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第一幕 Shall We 舞踊? 上 久しぶりのキス

「止めて下さい前にも言いましたが私はセレネさんが居ないと即死する生命体なんです。絶対帰らないで下さい」


 スナコの言葉にセレネは涙交じりのじとっとした目で見返した。


「あたしは時々学校に通ったり王宮への報告の為に帰国してるが? 死んで無いよな」


 鋭いツッコミだった。


「……つ、つまり仲たがいする様な形で帰られるとショック死するという事です」

「北部同盟成立前に、結構長期間帰国したよな?」

「だーー! それって私とセレネの親密度が深くなる前の話ですよね??」

「そうだったっけ??」


 セレネも多少首をひねった。


「さっ解決した所で会場に戻りましょう!」


 スナコはセレネの華奢な手首を掴んで連れ戻そうとしたが、すぐに振り解かれた。


「駄目だっ! 今回は誤魔化されないぞ。重要な事をはっきり口に出して言ってもらいたい」


 スナコは良く分からなくて目が点になった。


「はいはい、いつも言っているでしょう。セレネには一生いつも一緒に居て欲しいと」

「そんなんじゃダメだめ……」


 首を横に振りセレネに即座に否定される。


「と、言いますと?」


 スナコはキョトンと不思議な顔をして聞き返した。


「と、言いますと? じゃねーわ」

「セレネさんを一生守ります……とか?」


 スナコは藪蛇にならない様に斜めからの視線で恐々聞き返した。


「何をビクついてる?? 心配する様な事じゃねーわ。もっと基本的な事だ」

「と、言いますと?」

「次からと言いますと? て言ったらタコ殴りな?」


 スナコはメイク上から冷や汗が染み出して来た。


(何を要求されているのでしょうか……まさかケケケ結婚の申し込みとか??)


 スナコは再び緊張の眼差しでセレネをちらりと見た。


「違う! そんなんじゃないから安心しろ。私もまだまだ忙しいんだ」


(エッ超能力!?)


 再び冷や汗が噴き出る。


「簡単な言葉だ。お前昔はアホ程連呼してたろ?? 最近は全く言わなくなったがな」


(アッ)


 さすがの砂緒も連呼で思い出した。


「もう私の気持ちは十分分かっているでしょう? わざわざ言わなくとも」

「いや、なんか最近だんだんおざなりになって、さらに利用されてる感が強くなって来た。再び口に出してはっきり言ってもらいたい。前は平気で何十回と連呼してただろーが」

「いや~~お恥ずかしい。若気の至りと申しましょうか……」


 スナコは頭を掻いた。セレネがマイクを投げて以降は全て地声である。


「若気の至りかい! でも改めてはっきり言って欲しい」


 セレネにそこまで言われて、スナコちゃんの姿のままだが砂緒はセレネの前に向き直した。


「私は、誰よりもセレネさんが、いやセレネが一番好きです。その気持ちは最初に喫茶猫呼の先輩後輩として出会った時から一瞬も変わりませんよ」

「バカッ! 恥ずかしいわ」


 セレネの言葉の直後、二人はあむっという音が聞こえそうなくらい激しく口付けをした。



 しばらくして砂緒から口を開いた。


「さっき言ってましたが、フルエレのアルベルトを失った悲しみの為にセレネが同盟を拒否したって話」

「うん」

「大きなお世話なんて言いませんが」

「大きなお世話かい!」

「いや違いますが。フルエレが悲しみを乗り越えてまおう軍との同盟を結ぼうとしているのです。ですから我々はそれを見守りましょう。決してセレネは梯子外されたんじゃありませんよ」

「梯子外されたんかい!」

「いやだから違いますって。フルエレはそんな事思う子ではありません。逆にセレネの気持ちを十分分かって内心感謝してますよ。でもその事と同盟の将来とは分けて考えるくらい賢いのです」

「お前にそんな事説教されたくないわっ! あたしの前でフルエレさん褒めるな!」

「はいはい、もう戻りましょう」

「もう一回、しよ」


 二人は二人の時間を惜しむ様にもう一度キスをすると、会場の舞台に戻った。



「見ろ、二人が戻って来たのじゃっ!」

「うっ……なんか二人共赤面してトロンとした目で手を繋いで帰って来た……」

「怖い……なんか生々しくて話し掛けられない……」

(何して来たのよ)

「砂緒さま……」


 抱悶(だもん)と雪乃フルエレ女王と猫呼と七華はそれぞれ色々な想いを抱いて戻って来た二人を見た。


『皆さん申し訳無かったセレネさん帰って来ましたよ。これで大丈夫、早速この後私が考案した候補者紹介特別プログラムに移行しましょうぞ! いや~~良かった良かった寝ずに書いたプログラムがセレネさんの失踪でパアになる所でした』


 スナコの不用意な発言の直後、背後に恐ろしい闘気のオーラを感じた。


「お前……まさか今の言葉や行動全部、なんとか自分が組んだプログラム実行する為に、必死に口から出まかせ言ってたんか??」


 振り向くと、激しい闘気のオーラに真っ赤に目を光らせたセレネが恐ろしい形相で立っていた。


「ちちち違いますよ人聞きが悪いですね。心の底から溢れ出る気持ちを述べたまでですから」

「もーいーキスしてなんか疲れたわ……好きにやれや」


 セレネは再び死んだ様な目になって、フルエレから魔法マイクを奪い返した。

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