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第三幕 戦火の嵐 下 合流~メドース・リガリァ本城滅亡

「こういう創作ダンスみたいなの真剣にやってる人はまさかエロい目で見られてるなんて想像してもおらんのでしょうな……なんか邪念を持って観てると恥ずかしいです」


 舞台上真横で観ていたスナコちゃんが小声でぼそっとセレネに言った。


「お前にも羞恥心あるんだな。間違ってもエロい目で見んなよコラー」


 等とセレネが言っている間に大アリリァ乃シャル王の娘さんの情熱的ダンスは終わった。


「ふぅ疲れちゃった、男性陣ちゃんと性的興奮して観てくれたかしら!? うふふ」


 戻って来た娘さんは汗まみれの顔で舌をペロッと出して悪戯っぽく笑いながら言った。


「……プロやん」

『は、はひ、私大興奮してましたっ!』

「おい……」


 その間も舞台はダイジェスト的にセブンリーファ後川流域南側攻略戦の模様が描かれて行く。ただこの戦いは大規模なのでこれまで舞台上にワラワラと現れていた着ぐるみの魔ローダーは一切出て来ないで、出演者の台詞とナレーションで処理するという手法が取られた。セレネとしては着ぐるみが恥ずかしかったのでこっちの方が良いと思った。


『見て! 鳥型に変形した聖魔神騎が行き場を失った敵陣の上空で降伏を勧告しているわっ!』


 ヒューーーーン!!

 舞台では各所で負け続け遂にセブンリーファ後川に追い詰められた敵地上兵が大混乱に陥る場面が再現されていた。と言ってもやっぱり実際には魔ローダーの影も形も無く、魔法ライトと爆発音と台詞でそんな戦闘が行われているという(てい)のラジオドラマ宇〇戦争方式で進めているだけだった。砂緒としては手抜き感がありこっちの方が遥かに恥ずかしいのだが、大規模戦闘として着ぐるみで上手く表現する事が出来ずこうした形となった。


「みろっ! 降伏勧告を無視して西側に移動する集団がいるぞっ!」

『逃げられてしまうわっ!』

「でもフルエレさんは敵を殲滅する気は無さそうだ……」

『彼女らしいわっ! でもその間も敵がどんどん逃げてしまうっ!』

「その先の小都市が被害を被るぞ!!」


 二人は必死に状況を言葉で説明しまくる。セブンリーファ後川流域の王族達を中心に戦闘の詳細は良く知られていたので、何となくは伝わっていた。

 

 ドドーーン!! ドンドン!!

 と突如、敵敗残兵達が大挙して逃げだした西側の方から何者かが攻撃する音があった。


「どうしたんだ?? 一体誰が押し返してくれている??」

『みてっ謎の軍団が戦ってくれているわっ!!』


 スナコちゃんが指をさすと、黒字に二匹の白蛇が絡まる旗を持った軍団が戦闘に参加を始めていた。


「おおーーー!! 我らは海と山とに挟まれた小さき王国の軍であります! これより我らは北部海峡列国同盟に助太刀致す!!」


 黒い馬に乗ったコーディエであった。しかしこの後に雪乃フルエレからの株が暴落したコーディエには戦闘中の鳥型蛇輪からのフルエレの声掛けという感動的なイベントは無かった事にされた。全てコーディエ自身の先走った行動による結果であった……


『敵が挟み撃ちに合って大混乱しているわっ!!』

「フルエレさんには悪いがこのまま我らが見ている訳にも行くまい。こちらからも総攻撃を開始し混乱を収拾する!!」


 セレネの指揮の元、馳せ参じた海と山と国の軍とで敗残兵を挟み撃ちにして遂には多くの兵を討ち取り、また捕虜にしてセブンリーファ後川南側平定戦は終結したのであった。


「わたくしが同盟の雪乃フルエレ女王です。貴方達が馳せ参じて下さったお陰で混乱を早期に収拾する事が出来ました、有難く思う。しかし……挟み撃ちにする事で逃げ場を失った多くの兵が死ぬ事となった。わたくしは悲しい……」


 雪乃フルエレは川のある……という事になっている方を見て悲し気な顔をした。


「おおっなんというお優しい女王陛下なのか、我が王の御判断に間違いは無かった。海と山と国はこれより同盟と共に歩もうと思います」

「ありがとう……」


(フルエレ女王、いや夜宵姫よ……傷心の貴方を癒せるのはこのコーディエだけ。いつの日か必ず貴方の心を開いて見せますぞ……)


 コーディエは舞台の台詞のままに熱い心でフルエレの目を見つめたが、彼女はぷいっと視線を逸らした。しかし自信家のコーディエは必ずフルエレを落とすと決めていた。


『こうしていよいよセブンリーファ後川北側攻略が始まり、着々と軍を進めた同盟軍は遂に敵本城を包囲し、最後の降伏勧告を行う事になったので御座います』


 北側の戦いのサッワの魔砲ライフルで死亡したミミィ王女が、この舞台では早期に戦死した事に改変された事もあり、同盟軍が苦戦をしたバックマウンテン周辺の戦いはザックリと省略された。



 ―メドース・リガリァ本城。


「どうしたのじゃ!? あれだけ居た味方はどうなったのじゃ!? カヌッソヌ市は? 貴嶋は貴嶋は何処じゃ??」


 圧倒的戦力の同盟軍に包囲されたメドース・リガリァ本城では逃亡兵が相次ぎ、一人残されたエリゼ玻璃音(はりね)女王が錯乱状態に陥っていた。


「大変で御座います、カヌッソヌ市から手切れ及び同盟軍参加の通達がっ!!」

「なにぃい!? なんじゃと……あの裏切者共めがぁああ!!」


 リズ演じる悪女その物のメイクをしたエリゼ女王はさらに半狂乱となった。


「……敵首都を急襲中の貴嶋さまからは何の連絡も……恐らくは失敗かと……」

「ぐぬううう、あの無能な役立たずめがぁあああ!!」


 本当に容赦の無い砂緒の手によって徹底的に悪女に描かれるエリゼ。

 ガシャーーン、ガシャーーン!!


「女王陛下、遂に敵の魔ローダーがこの本城に迫っております!!」

「ひっひいいいいいいい。嫌じゃ永遠に若く美しい、等ウェキ玻璃音大王の血を受け継ぐ高貴なる、このエリゼ玻璃音が降伏する事も破滅する事もあってはならぬじゃあ、アハハッアハハハハハ」


 もはや錯乱しておかしな事を言い出した女王を見捨てて、慌てて近習達も逃げ出した。

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