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貴城乃シューネ追い出される 下① 一瞬の対決

「アハハハハ……」

「セレネさん!?」

「まあっセレネまでどうしたの??」


 スナコは猫呼と七華メイドを床に寝かせてセレネの肩をガックンガックン揺らした。


「セレネさん、しっかりして下さい!? セレネさんまでおかしくなったら一体どうしたら」

「くはははははー、猫呼(ねここ)先輩はあたしの事を無視しがちだった! だからやってやったのさーっアハーハー、アハーハー、アハーハーー!!」


 セレネは両手を腰に当てて天井を見ながら大笑いを始めた。


「なんて事なのこれがセレネの本音なの!?」

「むしろ無視してるのはセレネさんの方でしょ、目を覚まして!!」

「……って、んな訳あるかい。揺らし過ぎだろ首外れるかー思ったわ」

「ほっ安心した、セレネギャグだったのね」

「なーんだセレネギャグかー」


 雪布瑠(ユキ・ふる)とスナコは手を取りあって喜び、紅蓮と拘束中のお館様はその様子をポカーンと見ていた。


「セレネギャグって何だよ」

「でも何故猫呼を気絶させたの?」

「さっき猫弐矢(ねこにゃ)お兄さんの痴態を見てしまっただろ、だからアレは夢だったんだって納得させる為に気絶させたった!」

「まあっそういう事だったのね!」

「あービックリした、てっきりセレネさんの粗暴な性根が飛び出たのかと思って慌てたわっ!」

「ふざけんな、お前が一番あたしの力利用してんだろーが」


 と、一段落した所で紅蓮アルフォードが何やら頬を赤らめてセレネに接近して来た。


「以前ププッピ温泉で戦ったよね、悪気は無かったんだ。君のパートナーは天国に行ってしまった様だけど悪かった……君名前は? 僕は紅蓮アルフォードだ」

「生きてるわい。殺すなや」

「え、そ、そうなのかい? それは良かった……それで君の名前は? もう一度君と会ってじっくり話したかったんだ」


 紅蓮は砂緒と違って少し熱血が入っているが正統派のイケメン貴公子顔である。しかしその紅蓮が必死にアプローチしてもセレネはひたすら煙に巻いた。


「んー知らん知らん。それよかその極悪犯罪人を引き渡してもらおうか?」

「それは出来ないよ。この得物は僕が倒した。僕が正しくちゃんと然るべき場所に引き渡すよ」


 セレネへの興味はともかく、神聖連邦帝国第一の紅蓮はそこはきっぱりと断り貴城乃(たかぎの)シューネを守った。


「だからその然るべき場所ってのが総司令官である、あたしの事な?」


「若君、この女がセレネ・ユティトレッド王女です」

「うるさい、ごちゃごちゃ言うな。バレるだろ」


「あーー今なんかこの二人小声で会話しましたっ!」

「私も見ちゃった」


 雪とスナコはわざとらしく手を取りあった。


「……お前らグルだな?」


 セレネは剣の柄に手を掛けた。


「やめよう、君とはもう一度会って話したかったんであって戦いたくは無いんだ」


 紅蓮は剣は抜かずにセレネにずずっと接近しようとする。


「バカか? 斬られたいのか??」


 セレネも一歩も引かず剣を抜きかけて威嚇する。


「いや、本当に止めよう。少しで良いんだ話し合おうよ?」


 紅蓮はそう言いながらセレネの肩に手を触れた。


「触んな……」


 セレネが肩を揺すり拒絶しようとした直後、突然烈火の如く怒ったスナコが間に割って入った。


「私のセレネに気安く触るなっ!!」


 スナコちゃんは怒りで能力を全て思い出し、紅蓮をいきなり突き飛ばした。


(砂緒……私のセレネにって)

「なっ!?」

「若君!!」

「わかぎみ?」


 後ろに吹き飛び転びそうになった紅蓮は一瞬で体勢を立て直しストッと着地する。


「こうなると仕方ないね、僕たちは此処を強行突破させてもらう! 行くぞ!」

「はい」


 紅蓮はお館様の拘束を解くと、二手に別れてセレネ達の間をすり抜けようとした。


「逃すかバカめっ!!」


 スナコは両手から電気を発生させると、逃げ行く紅蓮に向けて躊躇無く雷を放った。


「死ねっ!!」


 バチバチバチ!!

 何本もの稲妻が紅蓮に向けて走って行く。もちろん普通の人には一瞬ピカッと光っただけで、何が起こったのか分からないレベルの事だ。


「ダメだっ!!」


 バシッバチッッ!!

 紅蓮は危険な攻撃だと察知して、一瞬で振り返り剣を抜くと、エリゼ玻璃音を掘り起こした時のと同じ黄金色の粒子を発生させて剣に纏わせ、砂緒の電撃を弾いた。


「え、何が起こったの??」

「バカな……私の電気が弾かれた?」

(今一瞬蛇輪から出る粒子みたいのが、アイツから直接出た気が?)


 雪はポカーンとしていたが、セレネと貴城乃シューネはいち早く状況を理解した。


「砂緒! 奴も特殊な魔法剣を使う様だっ!」

「セレネさん名前!!」

「あっ」


 慌ててセレネは口に手を当てた。


「ハハハ分かったぞ小僧、貴様上手く化けたな? たぶらかしの者たぶらかしの姫とはよくぞ言った物よ! 次は選定会議とやらで相まみえようぞ!!」


 しかし以前自分がやられた電撃を紅蓮が軽く弾いた事に気をよくした貴城乃シューネも、もはや正体を隠さずにまたの再会を言いながら走り抜けようとした。


「遅いわっ!!」


 ドシュッ!!

 しかしはっきり正体を明かした事で今度は一瞬でセレネがシューネの背後に回り当て身をして気絶させた。ガクッと床に崩れ落ちるシューネ。これで状況は逆転し、紅蓮は一人でスナコちゃんとセレネを睨みつつ、どうシューネを連れ出すかに頭を巡らせた。


「ちっ困った事になった様だね……」


 と、その時。


「う、うう……うん……それ以上は許しませんわよ。その御方はお父様の正式なお客人、殺める事も拘束する事も許しませんわ!」


 気絶から目覚め、正気を取り戻した七華王女だった。

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