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思わぬ再会とニアミス 中 生きていたウェカ王子

美柑(みか)?」


 紅蓮は、もう一度チラッと振り返り目深く被った帽子の影からウェカ王子を凝視する美柑を心配して思わず声を掛けた。


「……もしかして美柑」

「な、なに?」


 美柑は何を言われるのだろうと思わず心臓がきゅっとなる。


「ああいう朗らかタイプの王子サマが好みなの?」


 美柑はズルッとコケた。


「違うよっ!! う、ううん何でも無いから! 行こ行こ」

「うん、雪乃フルエレ女王の顔がどんなか、なんとか近くで拝んでみよう!」


 しかし歩きながら美柑の頭の中はウェカ王子と最後に別れた場面を思い出していた。



 ―約九年前、ラ・マッロカンプ王国の街角。

 幼稚園交換留学生としてこの国に来た依世(いよ)王女こと後の偽名美柑(みか)は、姉夜宵(やよい)の百発百中の占い能力で判明した将来戦争を起こし人々に不幸をもたらす危険人物を排除する為に暗躍していた。

 ドシャッ

 そしてこの日、人知れず町の裏通りで軍人を一人暗殺する事に成功した依世だった。


「ふっ他愛も無い……」

「あ、依世ちゃん、何してるの!?」


 しかし運悪くその現場を目撃してしまうウェカ王子だった。彼はいじめっ子から助けてくれた強く美しい依世を心から好きになっていたのだ。

 

「ちっ暗殺(しごと)を見られたか、仕方が無い……」


 幼稚園児依世の掲げた片手が妖しく光り輝く。


「い、いよちゃん何するの!? やめて……」

「恨まないで、平和の為なのよ……」

「ちょっ、止めて!!!」

「ワォーウィンドッ!!」

「ぎゃっ」


 依世は証拠が残らない様に、風魔法でウェカ王子の脳天に痛撃を与えた。

 ザシュッッ!!

 脳天に衣世から巻き起こるつむじ風が直撃し、身体ごと吹き飛ばされたウェカ王子がドシャッと地面に叩き付けられてピクリとも動かなくなった。


「ウェカくん……? ご、ごめんなさいっ」


 依世は一瞬震える手を掛けようとしたが、突然怖くなって振り返らず走って逃げた。その直後から依世は姿を消し、海と山とに挟まれた小さき王国のサポートチームが依世の留学生としての記録を全て抹消した……



 ―半日後。

 突然何事も無かったかの様に、ウェカ王子はむくっと立ち上がった。


「あれ~~依世ちゃん? あれ今依世ちゃん居たよねえ!?」


 ぴしゅ~~~

 突然ウェカ王子の脳天から血しぶきが噴水の如く噴き出した。ウェカ王子は今の魔ローダー操縦能力に繋がる天性の恐ろしいまでの運動能力で依世の攻撃を無意識に寸前でかわし気絶していただけだった……


「ぎゃーーー!! 血が何故か血があ!?」

「あっウェカ王子がいらっしゃいます!」

「おい、ウェカ王子が見つかったぞ怪我をしてられる、回復者早く来い!!」


 そして王子を探していたメイドや家臣達に保護されたのだった。


「あれ、みんな依世ちゃん知らない? おーい依世ちゃーん??」


 この日からウェカ王子は依世ちゃん王子と呼ばれる事となった……



(よ、良かった、ウェカくん生きてた……生きて元気に成長していた……ううっ夜宵お姉さま、ウェカくんは生きていました!)


 今は美柑こと依世は、今度はうっすらと涙を浮かべていた。


「ぎょっ美柑、今度は泣いているの?? 本当にどうしたの」

「ううん、本当に何でも無いから一刻も早くこの場からズラかろ!」

「え? うん……」


 清掃係姿の二人は、なんとか雪乃フルエレ女王に接近しようとこの場から離れた。



「そやで~~~ウェカ王子、メアちゃんは毎日体磨いてウェカ王子の夜這いを待ってるんやで~~、一回くらいお手付きしたりや~~」

「何ヘンな事言ってるんですか瑠璃ィ(るりい)さん!! 恥ずかしい事言わないで下さいっ!!」


 瑠璃ィの突然の大胆な発言にメアは顔を真っ赤にした。


「ん、何か言ったか~?」


 が、猫呼の様子を凝視してたウェカ王子は聞いて無かった。


「いいえ、聞いて無くて良いですから!」

「ん?」


 と、その時瑠璃ィの視界に妙なポーズで信号を送る仮面の男が目に入った。


(瑠・璃ィ・さ・ま・ちょ・っ・と・来・い)

(あれは、神聖連邦帝国公式ジェスチャー信号!? 行かねば)


「ちょ、ちょっとメアちゃん、ウチ蛸の入った丸い食べ物売ってないか見て来るわ~~王子と仲良くしときや」

「あっ瑠璃ィさん!? 何処へ行くのですか」


 メアが必死に呼び止めても瑠璃ィは一瞬で姿を消した。



 二人は建物の陰に隠れて顔を合わせた。


「怪しげな仮面の男、貴様何者なんや? 神聖連邦帝国の工作員かえ?」

「瑠璃ィさま私ですよ、貴城乃(たかぎの)シューネで御座います」


 再び貴城乃シューネは一瞬だけパカリと仮面を外してすぐに元に戻した。


「シューネ、なんでお前が此処におるんや? 姫乃殿下や聖帝陛下は息災なんやろうな」

「それはこっちの台詞ですよ! 帝都は平和その物ですよ、それより瑠璃ィさま若君を放置して何をされてるんですか?」


 シューネは指先を押し付け瑠璃ィを問い詰めた。


「あはは、なんや迷いに迷ってなあ、今はラ・マッロカンプ王子に世話になってるんや~」

「ご安心を、若君ならこの会場に潜入しておられます」

「え、なんやて!? それを早く言いやあ。どこやねん?」


 瑠璃ィは左右をキョロキョロと探した。


「清掃係としてこの城の何処かに潜入しております」

「なんでまた清掃係なんや……それはそうと、シューネお前って砂緒そっくりやってんなあ」

「え、今頃ですか瑠璃ィさま……そんな事よりお願いがあるのです」


 言いながら貴城乃シューネは瑠璃ィキャナリーの独特の豹柄の衣服を、目を細めじろじろと三白眼の白い目で見た。


「な、なんやねん急にウチの身体をじろじろと嘗め回す様に……年上が好きなん?」

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