紅蓮アルフォードVS貴城乃シューネ 上 +兎幸顔①
(わかっ若君!? え、なんでーーーっ??)
妙なマスクを装着し、スナコちゃんに顎クイをしたままのお館様こと貴城乃シューネは、自らが東の地で仕える主君の神聖連邦帝国聖帝の王子、紅蓮アルフォードが突然乱入して来て入り口を見たまま身体が固まり冷や汗が噴き出た。
「離すんだっ!! 大丈夫かい??」
「あ、ハイ……」
(あれ、この方何処かでお会いした事が??)
紅蓮は固まったままのお館様から無理やりスナコちゃんを引き剥がすと、優しく自らに抱き寄せて剣を構えたままお館様から距離を取った。
(完全に若君だ……これは一体どうした事か……)
「あっ……うっ……」
これまでの傲慢な態度と打って変わり、急にお館様の挙動がギクシャクとおかしくなっていた。
「キャーーーッ!!! ヒロインの危機に勇者様が登場よっ! ナイトよナイト!!」
「いいにゃあ、私も救われたいにゃ~~」
雪布瑠と猫呼クラウディアは手を組み、うっとりとした目で見た。
「うげっ変なのが出て来た……ってアイツ、ププッピ温泉近くで砂緒と一緒に戦った奴か?」
セレネは剣の柄に手を掛けたまま、紅蓮の顔をまじまじと見た。
「酷い……女の子の服をビリビリになんて奴だっ、さぁこれを着て」
ふわっさぁ~
紅蓮は着ていた上着をさっと脱ぐと、スナコちゃんの肩から掛けた。
「あっありがとう、ゴザイマス……」
スナコは胸を押さえたまま、肩に掛けられた上着を握り伏目がちに激しく赤面した。
(やだっ恥ずかしい……けどカッコいい方……)
「きゃーーっ優しいわっ!!」
「羨ましいにゃ~~」
「う・う、うゲローー!!」
(いやマンガとかで良くある場面だけども! 砂緒よ心まで女の子になっててどうするの??)
「剣を持った君! ……えっ?」
「お?」
「いや、それはまた後で。この子を頼む!!」
紅蓮は一瞬セレネの顔を見て、ププッピ温泉近くでの戦闘を思い出したが、今は不気味なお館様退治を優先してスナコちゃんを彼女に託した。
「戻って来たわ」
「戻って来たわっじゃねーわ。もっとしっかりしろよ!」
「え? 何を言っているの??」
「もうバカッ!!」
セレネは表現出来ない様な情けない感情で涙ぐんでスナコを睨んだ。
「泣かないで……どうしたの……ってハッ!!」
(ヤバッ大切なセレネを泣かしてしまった……)
セレネに続いて砂緒まで正気を取り戻したが、状況が余りにも情けなさ過ぎて今すぐどうこう出来る気持ちの整理が付かず、取り敢えず無言で紅蓮を見た。
(あの仮面の男許さん……隙を見て電撃を食らわせてやるわ!)
無意識にスナコの指先から電気がほとばしった。
「砂緒……戻った??」
「ハ、ハヒ、すいません。でも今は黙ってて下さい」
「オーケー」
カキーーーン!!
Hファイアーブレードを失い、トリッシュショッピングモールの武器屋で購入した剣でお館様に切り掛かる紅蓮。危うく斬られそうになるが、そこは咄嗟に剣で受け止めた。
(どうすれば良い? 今仮面を取るのは格好悪いし、なんと言い訳すれば……)
カキンカキン
紅蓮が本気で斬ろうと思えば一瞬で切り捨てる事が可能だが、父からセブンリーフの内輪もめには介入するなと強く命令されている以上、切り捨てる気が無い紅蓮は大幅に手を抜いて、常人並のスピードで斬り掛かっていた。
「さあっ本気で戦えっ! それとも女の子をいたぶる事しか出来ない腰抜けかっ!!」
カキーーン!!
ビュンビュンと次々繰り出す剣技をお館様がかろうじて避け続ける。
「行け! やっちゃっておしまいなさい!!」
「行くのにゃーー、胴体真っ二つにゃっ!」
「これこれ猫呼ちゃんよふぉっふぉ」
「雪ちゃん完全に観客モブキャラと化しているぞ!? アンタは女王様なんだぞ!!」
「……これは、催眠か何か掛けられてて変になってるんじゃ無いんでしょーか?」
「なる程、この城に来た時から何か変だったしな。でもお前が正気に戻ってくれて嬉しいよ」
「ええ、正気に戻って男の心の今、一番したい事はこの姿のままお風呂に入る事です。この機会を逃す訳には行きません。早く敵を倒しましょう!」
「催眠の錯覚か何かですら見たいのかよ……必死過ぎて怖いわ」
カキンカキン!! ビュン、バシッ!!
右に左に繰り出す紅蓮の剣を避けたり跳んだりしてかろうじて必死にかわし続けるお館さま。
「どうしたどうしたっ骨の無いヤツめっ!! ちらり」
紅蓮は剣を振りつつも、声援を送る女の子達を見ていた。
(むふふ、変なパピヨン付けた子も居るけど、可愛い子ばかり。もっともっと僕の大活躍を見てくれ、美柑は一番好きだけどたまにはこういう息抜きもあっていいよね!?)
紅蓮はなかなかの浮気者だったようだ。
(いかん、若君の実力からすれば、私など一瞬で斬られてしまう、早く正体を明かさねば)
貴城乃シューネは死んでは元も子もないので、遂に正体を明かす決意をしたのだった。
カキーーーン!!
都合よく剣と剣がかち合い、鍔迫り合いが始まった。
「若君、若君、私で御座います」
「ん? 何だ情けないぞ戦いの最中に何だ! 良く聞こえんわっ!!」
カシャーーン!!
紅蓮は剣を引き離して、シューネを突き飛ばした。
兎幸(初期型)顔絵①
~兎幸STORY~
薄情な砂緒と雪乃フルエレから月面に放置された兎幸は食料を食べ尽くし機能を停止して眠りに就いていたが、やがて謎の宇宙生命体に拾われ遥か銀河の星間戦争に巻き込まれてしまう。しかしその時「宇宙ものもらいX」という病が全身に広がりやがて死の淵を彷徨う。危うく完全機能停止処置され掛けた時にさらに高度な宇宙文明から全身魔改造処置を受け、兎幸後期型にバージョンアップしたのであった。めでたしめでたし。




