二人で話がしたいのです……b
「はい、僕は大男なので殆どの乗り物に乗れません。だから押して来ました」
「そ、そうですか、有難うございます」
一部会話が噛み合っていないが植土は変わり者でかなりの大男の外見とは違ってとても優しい男で、同じ魔法機械好きのフルエレは会って一瞬で尊敬した。
「僕はこれから作業場に戻って、業者に回さずに自分で修理する事で、さらにお金を浮かせねばなりません。それではさようならフルエレ」
「何度もお金を浮かせる浮かせる言うとは、とても見上げた方の様だ。これですか?」
砂緒が剣の訓練を終えてイェラから訓練開始記念に貰った、ごく初心者用の一般的な剣を携えてやって来た。
「そうなの! 凄いでしょう。性能的には変化は無いのだけど、見た目が大幅に変化してなんだか新車みたいになったの。早く乗りたい!」
「それなら私も乗せて下さい。一番最初に出会った時みたいに二人きりになりたいです」
「えっ」
少し頬を赤らめるフルエレ。二人は去って行く植土に手を振った。
「そういう訳で今から行って来ますね! イェラさんお弁当有難うございます。猫呼ちゃんによろしくね!」
「あ、ああ気を付けろ。それにしても冒険者ギルドは放置してて良いのか?」
「いいの、いいの、猫呼ちゃんがしっかりやっ」
「お兄様フルエレさん待てい!!」
出発しようとしたサイドカーの後部を小さい手でがしっと掴む猫呼。
小さなかかとが碇の様に地面に食い込み、茶色いすじを付ける。このままアクセルを回せば猫呼が大変な事になるだろう。
「ちょっと何するのよ、危ないでしょう猫呼ちゃん……」
「何するの……じゃないですよっ! フルエレさんこそギルドお手伝い全然してくれなくて、何遊びに行こうとしてるんですか!」
「遊びに行くって人聞き悪いわね。これは性能評価試験に行くの。ねー砂緒」
「お弁当持って、二人でピクニック行く様にしかみえないですっ! それに何かにつけてお金を払ってるんですからね私! その魔輪の修理費用もです!! 搾取ですよ」
「それは……いつか返しますから。でも今日は行きます!」
「ちょっと酷いですよ! 今日こそ居てもらいますからね!」
あたふたするイェラ。堂々巡りが続いたので遂に砂緒が口を開いた。
「猫呼行かせてください。冒険者ギルドは今や猫呼の人気で成り立っていますよ。今更フルエレが戻った所で猫呼よりも人を呼べるとは思えません」
「お兄様……」
照れながら喜ぶ猫呼。
「え、ちょっと何言ってるの?」
あまりの酷い言い草にフルエレが戸惑う。
「実はどうしてもフルエレと二人きりになって、言いたい事があったのです。今日は行かせてもらえませんか猫呼」
いつにない真顔で砂緒が言った。
(えええ、何何何? 言いたい事って何なの、初耳ですけど)
フルエレは戸惑った。