表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

556/1099

第三幕 戦火の嵐 終幕① 悲しみのフルエレ

「フルエレ女王陛下、敵女王からの返答ありません。如何いたしましょうか?」


 伝令兵からの知らせを聞いて雪乃フルエレは重そうに頭を抱えた。


「おお、なんという事でしょう。此処までくれば勝敗は明らか。早くエリゼ玻璃音(はりね)女王には降伏して欲しいのに」

『フルエレ……』


 もはや疲れ切ったフルエレをスナコちゃんが支えた。


「女王陛下、このまま指を咥えて見ているのでは、市街の被害が広がる一方。早く決着を付けてやる事も最後の情けかと」


 そこにセレネが無表情に進言した。


「セレネいつも貴方はそんな物言いばかり。私には割り切れない事もあるのです」


(はいはいそうですね~~)


 セレネは目を細めて唇を尖らせた。


『フルエレ、セレネは本当は心根の優しい子なの! みんなの事を想って言っているのよ。彼女も本心ではとても辛いの! 分かって上げて……』


 物凄い迫真の演技だったが、セレネは鳥肌が立って内心非常にむかついた。


「むふっ」


 スナコちゃんはセレネの心を見透かす様にニヤッと笑った。


(スナコきっさまぁ~~~~~)


「分かったわ……スナコちゃんセレネ有難う。貴方達二人は私の親友だわ。悲しいけれど決断しましょう……魔ローダー達に城の総攻撃を……これで全て終わりにするのです!」


 フルエレが涙を振り絞り片手を上げた。


「ちょいちょいちょい、フルエレさんが城踏み潰した件は??」

「あんなの無しに決まってるでしょ。女王が中に人が居る城を滅多踏みしたら観客ドン引きしますよ」


 二人は迫真の演技をするフルエレの真横で小声で会話した。


 ドガーーン!! ガゴーーン!!

 同盟軍魔ローダー部隊による謎の大規模攻撃が始まった事が音のみで表現される。

 ガラガラガラ……

エリゼ玻璃音女王が一人立て籠もる城の屋根から色々な物がパラパラと落ちて行く。


「ひっひぃいいいい、い嫌じゃっ! わらわは若く美しいまま永遠に生きてセブンリーフを支配するのじゃっ! こ、これは夢じゃ夢なのじゃ、アハハハハハッ、も、燃ゆる燃ゆるわっアハハハハハッッ」


 絶叫するエリゼ玻璃音女王の頭上に城の石材や木材がガラガラと落ちて来て、彼女は下敷きになって砂煙と共に消え失せた。


「な、なんかあたしゃ敵女王が可哀そーになって来たぞ。なんだよ若く美しいまま永遠に生きるて」

「敵女王は永遠の若さと美貌を求めながら死ぬという重要なテンプレがあるんです」

「なんだよソレ、聞いた事ねーよ」


「全て終わったのね……皆の者、街の人々に城は落ちたと告げ、一刻も早く戦闘を終わらせるのです! そして帰りましょう我々の新ニナルティナへ!!」


 フルエレ女王がバサッと白いマントを翻して踵を返すと、多くの家臣達が頭を下げた。


「ははっ行きましょうフルエレさん」

『そうね、帰りましょうニナルティナへっ!』


『こうして雪乃フルエレ女王陛下はメドース・リガリァのエリゼ玻璃音女王を倒すと、懐かしい我が家である新ニナルティナに帰還したので御座います。しかし……同じ頃その新ニナでは恐るべき悲劇が起こっていたので御座います』


 ―舞台は一転して新ニナルティナ港湾都市。


「きゃーーっ! 敵の魔ローダー部隊よっ!」

「どっからやって来た!?」

「バックマウンテンを越えて攻めて来やがった!!」


 逃げ惑う人々の頭上に魔ローダーらしき音と光の演出。ここでも着ぐるみ演出は避けられた。

 ガガガガ……


「見ろっ! 我々の魔戦車部隊よっ!」

「がんばれっ!!」

「魔ローダー相手に魔戦車で勝てるのか!?」


 やはり音と光の演出だけの魔戦車が応戦する為に現れた。

 ドドーーン!! ドンドン!!


「ああっ一両ずつ魔戦車が破壊されて行く!!」

「宮殿を守る為に……なんて勇敢な人達なんだっ」

「でも、なんて惨い」


 ドーーーン!!!


「なんて事だ最後の一両が破壊されたっ!!」


『雪乃フルエレ女王陛下が城攻めを行っている最中、卑怯にも敵貴嶋は魔ローダー部隊で新ニナルティナを奇襲していたので御座います。その攻防戦で為嘉(なか)アルベルト様は首都を守る為、その尊い身を散らしたので御座います……』


 フルエレの望みにより最後までアルベルトには配役も台詞も無かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ