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第三幕 戦火の嵐 下 開戦の決意~進撃

「フルエレさんを責める訳では無いけど……あの時私の進言に従っていてくれたら、大切な親友のミミィ王女とリナさんが侵略者と戦い討ち死にする事は無かったかもしれない」


 戻って来たセレネがくどくどと言って、皆からじとっとした目で見られた。


(す、砂緒さんや、あたしゃをどうしたいんだ? 嫌われキャラにしたいんか?)


 等とセレネは疑問を感じたが、普段から本当にこんな役割で似た様な事を言っているので仕方が無い。


「そうね、全て私の所為ね……ごめんなさいミミィ王女、リナさん……」


 フルエレは声を震わせた。


『セレネさんそこまで言う必要無いでしょ! フルエレ女王が一番悔やんでいるのよっ!』


 涙を滲ませながらスナコちゃんが叫ぶと、フルエレが思わずスナコの肩に手を置いた。


(スナコ貴様ぁ~~~!!)


 セレネは無言でスナコを睨んだが、スナコは一切気にしていない。


「我が愛娘ミミィとその愛する侍女リナよ、二人の命は決して無駄にはなっておらんぞ!!」


 ユッマランド王は目を閉じてしばし娘の事を思い返した。


「なーーウチさっきからこの舞台見てて、現実の歴史の流れがどんなんやったかもー分からん様になって来たんや。こんな感じやったかなあ?」


 同じく瑠璃ィ(るりぃ)キャナリーが首を傾げてウェカ王子とメアに聞いた。


「大体こんな感じじゃなかったカ~~?」

「私なんて三日前の事もあんまりよく覚えてませんよ! テヘッ」


 厳密に言えば実際にはミミィ王女とリナが自ら国境線を侵犯して戦闘が始まったのであり、侵略から領土を守って戦死したという美談な描かれ方は完全に嘘であった。しかし勝者側であるフルエレの同盟にとってそんな小さな事はどうでも良かったのだ。しかしそれは逆に言えばいつの日か仮にフルエレの同盟が何者かに敗北した時には、同じ様に歴史の勝者から悪し様に描かれる可能性があるという事だった。もちろんそんな事が無い様に砂緒はフルエレを全力で守るつもりだ……


「しかしフルエレ女王陛下、同盟の大切な一員のユッマランドが酷い目にあってもうこのまま黙って見てる訳にはいかねえな」


 有未(うみ)レナードがフルエレに最後の決断を促した。


「その通りです。今回の事でわたくしも目が覚めました。もはやメドース・リガリァの侵略を許すつもりは毛頭ありません! これより北部海峡列国同盟は全加盟国を動員してメド国のエリゼ玻璃音(はりね)女王を討ち取ります!!」


 フルエレ女王は玉座から立ち上がって手を振り上げて叫んだ。


「そのお言葉をお待ち申しておりました」


 セレネは深々と頭を下げた。


『でも、具体的にどう戦いを進めるの?』


 スナコちゃんが可愛く小首を傾げた。


「それにはあたしが答えよう。よろしいか女王陛下?」

「ええ、お願いするわ」


 フルエレが許可を与えると、セレネが地図を出して皆に解説を始めた。


「我らの北部海峡列国にバックマウンテンを挟んで南に位置する、セブンリーファ後川流域小国群は主に北側のメドース・リガリァ本城の存在するSa・ga地域と、南側のミァマ地域に別れます。そして北側のSa・ga地域は古来よりメドース・リガリァとの関係が深く、隣国のカヌッソヌ等自ら進んで侵略に協力している国も多い」

『なるへそ』


 スナコちゃんが頷いてセレネがギロッと睨んだ。


「セレネそれで?」

「ええ、それに対して川の南側のミァマ地域やグルメタウン、それにタカラ山監視砦等はもともとメドース・リガリァとの関係は浅く、メド国の魔ローダーによる侵攻を恐れて渋々恭順を示した国々も多い。さらにまおう軍との境を接する神秘の小国、海と山とに挟まれた小さき王国はまだメド国に唯一従っておりません」

「ほほうぅ?」


 有未レナードが興味深げに顎を触った。セレネはフルエレの表情をちらっと見たが変化は無かった。


「よって我ら同盟はユッマランドの地上軍大兵力と我がユティトレッド魔導王国の最新鋭量産型魔ローダー部隊を合わせてセブンリーファ後川南側を進軍し、飛び石的に各国と要衝を陥落させ、あるいは恭順させ遂には海と山と国にまで辿り着き、なんとか当該国に同盟参加を促し守りを盤石にした上で北側のメド国に総攻撃を掛ける……という作戦を考えておりますが」


 地図をマジマジと見つめていたフルエレが口を開いた。


「素晴らしい作戦ね。同盟の全勢力を動員して一気にメド国を叩く……良いでしょう。許可致します」

「有難う御座います。では早速我ら出陣致しますゆえ、女王陛下は勝利の吉報をお待ち下さい!」


 セレネは喜び勇んで言った。


「待って、何を言っているの? その作戦にはこの私も参加します。先頭に立って戦うわっ!」

『え、本当なの??』


 スナコちゃんは驚いて聞き返したが、フルエレの決意は固かった。


「安心して、この首都新ニナルティナは為嘉(なか)アルベルトさんに守ってもらうわ……」

「ははっこのセレネ付き従い命に代えても勝利を献上してみせましょう!」


 フルエレは遠い目をしていた。砂緒はフルエレが何故こんな台詞を入れる様言ったのか良く理解出来なかった。


『こうして雪乃フルエレ女王陛下は自ら聖魔神騎を駆り、戦場に舞い降りたので御座います』



 ―ナメ国。

 王国の主、大アリリァ乃シャル王はフルエレの前で深々と頭を下げた。


「ははーーっ雪乃フルエレ女王陛下、我がナメ国これより全て同盟に恭順致します。その証に我が愛娘が半裸踊りを舞いましょうぞっ!」


(え、何故半裸??)


 セレネが怪訝な顔をする中、パンパンッとシャル王が手を叩くと、ダイエットに成功してすっかり美貌と美ボディ自慢になった娘さんが、かなり際どい衣装で情熱的な舞を舞った。


『候補者No.7 ナメ国大アリリァ乃シャル王の娘さん』


 腰を揺らす情熱的な踊りに客席の男性王族達は夢中になり、御婦人方は目を細めた。


挿絵(By みてみん)

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