちらっと見た。


「……もしや私が舞台の途中で姿を消した事で警戒が強まったか??」


 実際にはこの地の警備の最高責任者であるセレネは半透明、ココナツヒメの事一辺倒であり、まさかシューネが魔ローダーを繰り出して来るとは想像もしていなかった。


「舞台が盛り上がる最高潮の場面で魔呂を出そうと画策していたが……もう舞台は終わったのではないか? 時期を逸したか……」


 説明の為に独り言を言いまくるシューネであった。


「そこの貴殿、どういったご用件で此処に?」

「うっ」


 後ろから慎重に声を掛けられ、ビクッとしつつもゆっくりとシューネは振り返った。


「いやあ、私は怪しい者では……」


 笑顔で振り返ったシューネは白い妖しいマスクを装着したままであった。


「……少しお話を聞けますか? 詰所まで来て頂こう」

「いやっこれは、少し迷って」

「一人は目を見るな! 最近タカラ山新城で妖しい術を使う者が現れたらしい!!」


 数人いる警備兵の内、一人が視線を逸らし逃げる体勢を取った。全員が操られたり殺されたりしない様に、あらゆる事態に対処出来る様指示された万全の態勢だった。


(ちっめんどくさい……一人を操り剣を奪い素早く全員殺るか??)


 白いマスクの下でシューネの目がギラリと光った。


「御主人様っ!! こんな所で何をしておいでですかっ?」


 突然場違いな可愛い女の子の声が地下道に響いた。全員の視線がその声の主に向いた。


「フゥーちゃん??」

「もう御主人様ったら投票会場はコスプレ会場じゃ無いのですからねっ! 私にこんな恥ずかしい奴隷の首輪まで付けて……御戯れは夜だけにして下さい!!」


 等と言いながらフゥーはセロテープで仮止めされた奴隷の首輪をカチャッと外した。白い仮面の男に続いて場違いなメイドさんの格好をした美少女だった。


「ふふっ私の可愛い子猫ちゃん、済まないね後でたっぷり可愛がってあげようか」


 等と言いながら今度はシューネがフゥーを抱き締めた。


「やんっ、皆さまが見ておられます……」


 あっけに取られて見ていた警備兵達がようやく口を開く。


「これは……どういう事ですかな??」

「い、いやあお恥ずかしい、メイドのフゥーちゃんが言う通りでしてな」


 警備兵達がひそひそと相談をしている。状況は何となくどこかの王族のバカ王子が本当に迷って来た……という事だろうかと話し合っていた。


「いえ、しかしセレネ様から掃除係の新入りを見ても斬れと言われておりまして。お手数ですが……」


 セレネは数々のマンガでユルい警備が混乱をもたらす場面を見続けた結果、いつもの人は風邪で交代要員です等と言う奴が居たら即斬れ、という指示を出しているくらいに警備兵達はやたら厳しかった。


「……」

「おおーーい! シューネくん! フゥーちゃんこんな所に居たかっ!!」


 またもや声がして振り返ると、今度は三毛猫仮面スーツを着て、仮面だけ外した猫弐矢(ねこにゃ)が走って来た。


「おっ君まで……」

「ふぅ、今度は一体、貴方は誰なのですか?」

「ははは、格好が妖し過ぎだね。僕はクラウディア王国の猫弐矢王子、この二人は僕の従者でコスプレさせて遊んでいたんだ。はい、これはリュフミュラン王からの正式な通行証……まあ道路上で使用する物だけど」


 猫弐矢は笑顔でささっと通行証を渡した。


「うむうう……俺は交通警備兵からの増員だから、これは正式な書式となっている。恐らくリュフミュラン王のサインも本物だろう」


 警備兵の一人は通行証をまじまじと見つめた。


「済まないね。実を言うと男二人でこのメイドさんと妖しい遊びをしていて……大きな声じゃ言えないが人が居ない場所を探していたらこんな所まで来てしまって。でも安心して、このまま帰してくれればリュフミュラン王には言い付けないから!」


 猫弐矢は笑顔だが半分脅しの様な事を言った。


「女王候補者の一人であの裏ギルドの猫呼(ねここ)さまの関係者か? 御兄妹??」

「ややこしい時につまらん事をする馬鹿王族がっ!」

「聞こえるぞっ」

「どうする、リュフミュラン王だぞ?」

「リュフミュラン王は輪をかけてややこしい人物で有名らしいぞ」

「どうすんだよ??」


 警備兵達は円陣を組んでひそひそと相談し合った。猫弐矢はそれを見て内心ヒヤヒヤしながらも笑顔でふんぞり返った。

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